前回は、「嫌悪施設」の嫌悪要素を打ち消す方法などを説明しました。今回は、「人口減少地区」の物件を高値売却する工夫について見ていきます。

そもそも「絶対的な基準」が存在しない土地の価格

弊社の本社は、埼玉県川口市の東川口駅にあります。埼玉県川口市自体は、県庁所在地であるさいたま市の隣に位置していて、東京都足立区と接するために、東京への通勤圏にあるベッドタウンとしての性格を持っています。

 

しかし、東川口駅というのは川口市の中でいえば、市役所のあるJR川口駅とは路線も別だし距離も遠く郊外に位置しています。どちらかといえば川口市の中でもさらに郊外の住宅地という位置づけで、周囲には畑も多くあります。

 

その東川口駅からさらに徒歩30分の場所にある70坪の土地の売却を依頼されたときの話です。周辺は住宅密集地区ではなく、やや空き地の多い人気の薄い地域です。これは、人口減少地区であり、さらに駅から遠いという二重のハンディを背負った物件でした。

 

それに、70坪という大きさはとても中途半端な大きさです。専用住宅の適切な大きさは40~50坪ですから、一戸建てとして売却するにはやや大きいし、2戸に分譲するにはやや小さい。もちろん、アパート用地にするにしても小さすぎます。

 

また、土地の価格の相場は、基本的に坪単価(一坪あたりの価格)で表されますが、専用住宅の場合、この坪単価は土地が大きくなればなるほど安くなるという現実があります。

 

たとえば、坪単価100万円の地域で、隣り合った2区画の土地でも、40坪の土地は4000万円ですが、60坪の土地は6000万円ではなく5000万円にしかならないことがあります。

 

なぜならば、その地域に一戸建てを構えたいと考えるお客様にとって、6000万円の土地は高額すぎて購入の対象にならないからです。そのため、土地というものは、大きくなればなるほど、坪単価が安くなっていくのです。

 

この事例だけを考えても、土地の価格に絶対的な基準などないことがわかるでしょう。不動産の価格というものは、お客様の財布の中身に合わせて、自由自在にその姿を変えるものなのです。

「地域のニーズ」に合わせることで高値売却を実現

物件の話に戻りましょう。

 

駅から遠く離れた、中途半端な大きさの土地建物は、代表的なワケあり物件です。土地や建物には出口(販売戦略)にマッチした大きさがあって、そのサイズに合わない物件はなかなか処分できません。売り主はずっと売却を希望していましたが、なかなか売れず長年放置していました。

 

たしかに、この物件は、住宅地であるにもかかわらず、人口減少地区で、駅からも遠く、大きさも中途半端で、と三重苦をそろえていて、値下げしなければとうてい売れないだろうと思われました。

 

しかも、売り主の希望額は、周辺相場どおりの坪単価での売却で、まったく妥協してくれませんから、長年売れずにいたのも当然でした。

 

そこで弊社では地域のニーズを調査し、いくつか心当たりの業者に打診しました。その結果、近くに障害者施設の事業所の需要があることがわかりました。障害者施設というものは、そこまでの広さは必要ないものの、確実にどの地域にも必要な事業です。また、国や自治体からの補助金が出るために、あまりコストを気にしなくていいという特徴もあります。

 

高く売るポイントは、大きさと用途が買い主の希望に合っていたことと、買い主が補助金を受けられるため、その分高く買い上げていただけたことです。税制や補助金などについても詳しく知ることで、土地を高く売ることができるのです。

本連載は、2016年1月29日刊行の書籍『「ワケあり物件」超高値売却法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「ワケあり物件」超高値売却法

「ワケあり物件」超高値売却法

松本 俊人

幻冬舎メディアコンサルティング

「駅から遠い、築年数が古い、ごみ収集所が近くにある――そんな物件を持つオーナーは、高値売却の方法について頭を悩ませているのではないでしょうか。本書では、どんな「ワケあり物件」であっても優良物件に変える巧みな「演…

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