「20年付きあえる投資信託」を自分の目で見定めよう
Q-3
証券会社、銀行、郵便局、どこで買えばいいのでしょうか。
つみたてNISAは「どの金融機関で買えば良いのか」ではなく、「どの投資信託で積み立てれば良いのか」をまず考えて、その投資信託を扱っている金融機関に口座を開くべきです。ご質問にあるように、どの金融機関にNISA口座を作れば良いのかというのは、順番が逆なのです。
銀行でも証券会社でも良いのですが、ともかく窓口に行って、「つみたてNISAを申し込みたいのですが、投資信託はどれを買ったら良いのでしょうか」と聞くのは、最もやってはいけないことです。
そうなってしまうと、あなたにとって、いいものではなく販売担当者が「売り易いもの」、たとえば代行手数料(本書『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』、110ページ)が高いものという販売動機があったり、国際分散投資の商品でなく単純な日経平均インデックスファンドといった、意図しないものを買わされてしまうかもしれません。
つみたてNISAは、ご自分が20年付きあえる信頼感が持てる商品をまず定めたのち、それが購入できる先を調べてそこにつみたてNISA口座を開設するようにしましょう。
買いたい投資信託を決めてから、それを売っているところで購入。基本的にネットで購入した方が、セールスもなく、手数料も安いのでおすすめです。
給料から各種経費を差し引き、余ったお金で投資を
Q-4
今はお金がないので、もう少し余裕が出来てから投資を始めてはダメですか。
「投資は余裕資金でやりましょう」
よくこのようなアドバイスをする方がいらっしゃいます。確かに投資はリスクのあるものですから、衣食住など生活に必要な資金を充ててしまうと、いざ損失が生じたとき、どうしようもなくなって解約せざるを得なくなり、その時点で損失を発生させてしまうということになります。
世界経済はまだまだ右肩上がりで成長していきますからグローバルに投資するリーズナブルなコストの投資信託を買って、持ち続けていれば、途中は、価格が下がることがあったとしても、経済成長していれば、成長に応じて上昇する前提で、逆にとても大きなリターンが見込めることもあるはずです。
でも、「余裕資金が出来たら投資しよう」という心構えでいると、いつまで経っても投資できないということにもなりかねません。このようにおっしゃる方は、多少、余裕資金が出来たとしても、またほかの言い訳を見つけて、なかなか投資を始めないというケースが往々にしてあります。
大事なことは、とにかく少額資金でも良いので、投資を始めてみることです。そのためには、つみたてNISAのように毎月少額資金で積立投資できる方法が、理想的なのです。
恐らく、そんなに余裕しゃくしゃくで生活が出来ている人など、ほとんどいないでしょう。毎月のお給料から生活に必要なお金、保険の掛け金、各種ローンなどを払っているうちに、もうお給料袋の中身は空っぽという方も少なくないと思います。それでも、何とかして将来、お金に困らないような対策を考える必要があるからこそ、投資をするわけです。
なので、毎月のお給料をもらったら、そこから各種必要経費を差し引いて、余ったお金で投資をするという発想を、逆転させる必要があります。
つまり、毎月のお給料から、「これだけなら何とか続けることができる」という金額を弾き出し、それをまず差し引いて投資に回してしまうのです。そして、残ったお金で生活するようにしましょう。
それは無駄な保険を解約したり、行ってもいないスポーツクラブを退会したり、もしくは飲みに行くのを1回減らす、といったようなことで簡単に実現できるかもしれません。何よりも、つみたてNISAを始めてしまえば、毎月、決まった金額が自動引き落としで積み立てられていきますから、理想的な資産形成が出来るはずなのです。
長期投資は元手がなくても始められます。まずは少額からでいいので、つみたてNISAを始めてみましょう。増額、休止もできます。長期で積み立てを続けることで、将来大きなお金に育ちます。
投資は「少しでも早いスタート」が有利
Q-5
つみたてNISAはいつから始めても20年間出来るのですか。
出来るとも言えますし、出来ないとも言えます。
つみたてNISAがスタートしたのは2018年で、投資可能期間は2037年までの時限立法になっています。つまり20年間、新規資金を追加できます。年間の積立金額の上限は40万円ですから、20年間で800万円の投資元本に生じる収益が、非課税扱いになります。
でも、現在の法律上、2038年以降は新規資金の追加が出来ないことになります。ということは、2019年から積み立てる人は、投資元本で760万円までしか、非課税枠を利用できないことになります。2020年から始める人は720万円ですし、2021年から始める人は680万円までしか、非課税運用が出来ません。
したがって、つみたてNISAの制度を少しでも有効に活用したいのであれば、少しでも早くスタートさせることが肝心なのです。
一方、非課税期間については20年間で、これは毎年積み立てた分について最長20年間で生じた収益が、非課税扱いになります。
2018年に投資した40万円に生じた利益 ➡ 2037年まで非課税
2019年に投資した40万円に生じた利益 ➡ 2038年まで非課税
2020年に投資した40万円に生じた利益 ➡ 2039年まで非課税
2021年に投資した40万円に生じた利益 ➡ 2040年まで非課税
このように1年ずつずれて、投資元本40万円に生じた利益が20年間、各年等しく非課税扱いになります。なので、投資可能期間の最終年である2037年に投資した40万円に生じた利益は、2056年まで非課税扱いになるということです。
投資可能期間と非課税期間をごっちゃにしてしまうケースがあるようですが、投資可能期間とは、年間40万円ずつ積み立てられる期間のことで、これは2037年までと区切られています。
これに対して非課税期間は文字通り、その年に投資した分が非課税扱いになる年数のことで、最長20年です。
ただ、この制度が普及していけば、投資可能期間については延長、もしくは無期限化される可能性が高く、すでに証券業界も投信業界も業界団体を通じて政府に制度恒久化の要望を提出しています。
今のところ、非課税期間は20年、毎年の投資枠は2019年から始めたら、あと19年しかありませんが制度恒久化に向けて業界は要望に動いています。
中野 晴啓
セゾン投信株式会社 代表取締役社長