次第に有害性が知られるようになった「アマルガム」
歯科治療における金属アレルギーは、ここ何十年かで知られるようになった病気です。特に今、40歳以上の人は、虫歯の治療の際、アレルギーの原因になりやすいアマルガムや銀などの重金属が使われていることが多く、それがさまざまな体調不良の原因となっています。
アマルガムというのは水銀と他の金属を合わせて作る合金の総称です。加工が容易で殺菌性に優れていることから、かつて虫歯の治療の際の詰め物として、多く使われてきました。最近の歯科治療ではめったに使われなくなりましたが、それは次第にアマルガムの有害性が知られるようになったためです。水銀は常温で気化しやすい性質を持っており、その合成化合物であるアマルガムもちょっとした刺激で気化しやすく、気化するとその成分が空気中にばらまかれます。
お口の中に埋め込まれたアマルガムも同様で、ものを飲んだり食べたりするだけで、1日平均1~10μgの水銀が放出されて体内に入り込んでいるのです(μgは100万分の1グラム)。水銀は人体に有害な金属の中でも、神経系統に対する強い毒性を持っており、視力や味覚の低下、頭痛、うつ病、喘息、アレルギーなどの症状を引き起こします。また疲れやすさや集中力の欠如、胃腸障害や不眠などの原因にもなります。
歯の治療で使われる金属には、他に銀、ニッケル、パラジウム、コバルトなどいくつかの種類があります。これらの金属は、お口の中でさびやすく、唾液の中に成分が溶け出しやすいという共通した性質を持っています。お口の中の金属は、長い間入れっぱなしにされることが多く、そのため、溶け出した物質が身体の中に蓄積されてアレルギー源となり、かゆみや発疹といったアレルギー症状を引き起こすのではないかと考えられています。
また複数の金属がお口の中に存在していると、アレルギーが起こりやすいともいわれています。 特に、進行した歯周病や口内炎など、お口の中で炎症が続いていると金属アレルギーが誘発されやすいので、そうした症状をお持ちの方は注意が必要です。近年、アクセサリーがアレルギー源となることが知られるようになり、金属アレルギーに対する一般の方の意識も高まってきました。
とはいえ、ご自分の身体に起こっている何らかの不調の原因が、歯科治療に使われた金属にあるとは、なかなか考えが及ばないのではないでしょうか。歯の治療でよく使われる金属には、こうしたリスクがあることを心に留めておいていただけたらと思います。アレルギー反応によって起こる症状には、アトピー性皮膚炎や湿疹、脱毛症、味覚障害のほか、手の平や足の裏の膿瘍(掌蹠膿疱症:しょうせきのうほうしょう)などがあります。
パッチテストや毛髪ミネラル検査で調べられる
金属アレルギーの有無を調べるには、皮フ科でのパッチテストや毛髪ミネラル検査が有効です(書籍『美容歯科医がこっそり教える ほんとうのきれいをつくる方法』の134ページを参照)。クリニックで行っている毛髪検査は髪の毛を根本から3センチほど切ったものを検査機関に提出すると、2~3週間で結果が送られてきます。歯科の治療に使われている金属の量が多い場合、お口の中からその金属を除去します。
また、あわせて体の中に蓄積された金属を排出する働きをするサプリメントや、ビタミンC点滴やキレーション点滴、酵素によるファスティング(断食)をすることをおすすめしています。これによって3~6か月くらいで湿疹がおさまり、体調が回復してくることがほとんどです。
金属アレルギーについては知っていましたが、まさか自分もそのアレルギーを持っているとは夢にも思わなかったユキエさん。お口の中から有害物資を除去し、代わりに害のないジルコニアで治療をしました。
一番大きな変化は、食べるものに対して、敏感になったことだそう。デトックスに効果的な食材を取り入れるなど、食事に気をつけるようになりました。そのおかげで腸内環境が整ったのでしょう。お肌の色つやもグンとよくなりました。「まさか歯科でこんなにいろいろな治療ができて、自分自身を変えることができるとは考えもしませんでした」と話してくださいました。
では、連載の第3回、第4回で登場した、ユキエさんの受けた施術をおさらいしてみましょう。
①軽い虫歯2本をカリソルブと歯髄温存療法で治療
②欠損した左の奥歯をインプラントで補う
③金属アレルギーの検査および原因物質の除去
お口の中が整ったことで、より美しくなるベースができました。
酒井 暁美
アミーズ歯科クリニック 理事長