初回家賃のみで部屋を借りられる「0円賃貸」
現代の消費者ニーズに応え、入居者に選ばれる物件づくりを行うために必要な対策とは何でしょうか。
端的に考えると、敷金と礼金をともにゼロ円にしてしまう「ゼロゼロ物件」にすることでしょう。しかしゼロゼロ物件はすでに世に多く存在し、他の物件と差別化することはできません。
ゼロゼロ物件は一見、入居時の費用負担が大きく解消するように見えますが、実際には仲介手数料や火災保険料といった各種の手数料は必要です。そのため結局は、15万~20万円程度の初期費用がかかっているケースがほとんどです。
さらにゼロゼロになったことを利用して、仲介会社や管理会社が入居者への物品販売に力を入れているケースもあり、その結果、結局は敷金・礼金と同じくらいの費用負担になっているケースもあるようです。
これでは入居者の目を欺いているようなものです。競争が激しくなる賃貸市場では、下手に敷金・礼金のみをゼロにするよりも、もっと競争力のある企画を生み出さなければ入居者ニーズに応えることはできません。
そこで筆者は一つの結論に達しました。入居時費用を家賃以外、すべて「ゼロ円」にしてしまうことです。
入居希望者が部屋を探す際の最大のネックとなっていた入居時初期費用をすべて無料にしてしまえば、他の物件と圧倒的な差別化が可能になると考えたのです。入居者のメリットを最優先して企画を練りに練り、これまで筆者が蓄積してきたPM管理手法も取り込みながら、最終的に「0円賃貸」と呼ばれる独自の0円賃貸システムを開発しました。
0円賃貸は入居時に敷金・礼金はもちろんのこと、その他の費用も入居者から一切徴収しません。入居者はシステム利用料を支払うだけで、初回家賃のみで部屋を借りられます。入居時費用、家賃以外すべてゼロ円。家賃6万円の部屋であれば、初回家賃の6万円を支払うだけで部屋を借りられるということです。
<家賃6万円、通常契約の場合>
初回家賃 6万円
敷金 6万円
礼金 6万円
火災保険料 1万5000円
家賃保証契約料 3万円
玄関鍵交換代 1万5000円
消毒代 1万5000円
仲介手数料 6万円
合計 31万5000円
↓
<家賃6万円、0円賃貸の場合>
初回家賃 6万円
敷金 0円
礼金 0円
火災保険料 0円
家賃保証契約料 0円
玄関鍵交換代 0円
消毒代 0円
仲介手数料 0円
合計 6万円
※システム利用料は省いています。
家賃6万円の部屋の場合、一般的には入居時費用が30万円ほどかかります。
0円賃貸の場合、用途が見えない手数料負担はすべてなくなり、家賃6万円のみで部屋が借りられるので、入居時の費用負担を最小限に抑えるとともに、心理的にも価値を感じて契約してもらえるようになります。さらに退去時費用や家賃保証契約更新料、24時間サポートサービスも無料となります。
こうして初回家賃以外すべてを無料にすることで、他の物件と大きく差別化し、必要以上の家賃ダウンをせず、高い家賃を維持しながら満室に変えられます。
「0円賃貸」で他物件と差別化を図れる理由
なぜそう言い切れるのか。家賃6万円のAという物件があったとして、「通常募集」「ゼロゼロ物件での募集」「0円賃貸での募集」の三つの条件で募集をかけるとします。入居者にとっては同じ物件なのですから、目に見えない支出を徹底的に切り詰める傾向にあるいまの時代、入居時の負担ができる限り少ない条件での契約を望むのは当然です。
結果、物件の競争力は「①0円賃貸での募集」「②ゼロゼロ物件での募集」「③通常募集」という順番になります。
もちろん競争力を高めるためには、物件そのものの魅力を高める必要もあります。いくら価格が安く初期費用がゼロ円でも、入居者が価値を感じない部屋を契約することはありません。
ただし少なくとも断言できるのは、同じ物件で募集をするならば、前述の三つの条件では確実に0円賃貸が選ばれる確率が高いという事実です。数字的な根拠も次回以降に説明します。