実践的基礎知識 投資の必要性編(4)<少子高齢化・年金財政悪化・政府財政悪化>

ピクテ投信投資顧問株式会社
実践的基礎知識 投資の必要性編(4)<少子高齢化・年金財政悪化・政府財政悪化>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

少子高齢化・年金財政悪化・政府財政悪化

日本では少子高齢化が急速に進み、生産年齢人口は減少の一途を辿り、年金財政の悪化と社会保障関係費の増大が進んでいます。これにより政府財政の悪化が進んでいますが、日銀による日本国債の買入れによって国債利回りは低位安定しています。一方でそのしわ寄せは日銀のバランスシートに影響を及ぼし、日本の状況は戦後のインフレ期と似たような構造になってきています。資産保全のための運用や、投資の必要性が高まってきていると言えるのではないでしょうか。

 

 

少子高齢化と生産年齢人口減少

日本では少子高齢化が急速に進んでいます。戦後の日本の経済成長の大きな原動力となった人口全体の増加も2008年の1億2,808万人をピークに、人口減少に転じています(図表1) 。

[図表1]日本の人口推移  ※5年毎、1950年~2010年実績値、2015年~2060年推計値  出所:国立社会保障・人口問題研究所のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]日本の人口推移
※5年毎、1950年~2010年実績値、2015年~2060年推計値
出所:国立社会保障・人口問題研究所のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」では2050年の人口は1億人を割り込み、2100年にはその半分の5千万人を割り込むまで減少すると推計されています。また、全人口に占める15歳から64歳の人の割合を表す「生産年齢人口割合」を見ると、1990年に既にピークを記録して以後は下落の一途を辿っています。そのため、生産年齢人口の増加によって直接的・間接的にもたらされる税収・社会保険料収入の増加は期待できず、減収を食い止めるための負担率増加を余儀なくされています。

年金財政悪化と社会保障関係費増大

平成27年予算の日本政府の特別会計と一般会計を合算した歳入と歳出の内訳を見ると、歳出238兆円のうち83兆円が社会保障関係費となっており、歳入の中心である租税・印紙収入と保険料の合計98.9兆円の8割以上を費やしてしまう非常に大きな出費項目となっています。この社会保障費は平成21年には68.5兆円だったため、わずか6年の間に19.5兆円も増加したことになります。この増加分は、公共事業費と文教科振費の合算よりも大きな金額です。更に、国の借金の返済と利息の支払いに相当する国債費も過去6年間で11.2兆円増加し90.1兆円に達しています。

 

 [図表2]歳入と歳出の内訳(特別会計と一般会計の合算)  出所:財務省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

[図表2]歳入と歳出の内訳(特別会計と一般会計の合算)
出所:財務省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

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このように、少子高齢化や生産年齢人口の減少による年金財政の悪化、社会保障関係費の増大が、政府の財政状態を急速に悪化させています。こうしたことから、将来受け取れる年金額が減額されたり給付開始年齢が引き上げられたりするリスクや、現役世代での負担が更に増加するリスク等があり、各自が自助努力によって老後の資金を準備していく必要性が高まってきていると言えます。

政府財政の悪化と日銀の国債買入れ

こうした厳しい財政収支は、毎年大量に発行される赤字国債でファイナンスされたお金で賄われています。それにも関わらず日本国債の利回りがマイナスで、政府がマイナス金利でお金を調達することができるのは、他ならぬ日銀の金融緩和による国債の買入れが行われているためです(大量の買入れによる国債価格上昇圧力が国債利回り低下圧力となります)。当然、そのしわ寄せは日銀のバランスシートに出てきます。

 

日本銀行のバランスシートの規模は、平成24年12月10日時点では159.7兆円だったのが、平成29年2月20日時点では484.1兆円にまで膨れ上がり、その増加分の大半は113.7兆円から416.9兆円に増加した国債です(図表3)。

 

[図表3]日本銀行のバランスシート  出所:日本銀行のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]日本銀行のバランスシート
出所:日本銀行のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

国債の時価が1%下落すれば4兆円以上の減価となり資本金と準備金を合計した額を上回る規模のマイナスとなります。これに伴い、日本銀行の金融緩和策により日本の株式市場全体は大きく上昇してきたにもかかわらず、日本銀行の株価は大きく下落してきています(図表4) 。

[図表4]日本銀行の株価推移(期間:2007年2月~2017年2月)  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表4]日本銀行の株価推移(期間:2007年2月~2017年2月)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

財政法の規律は形骸化

政府の財政状態が非常に悪く、赤字国債発行が常態化しているにも関わらず、日銀が国債を買入れることで国債利回りが低位安定するという現在の状態はいつまで維持することができるのでしょうか。一部では日銀の国債買入れの限界説もささやかれています。これは日銀による国債の引受け(プライマリーでの購入)は財政法によって禁じられているから、と説明されることが多いのですが、そもそも財政法は赤字国債の発行自体を禁じています(図表5)。

 

[図表5]財政法(昭和二十二年三月三十一日法律第三十四号)(抜粋)
[図表5]財政法(昭和二十二年三月三十一日法律第三十四号)(抜粋)

 

財政法は戦後のインフレの苦い教訓から生まれたと言っても過言ではありません。政府債務残高が国のGDP額を大きく上回り、政府が歳入を大きく上回る歳出をするための赤字国債を発行し、日銀がその赤字国債を引き受ける、という構造が戦後のインフレと日本円の貨幣価値を大きく落とす事態を招きました。そうした事態を二度と招かないよう財政法は制定されたのです。

 

ところが、1947年の財政法制定から70年目となる現在、当時と同じような状況が再現されつつあります。政府債務残高は国のGDP額を大きく上回っています。政府が歳入を大きく上回る歳出をするための赤字国債が毎年「特例公債法」を審議可決することで発行されています。1998年には特例公債法の借換え禁止規定が削除され、2016年には改正特例公債法が可決し、特例公債法が5年間有効(つまり5年間審議可決不要)となりました。日銀は国債の「引受け」(プライマリーでの購入)はしていませんが国債の「買入れ」(セカンダリーでの購入)は行っています。財政法はもはや形骸化してしまっているのかもしれません。

 

こうしたことからも、やはり資産保全のための運用や、投資の必要性は高まってきていると言えるのではないでしょうか。

 

 

データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 投資の必要性編(4)<少子高齢化・年金財政悪化・政府財政悪化>』を参照)。

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