人口減少時代に、若手医師が「独立・開業」して成功する秘訣

今現在、都市圏のクリニックは乱立状態にあり、患者を確保するのが困難です。このような状況のなかで、理想的な働き方と高収入を実現するためには、新たな開業スキームが求められます。本記事では、しいの木子どもクリニックを開業し、5年間で約9万人の患者の集患に成功した市川直樹氏が、若手医師が「独立・開業」して成功する秘訣を解説します。

事業サービス企画書を作って全体の組織力を高める

私は、経営には業種を問わずノウハウがあると考えています。人を雇うこと、動いてもらうこと、給与を決めること、事業を企画することなど、どんな業種にも共通する事柄だからです。ですから、たとえクリニックであっても、事業計画書のたぐいが本当はとても重要です。

 

事業計画書を作成すると、目標がはっきりしてやるべきことが明確になるうえ、スタッフの意識をひとつにしてチームワークを育てることができるからです。私の会社では事業サービス企画書をMAP(Management Action Plan)と呼んでいます。事業計画書は、会社がビジネスの大海原に乗り出す地図(MAP)でもあるからです。

 

では、事業サービス企画とは何でしょうか。言葉を分解して考えてみると、次のようになります。まず「事業」とは「社会的な仕事」を指します。その仕事によって雇用を発生させること、利益を上げることによって納税して地域社会に還元することなど、社会に対して貢献することが「事業」の本質です。

 

次に「サービス」とは「人に尽くすこと」を指します。会社のサービスには2種類あって、ひとつはその仕事による顧客や取引先の満足です。もうひとつは、その仕事によって従業員の生活が安定することです。

 

最後に「企画」とは、「それに対しての計画を立てること」を指します。この計画にも2種類あって、ひとつは売上向上のための「攻め」の計画であり、もうひとつは組織力向上のための「守り」の計画です。

 

いい換えれば、売上向上と組織力向上によって会社を成長させること、その成長によって、社会に貢献し、顧客や従業員にサービスすることこそ、会社の存在意義であると、私の会社では考えています。ここまでは一般論ですが、この先は各クリニックによって多少異なってきます。参考までに、私が開業支援した、しいの木こどもクリニックのMAPの実例をご覧に入れましょう。

 

[図表]MAP例①
[図表]MAP例①
[図表]MAP例②
[図表]MAP例②

 

なお、このMAPはスタッフ全員の話し合いで考えたものです。通常、事業計画書は社長(院長)が一人で考えるものだと思われていますが、それをしてしまうとスタッフの気持ちが入らず、一体感のあるものになりません。全員が参加することで、スタッフの実行力とやる気が高まります。

医療と経営の切り分けが厳しい時代を乗り切るカギ

医師の開業は立地が第一という話があります。実際に、全国健康保険協会の調査によれば、患者がかかりつけのクリニックを選んだ理由の第1位は「自宅から近いから」(73.7%)というものでした。第2位は「医師の人柄」でしたが、38.4%と、1位とは大きな差があります。

 

[図表]かかりつけ医を選んだ理由 出所:全国健康保険協会「平成27年医療と健康保険制度等に関する調査」
[図表]かかりつけ医を選んだ理由
出所:全国健康保険協会「平成27年医療と健康保険制度等に関する調査」

 

しかし、立地が重要といっても、それはすべての開業医が考えていることですから、なかなかよい立地は見つかりません。人口が増加している好立地には、すでに複数のクリニックがあって、しのぎを削っています。では、どうしたらよいのか。実は、私は、立地はたしかに重要だけれども、そこまでデータに惑わされることもないと考えています。

 

こんな話があります。厚生労働省の調査によれば、2014年12月31日時点で、クリニック(診療所)に従事する医師の総数は約10万2000人となっています。2002年時点での総数は約9万人だったので、12年間の間に1万2000人も、クリニックの医師が増えた計算になります。

 

このうちの多くは、勤務医から独立開業した医師と見ていいでしょう。この数字は、クリニックの競争が激化している証拠として使われますが、私は必ずしもそうとは思いません。

 

さらに調べてみると、2014年時点で、クリニックに従事する医師の平均年齢は59.2歳であることがわかります。クリニックではない、病院における医師の平均年齢は44.2歳ですから、それに比べれば高齢の医師が多いことがわかります。

 

実は、この調査は医師登録の人数を数えたものです。診療所においては、医師の引退年齢が定められていないことから、高齢医師の割合がかなり多くなっているだろうと類推できます。実際に調べてみると、70歳以上の医師が約1万9000人で全体の18.8%、60代の医師が約2万6000人で、全体の25.7%です。

 

つまり、全体の44.5%(約4万5000人)は60歳以上の医師となっているのです。ちなみに、2002年時点での60歳以上の医師の数は約3万8000人だったので、12年間で、クリニックで働く60歳以上の医師は7000人も増加した計算になります。

 

いうならば、開業医は数が増加するとともに、高齢化が急速に進んでいるのです。高齢化した医師が、どのようにクリニックを運営しているのかといえば、若い頃のように毎日診察するのではなく週2~3日だけの診療日にしていたり、あるいは若い医師を入れて自分は週1日だけの診療にしたり、もしくは廃業を考えていたりとさまざまです。

 

ですから、実際にはクリニックが多くあるように見えても、若手医師の後継者を求めていたり、ほとんど休業状態だったりする地域もあります。そのような地域で開業したケースでは、競争が激しくなるどころか、地域の後継医師ができたと歓迎されることすらあるのです。このように、医師の開業には、データだけではわからないさまざまな要因があります。

 

コンサルタントの力を借りれば、医師の範疇外である経営面での負担を減らすことができ、さらに月1回の会議・コンサルティングで問題を解決。もちろん勤務医時代のように決定に時間がかかることもないのです。

新しい地域医療、新しいクリニックの姿を考える

日本の地方都市が寂れていくという話をたびたび耳にします。たしかに、さまざまな地方を訪れると、人が自然に集まるかつての中心地だった商店街が、シャッター街となっている姿をよく見ます。地域の商店会や青年会なども、地方振興のためにがんばっているのですが、なかなか一度なくなったお店は戻ってきません。そこにはもう若者がいなくなり、旺盛な消費がないからです。

 

しかし、人は減っても高齢者は残っています。また、少なくなったとはいえ地域に残る若者だっていないわけではありません。彼らのためにも、このまま地方都市を寂れさせてしまってはいけないのです。

 

私は、人口減少や高齢化が進む地方都市再生の切札として、医療施設の活用を考えています。商店街が寂れたとしても、医療施設、介護施設は増えていますし、それらを新たな街の中心地にすることができるのではないでしょうか。高齢者の多い街では、ときに犯罪の温床になりうる繁華街よりも、より生活に安心感を与える医療施設の方が、街のシンボルとしてはふさわしいと思います。

 

2004年に行われた新しい臨床研修制度の施行以後、いわゆる医局の持つ権力が衰退しました。その結果、個々の医師はよりよい条件での勤務先を模索し、市場原理に従って職場を選ぶことが多くなりました。医師にとっては自由が増えてよいことですが、一方で大都市に医師が集中し、地方での医師不足の原因ともなっています。

 

それに対して、どのような手立てが講じられているかといえば、金銭的なインセンティブ以外はなかなか見つからないのが現状です。ときどき、過疎の村で医師を高給で募集しているとのニュースが流れるように、年収を上げることでしか人を呼べないのです。

 

しかし、医師が求めているのは、本当にお金だけでしょうか。私は必ずしもそうとはいい切れないと思います。医師に限った話ではありませんが、人が職場に求めるものは、まず「仕事のやりがい」、そして「ワークライフバランス」があって、最後に「お金」ではないでしょうか。

 

昨今、定職につかずフリーターのように、アルバイトだけで暮らす医師もいると聞きます。医師のアルバイトは高給なので、そのようなライフスタイルも十分に可能なのです。それは極端な例としても、過重労働を嫌がる医師が増えていることは事実です。私は、医療業界の求人を見ていて、いつも需要と供給がかみあっていないと感じます。

 

医師が求めているのは理想のライフスタイルなのに、金銭報酬ばかりを提示する求人が多すぎるのです。それほどまでに、医師の理想のライフスタイルを実現することは難しいのでしょうか。私はそうは思いません。需要と供給の交通整理をする、第三者的な役回りのプロデューサーがいれば、医師の働き方はもっと自由になるでしょう。

 

たとえば、週休3日で当直なしという働き方を望む医師がいるとしましょう。通常の求人の中から、そのような働き方を選び取ることは難しいですが、同じ思いを持った医師が3人集まれば、ワークシェアリングで「週休3日当直なし」は可能になるでしょう。もちろん、勤務時間が少なくなるので、一般的な医師と比べると年収は少なくなりますが、物質的な豊かさには困らない程度のお金がもらえて、人との交流や、精神的な豊かさに使う時間が増えるのであれば、その方がいいという人も少なくないでしょう。

 

私は、そのような医師の働き方を実現したいと考えています。そのためには、医師が思い描く理想のクリニックがいくつか集まった地域のモデルケースが必要です。複数の独立したクリニックが集まって、地域の総合病院の役割も果たしつつ、当直の時間や勤務時間や患者をシェアするような体制を作ることが私の夢です。

株式会社GSKコミュニケーションズ 代表取締役

1971年生まれ。
1999年から労務を主にしたコンサルティング業務を行い、2004年、株式会社GSKコミュニケーションズを設立。
不動産賃貸業、管理・ソフトウェア開発のほか、飲食業や人材派遣、自動車販売業などさまざまな業種のコンサルティングに従事。さらに2006年4月より「大志の会」「有志の集い」「市川直樹塾」を主宰し、中小企業経営者に向けて講演会やシンポジウムなどを積極的に開催。これまで300社以上の中小企業経営者のコンサルティングに取り組んでいる。 2011年にはしいの木子どもクリニックを開業、クリニックと調剤薬局の経営コンサルティングを手がけ、開業以来5年間で約9万人の患者の集患に成功している。

著者紹介

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市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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