前回は、「共有名義不動産」を高値かつスムーズに売却する方法を説明しました。今回は、所有する不動産が「収益資産」と「不良資産」のどちらに当たるのかを見ていきます。

収益ではなく「価値」を生んでいるかどうか?

不動産は、大きく二つに分類することができます。

 

一つは、そこにかかる経費以上に有効に活用されている収益資産です。そして、もう一つは有効に使用されていないために収益を生まず、固定資産税や維持費による支出のほうが大きい不良資産です。

 

あなたの所有する不動産は、収益を生む資産になっているでしょうか、それとも逆に手間とコストのかかる不良資産でしょうか。

 

ここでいう収益というのは、直接的にお金を生むかどうかだけを指しているわけではありません。正確には、収益ではなく価値を生んでいるかどうかが問題なのです。

 

もちろん、不動産の価値はそれを使用する人によってさまざまですから、住んでいる人が「懐かしい思い出のつまった我が家」だとか「先祖代々受け継がれてきた古民家」だとかの、個人的な価値を感じているのであれば、それはそれでかまいません。継続的なメンテナンスを怠らず、実際に住めているのであれば、築50年でも60年でもまったく問題はないでしょう。

 

というのも、自分たちが住宅として使用しているのであれば、賃貸住宅に暮らしている場合に支払わねばならない家賃分が、不動産からの収入となっていると考えることができるからです。これを経済学用語で「帰属家賃」と呼びます。

 

不動産というものは、維持費がかかるものですから、それなりに収益を上げてもらわねば資産ではなく贅沢品となってしまいます。しかし「帰属家賃」の考え方を援用するのであれば、持ち家でも、自分自身に貸して賃貸収入を得ていると考えることができるので、収益物件になります。ですから、自宅の場合はほぼ無条件に価値を生んでいる不動産といえるのです。

放置不動産、収支がマイナスの不動産は「不良資産」

では、自宅ではない不動産の場合はどうでしょうか。

 

たとえば畑などの農地は、実際にそこで農業を営んで収穫を上げているのであれば、収益物件といえます。農業によって得られる収益はそれほど大きいものではありませんが、農地の場合はその分固定資産税も格安なので問題はありません。

 

賃貸アパートや賃貸駐車場などの収益物件と同じことです。自ら経営をせずに、法人や個人などの他人に貸して、地代を得ている場合も、そこから利益が上がっているのですから、収益物件といえます。

 

ここでいう不良資産とは、まずは、以前は使用していたけれども今は空き地や空き家になって放置されている不動産のことです。このような物件は、まったく収益を生まないどころか、維持のためのコスト、毎年の固定資産税などで、収支がマイナスになっている不動産です。

 

次に、一見、収益不動産のように見えても、実は細かく収支を計算してみるとほとんどプラスにならない物件というものもあります。築年数の古い賃貸アパートなどは、賃料収入の割には、保守管理の手間とコストがかかって、もしも実際に動いている自分に相応の給料を出すとしたら、収支がマイナスになってしまうものも少なくありません。

 

そのような不動産は、不良資産といっても差し支えないでしょう。

本連載は、2016年1月29日刊行の書籍『「ワケあり物件」超高値売却法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「ワケあり物件」超高値売却法

「ワケあり物件」超高値売却法

松本 俊人

幻冬舎メディアコンサルティング

「駅から遠い、築年数が古い、ごみ収集所が近くにある――そんな物件を持つオーナーは、高値売却の方法について頭を悩ませているのではないでしょうか。本書では、どんな「ワケあり物件」であっても優良物件に変える巧みな「演…

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