今回の欧州議会選挙では親EUといわれるEPP、S&D(欧州社会・進歩連盟)、ALDE(欧州自由民主同盟)に環境政党である緑の党の合計が、改選前の議席数を減らすも3分の2前後を確保する見込みです。事前の予想で躍進が予想された反EU派の獲得議席は増えるも伸び悩みました。大きな波乱は回避できたことで、今後は欧州政治の人事に移るとみられます。
欧州議会選挙:反EU勢力の台頭が予想されたが、獲得議席はやや伸び悩み
欧州議会選挙(5年毎、前回は14年)が2019年5月23日~26日に実施されました。親欧州連合(EU)支持派のEPP(欧州人民党)は180議席(暫定結果、図表1参照)と前回から議席を減らすも、第1党を維持しました。
一方、反EU派は議席を伸ばすも期待を下回り、伸び悩みました。イタリアの同盟や、フランスの国民連合などで構成される極右会派のENF(国家と自由の欧州)が議席を伸ばしたものの、ECR(保守改革)などは議席を減らしました。
どこに注目すべきか:欧州議会選挙、極右政党、人事、EU委員長
今回の欧州議会選挙では親EUといわれるEPP、S&D(欧州社会・進歩連盟)、ALDE(欧州自由民主同盟)に環境政党である緑の党の合計が、改選前の議席数を減らすも3分の2前後を確保する見込みです。事前の予想で躍進が予想された反EU派の獲得議席は増えるも伸び悩みました。大きな波乱は回避できたことで、今後は欧州政治の人事に移るとみられます(図表2参照)。
反EUが市場などの期待ほど伸びなかった要因として、そもそも反EU派を構成する各会派(または政党)の主張がばらばらで、反EUとしてまとまりに欠けていた点があげられます。例えばイタリアは主に反移民を主張し、ENF(国家と自由の欧州)に属する極右の同盟と、EFDD(自由と直接民主主義のヨーロッパ)に属し、財政拡大を主張する極左の五つ星運動の主張に相違がみられます。
緑の党など企業寄りのリベラル政党が票を伸ばしました。極端な主張をする政党の対極として支持を集めたこと、環境意識の高まりが票を伸ばした背景と思われます。
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欧州議会選挙の暫定結果を見ると、投票率は50%を越えた模様です。投票前に発行した「今日のヘッドライン(5月21日号)」で、指摘したように投票率が高まると伝統的な政党に有利というジンクスが働いたようにも見られます。過去の低い投票率で示された、市民の不満が投票に示される傾向が、今回は弱まった可能性があります。
なお、選挙結果を受け、今後注目すべき政党の動向としてイタリアの同盟を中心に国民連合やポーランドの「法と正義」など極右勢力の連携を強める動きに注意をしています。
次に、欧州議会選挙において当面の波乱は回避されたことで、注目はEU主要人事(EU大統領、欧州委員長、欧州議会議長、欧州中央銀行(ECB)総裁)にシフトしています。
まず、EU新委員長(現在はユンケル氏)が来月を目処に決められ、欧州議会議長が決められる流れとみられます。
ユンケル委員長は英国のEU離脱でも交渉の中心人物(直接担当は別だが)の一人で重要ポストです。なお、欧州議会の最大会派(EPP)が推す候補を受け入れるという慣行は今回行わないとしており、選定は難航が想定されます。
市場で最も関心が高いのはECB総裁人事でしょう。こちらも本命不在で、決定にもう少し時間がかかりそうです。ただ、EUの人事では主要ポストを各国(出身国)で分けるなど、複雑なお作法があります。まずはEU委員長に注目が必要です。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『波乱回避の欧州議会選挙後、注目は欧州人事へ』を参照)。
(2019年5月29日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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