オーナー社長必見!10分で「会社の株式価値」を計算する方法

2019年2月、経済産業省が発表した調査によると、今後10年間で、70歳を超える中小企業経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人、日本企業全体の3分の1が後継者未定といわれています。本連載では、そのような「後継者問題」に悩むオーナー社長のために、中小企業M&Aの専門家である坂本利秋氏が事業承継対策について解説します。本記事では、10分で「会社の株式価値」を計算する方法を解説します。

方法は3種類…株式価値の計算結果は一致しない!?

本連載第1回にて、中小企業の株式価値の計算方法として「純資産と今期利益をベース」、「今期の現金収入と業界をベース」、「将来の現金収入をベース」の3種類を紹介しました(関連記事『オーナー社長なら知っておきたい「会社はいくらで売れるのか」』参照)。

 

算数では解き方が違っても答えは1つでしたが、株式価値の計算においては3種類の計算結果が一致することはまずありません。この3種類の上限と下限の間であれば、どうやら適正らしいと解釈してください。トヨタ自動車の株価であれば、絶えず大勢の参加者が売り買いを繰り返していますので、この上下の幅はきわめて小さくなります。中小企業の株式価格は、不動産価格に近いイメージです。都心の不動産でもトヨタの株式ほど頻繁に売買されませんから、適正価格は相当の幅ができるはずです。

 

それでは、お手元に直近の決算書を用意して、早速計算をはじめましょう。

 

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1.純資産と今期利益をベース

 

表紙の決算報告書から1枚めくって、貸借対照表を開いてください。

 

純資産は、貸借対照表(BSとも言いますね)の右下の純資産合計です。左側の一番下にある資産合計(または総資産)から、右側の真ん中にある負債合計を引いたものです。家計に置き換えると、現預金+不動産時価=資産合計、住宅ローン=負債合計で、資産合計-住宅ローン=純資産となります。借金返済した場合に残る現金額と理解しましょう。

 

今期利益を見るために、1枚めくって、損益計算書を開いてください。利益といっても、売上総利益(粗利益)、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期純利益とたくさんありますが、ここでは営業利益を見てください。

 

中小企業の株式価値(1株の株価×全株式数)=純資産+営業利益×3年

 

現在の純資産をベースに3年分の利益までは見込みましょうという考え方です。あっけないほど簡単ですよね。10分もかからないはずです。

 

より正確に計算するためには、以下の補足が必要です。

 

●貸借対照表の左側の資産のうち、実際にはそこまでの価値がない場合には、純資産からの減額が必要

 

よくあるケースは、在庫を多めに計上している、売掛金に回収不能分が含まれる、不動産価格が時価より高く計上されているなどです。

 

●借金の有無により株式の価値が変わる

 

先ほどの計算は無借金の優良企業にはぴったりですが、借入がある場合には株式価格からその分を減額させる必要があります。肌感覚でおわかりかと思いますが、借金が多いと、株価が下がってしまうのです。

 

●営業利益の3年分という期間も絶対的なものではなく、5年程度でもおかしくない

 

精度を上げた計算式は、次の通りです。

 

中小企業の株式価値=(純資産-時価を下回る資産額の合計)+営業利益×3年-借入額

 

これも非常に簡単で、10分もかからず計算できるでしょう。

社長自身の大きな資産になるため、決算期ごとに計算を

2.今期の現金収入と業界をベース

 

次の方法です。損益計算書はそのまま開いておいてください。

 

今期の現金収入は、先程の営業利益に減価償却費を加えた額です。減価償却費は原価にも、販売費および一般管理費(略して販管費と言います)にも含まれていますので漏れなくお願いします。減価償却費は、損益計算書の次か、その次のページに記載されているはずです。

 

今期の現金収入=営業利益+原価中の減価償却費+販管費中の減価償却費

 

業界毎に収益を期待できる年数にある程度相場のようなものがあります。ホテルでは20年が見込めたり、飲食業だと1、2年などです。

 

ここですべてには言及できませんので、5年間と考えましょう。

 

中小企業の株式価値=今期の現金収入×5年-借入額

 

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3.将来の現金収入をベース

 

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と呼ばれる算出方法です。今後5年間の現金収入をある程度の精度で算出できることが前提になります。


長期の受注契約、仕入契約が大多数を占める企業であれば、将来5年間の現金収支も見込むことができるでしょう。スポット受注が多い企業や、脆弱な事業基盤で来年のことも不透明という中小企業では計算が困難です。実際の中小企業のM&Aの現場でもあまり使われない手法です。さらに他2つの方法と比べて、計算方法が複雑ですので、ここでは割愛します。

 

このような簡便法であれば、社長自身で簡単に株式価格が計算できます。社長自身の一番大きな資産ですから、決算期ごとに計算してみてください。逆に希望する株式価格があるならば必要な利益額が計算できます。必要な利益額が分かれば、具体的なアクションも決まってくるはずです。

 

【まとめ】


株式価値算定で主に使用される方法は3つ
そのうち2つは10分もあれば計算できる
決算期ごとに計算するのがおすすめ

 

 

坂本 利秋

認定事業再生士(CTP)

株式会社喜望大地 常務執行役員

 

認定事業再生士(CTP)
株式会社喜望大地 常務執行役員

東京大学大学院工学系研究科卒業。日商岩井(現双日)にて、数千億円の資産運用を経験。その後、ITベンチャー企業に転身。国内初SNS企業の財務執行役員に就任し、その後上場企業に売却、30代で三井物産子会社の取締役に就任し企業成長に貢献、グループ売上高1,000億円の上場IT企業の経営管理部長として企業再生を行う。

中小企業の経営者のためだけに徹底的に支援したいという思いから、2009年より中小企業の売却、事業再生支援を行う。トップ地銀から指名され、複数の戦略融資先の取締役に就任、ハンズオンでの支援を行う。

著者紹介

連載「後継者問題」に悩むオーナー社長のための事業承継対策

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