親族間等において、無利子で金銭を貸与しようとする場合、その貸与が“贈与”とみなされて贈与税が課せられることのないよう、あらかじめ注意しておく必要があります。相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠が解説します。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
5/19(日)>>>WEBセミナー

「無利子の金銭貸与」と贈与税について

たとえば、息子が飲食店を開業することになり、開業資金の一部を父親である自分が貸してあげようと考えているケースで見ていきましょう。

 

想定している金銭貸与の額が1,000万円程であった場合。親族間の貸し借りが贈与とみなされ、贈与税が課せられないようにするには、次の点に注意してください。

 

(1)無利子の金銭貸与等とみなし贈与

 

夫と妻、親と子、祖父母と孫など、特殊な関係がある者相互間で無利子の金銭貸与等があった場合、実際には贈与であるにもかかわらず、貸借に仮装して贈与税の課税回避を図ろうとする例がしばしば見られます。

 

特殊の関係がある者相互間で金銭の貸与等があった場合において、それが事実上贈与であるにもかかわらず貸与の形式をとっていると、相続税法第9条に規定する利益を受けた場合(みなし贈与)に該当するものとして取り扱われてしまいます(相続税法基本通達9-10)。

 

たとえば、父から子への金銭の貸与があったとき。その貸与が形式的なものであって、実質的には両者の間で贈与の認識があるような場合には、この「みなし贈与」と認定される危険性があるわけです。

 

とくに親族間の場合、「後で返すから」などの簡単な口約束でお金の貸し借りをし、その後の返済について考えていないケースも見受けられます。「返す意思」「返してもらう意思」そして「返済の事実」がなければ、税務当局から「贈与」とみなされてしまうので注意しましょう。

 

(2)贈与と認定されないためには

 

では、「贈与」と認定されないためにはどうすればよいでしょうか。

 

まずは、借用書等を作成し、返済期間、返済方法等の返済条件をあらかじめ定めておくことが必要です。返済条件については、とくに以下の点に注意が必要です。

 

① 返済額は借主の収入状況等から無理のない範囲で設定すること

 

契約通りに毎月返済したとき、全く生活費が残らないような状況では問題です。毎月の収支の状況から考えて、常識的な生活費が残る程度の返済金額を設定するようにしましょう。

 

② 返済期間については貸主の年齢も考慮すること

 

たとえば、90歳の祖父から返済期間を30年としてお金を借りた場合。祖父の年齢を考えると、完済は現実的ではありません。そうなると最初から返す意思、回収する意思がお互いになかったとみなされる危険性があります。

 

また、借りた後は、借用書等で定めた契約内容通りに返済してください。借用書等を作成して体裁だけ整えても、返済の事実がなければ、返す意思がなかったとみなされてしまいます。

 

なお、返済をする際には、返済の事実を証拠として残すために、お互いの銀行口座等を通して返済することが望ましいでしょう。

無利子の金銭貸与で贈与税を課せられないために

以上のことから、親族間で無利子の金銭貸与を行う場合の注意点は、次の3点になります。

 

① 契約内容:他人に貸し付ける場合と同等の内容(返済金額・返済期間)で契約書を作成すること。

 

② 返済の実績:契約書通りに返済を行うこと。

 

③ 返済能力:借りる人に返済能力が十分にあるか、返済に無理がないか、なども確認しておくこと。

 

もし、父が子に対して資金援助する場合、「貸したことにしておこう」と仮に借用書等を取り交わしていたとしても、上記の②と③の立証ができないと、税務当局からは「金銭の貸与ではなく父から子へ金銭が贈与された」とみなされる危険性があります。

 

第三者間の貸借とは異なり、親族間の「金銭貸与(貸借)」は「贈与」と認定されるケースがよくあります。そのため、あらかじめ「貸借」であるということを主張できる状態を作っておくようにしましょう。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

\4/17開催・WEBセミナー/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の税務調査の実態と対処方法

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

本記事は、『税理士法人レガート』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧