オーナー社長なら知っておきたい「会社はいくらで売れるのか」

2019年2月、経済産業省が発表した調査によると、今後10年間で、70歳を超える中小企業経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人、日本企業全体の3分の1が後継者未定といわれています。本連載では、そのような「後継者問題」に悩むオーナー社長のために、中小企業M&Aの専門家である坂本利秋氏が事業承継対策について解説します。本記事では、会社はいくらで売れるのかを見ていきます。

「事業承継に損得は関係ない」と言い切れるか?

お金にまつわる行動の原理原則は「経済合理性」、つまり損得です。日常品でも、1円でも安く買うために比較して購入しますよね。

 

もう少し大きな資産の話をすると、例えばサラリーマンならば、所有するのは主に金融資産、不動産でしょう。金融資産の代表格である株式では、長期保有をするか、チャートによる短期売買をするかの選択をします。不動産の購入時には、不動産情報サイトをくまなくチェックするはずです。

 

サラリーマンではない、オーナー社長にとっての最大の資産とは、自身が経営する会社の株式です。オーナー社長を永遠に続けることはできません。どこかのタイミングで親族へ事業承継するか、第三者へ売却するか、廃業するかを選択することになります。

 

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ここでは、先ほどの行動原則はあてはまりません。多くの経営者が、後継者がいるというだけの理由で事業承継を選択するのです。売却と廃業という手段も検討した上で、事業承継を決断する経営者は少数で、大部分が自動的に承継を選択しています。

 

確かに、現時点で業績も財務状況もよく、事業環境がさらによくなることが想定され、後継者が優秀で他の誰よりも会社の成長に貢献できるという理想的な状況であれば、事業承継が最善策です。

 

しかし、事業環境の悪化が確実で、次の経営者の破産リスクが目の前にあり、残念ながら後継者がその器でないと経営者がわかっていても、後継者がいるからという理由だけで事業承継するのは果たして正しいのでしょうか。事業承継に損得は関係ない、と言い切れる経営者と後継者にとっては正しいのかもしれませんが、そこまで割り切れない経営者は冷静に考えてみるべきです。

10分間でできる!会社の売却金額の算出方法

ここでは、経済合理性に基づいた、「会社の将来」の選び方について解説していきます。事業承継の価値自体を価格算定するのは困難ですから、現実的には会社売却時の手残額、廃業時の手残額を算出した上で、それでも事業承継するかを考えることになります。

 

突然ですが、トヨタ自動車の株価と時価総額はわかりますか。ネットで検索すれば、瞬時に答えが出てきますね。

 

では、あなたの会社の株価と時価総額を教えてください。自身の会社のことであれば隅々まで把握しているはずなのに、これには回答できないのが一般的でしょう。

 

トヨタのような上場企業の株式は、取引所を介して多くの投資家が売り注文、買い注文を出しており、いつでも誰でも画面表示に近い価格での売買が可能です。当期純利益に対して株価が低いのでは?などの意見もあるかもしれませんが、関係ありません。すべての情報を織り込んで、実際に売買されている株価が時価なのです。

 

では、中小企業はどうでしょうか。上場企業と異なり、株式の譲渡には制限がつくことが一般的です。いつでも誰でも、株式を購入できる状況にないわけです。となると、上場企業のような、リアルタイムの売買価格に基づいた時価は存在しません。

 

一方で、国内のM&A市場は件数、金額ともに過去最高を更新しています。主な売り手は中小企業ですから、いまもどこかで実際に中小企業の株式に金額がつき、売買されているのです。株式市場での売買ができないため、中小企業の株価は計算によって算出されます。

 

実際のM&Aの現場で用いられている、代表的な計算方法を3つ紹介しましょう。今回は、概念の説明のみですが、実は誰でも10分間程度で簡単に計算できます。PCは使えないし、経済学部の出身じゃないし、と心配かもしれませんが、電卓+算数レベルの知識があれば充分です。

 

① 純資産と今期利益をベース

 

決算書の貸借対照表を見てみると、右下に純資産または自己資本が記載されています。総資産から負債を引いたものが純資産ですが、これを基準に、数年間の利益を上乗せしたものを会社の価値とする考え方です。

 

② 今期の現金収入と業界をベース

 

今度は、決算書の損益計算書を見てみると、下のほうに営業利益があります。いわゆる本業における収益を表すもので、ここでは減価償却費は経費扱いですが、その額の出金が実際にあったわけではありません。よって、現金収入額は、営業利益+減価償却費としています。この現金収入額が継続すると思われる年数を掛けたものが会社の価値である、という考え方です。この年数は、同業の上場企業の数値を基準に用いることが一般的です。

 

③ 将来の現金収入をベース

 

今期だけでなく、来期、再来期と将来の現金収入を予測します。それらを合算したものが会社の価値という考え方です。

 

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【まとめ】


●事業承継でも経済合理性を考慮すべき

●中小企業の主な株価算定方法

① 純資産と今期利益をベース

② 今期の現金収入と業界をベース

③ 将来の現金収入をベース

 

 

坂本 利秋

認定事業再生士(CTP)

株式会社喜望大地 常務執行役員

 

認定事業再生士(CTP)
株式会社喜望大地 常務執行役員

東京大学大学院工学系研究科卒業。日商岩井(現双日)にて、数千億円の資産運用を経験。その後、ITベンチャー企業に転身。国内初SNS企業の財務執行役員に就任し、その後上場企業に売却、30代で三井物産子会社の取締役に就任し企業成長に貢献、グループ売上高1,000億円の上場IT企業の経営管理部長として企業再生を行う。

中小企業の経営者のためだけに徹底的に支援したいという思いから、2009年より中小企業の売却、事業再生支援を行う。トップ地銀から指名され、複数の戦略融資先の取締役に就任、ハンズオンでの支援を行う。

著者紹介

連載「後継者問題」に悩むオーナー社長のための事業承継対策

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