過去の債務削減方法とインフレ
過去の歴史を振り返ると、積み上がった政府の借金を減らすためにいくつかの方法がとられました。①増税、支出削減などによる政府収支の改善での債務削減、②インフレによる債務削減、③経済の名目成長が債務拡大を上回る、④デフォルト(債務不履行)、ヘアカット(債務の減免)などがありました。
増加する政府債務残高
日本の政府債務残高(国の借金)は増加の一途を辿っています。最大の原因は財政収支が大幅赤字であるということです。近年では、高齢化の進展等に伴う社会保障関係費の増加や地方財政の悪化に伴う地方自治体の財源不足の補填の増加、国債費(借金の利払いと返済)の増加が財政赤字の主因となっています。
平成27年度予算における一般会計と特別会計の歳出純計額238兆円のうち、約4割が国債費、さらに約3割が社会保障関係費となっており、この2つの経費で全体の7割以上を占めています。
収支の赤字を借金で賄う構造が政府の借金を急速に増やしてきました。国の稼ぎに対する借金の比率といえる、政府債務残高(対GDP比)を見ると今の日本は世界の中でも最悪な水準にあります(図表1)。
過去に実施された債務削減方法
過去の歴史を振り返ると、積み上がった政府の借金を減らすためにいくつかの方法がとられました。①増税、支出削減などによる政府収支の改善での債務削減、②インフレによる債務削減、③経済の名目成長が債務拡大を上回る、④デフォルト(債務不履行)、ヘアカット(債務の減免)などがありました。
②のインフレによる債務の削減とは、例えば、第一次、第二次世界大戦後のドイツなど、ハイパーインフレーションにより債務価値を削減しました。(借金の実質価値が減少しました。)
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日本も同様に、第二次世界大戦で抱えた莫大な借金をインフレで一気に削減することに成功しました。日本の物価は戦後3年半で100倍になり、貯めたお金の価値も、貸していたお金も、国が借りていたお金の価値も全部100分の1になりました(図表2)。
インフレによる債務削減効果
インフレとは様々なモノの値段が上昇すること、つまりお金の価値が目減りすることを指します。お金の価値は、紙幣に印字されている数字ではありません。お金の価値は「そのお金で何が買えるか」で決まります。
100万円にはどのくらいの価値があるのでしょうか?現在の価値では自動車を買えるくらいの価値がありますが、仮に消しゴム1つが100万円になると100万円はほとんど価値がなくなります。このようにお金の価値はそのお金で何が買えるかによって決まり、モノの値段が変われば、お金の価値は変わるという理解が大切になります。
借金も同じです。お金の価値が下がれば借金を返すのも楽になります。借金は借りた額を返すため、100万円の借金は現在の価値では自動車を買えるくらいですが、消しゴム1つが100万円になってしまえば、消しゴムを1つ買うのを我慢すれば借金が返せることになります。つまり、インフレによって、実質的に借金の価値が減っていることになります。
▶投資をする、しない?
額面が減らないことを重視するのか、価値が減らないことを重視するのか、ではどちらがお考えに近いですか。投資をする、しない、ということは、生活費が上がっても、100万円が100万円であればいいのか、同じものを買えるようにしたいのか、ということです。
緩やかなインフレ政策
日本銀行は、2013年1月より、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定めており、できるだけ早く実現するとしています。その目標を達成するために、まず長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、次に、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を実施しています。
前年比2%の物価上昇率が継続した場合、毎年2%ずつ国民の資産も政府の負債も減価していくことになります。よって、日本を始めとして政府債務残高が大きい先進国にはインフレにするニーズがあることになります。しかも、戦後のようなハイパーインフレやデフォルトでの債務削減は国民には受入れられませんが、緩やかなインフレ政策であれば大きな反発は起きていません。
またインフレには税収アップ効果があります。消費税などの税率はインフレ率に合わせて変わるわけではないため、物価が上昇すればその分、税収も増えることになります。このように政府債務が大きく、ゆるやかなインフレ政策をとっている日本では、インフレに備えた対策、インフレによってせっかく貯めた自分の金融資産を減らさない対策、が必要となります。
データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 投資の必要性編(5)<過去の債務削減方法とインフレ>』を参照)。
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