増加傾向にある日本の寄付者数・寄付金額
日本は欧米に比べて「寄付の後進国である」といわれますが、本当にそうなのでしょうか。まずは日本の寄付の規模を数字で見てみましょう。日本ファンドレイジング協会の発行する『寄付白書2017』(図表1)によれば、2016年の日本の個人寄付額は7,756億円と推計され、前回調査時の2014年の7,409億円と比較すると4.7%増加しています。
寄付者数の推定では、2009~2010年時点では年間約3,700万人だったものが、東日本大震災という異常事態のあった2011年に7,026万人と大きく増えました。2016年時点では4,571万人となり、これは15歳以上人口の45.4%が寄付をしていることになります。寄付を行った人の平均金額は27,013円で、前回調査時の5,834円から大幅に増加しています。日本の個人寄付は、東日本大震災を機に寄付者数・寄付金額ともに増加している傾向にあるといえるでしょう。
7,756億円と推計される日本の個人寄付金額。これは名目GDP比率でいうと0.14%という水準になります。この規模を寄付の文化が進んでいるといわれる欧米(米国と英国)と比較してみましょう。
GIVING USA 2017 によれば米国の2016年の個人寄付総額は2,818.6億(図表2)ドルで、日本円に換算すると約30兆6,664億円 (1ドル=108.8円換算)、なんと約40倍もの規模です。2014年と比べると9%増えており、名目GDP比率でいうと日本の10倍の1.44%という水準になります。英国の2016年の個人寄付総額は97億ポンド(Charities Aid Foundation 2017)で、日本円に換算すると約1兆5,035億円(1ポンド=155円換算)になり日本の約1.9倍の規模、名目GDP比率でいうと日本の3.9倍の0.54%になります。
隣国の韓国も個人寄付総額は7兆900億ウォン、日本円換算すると6,736億円(100韓国ウォン=9.9円換算)と金額ベースでは同水準ですが、名目GDP比で日本の約3.6倍の0.5%と高い水準になっています。
「寄付」が切迫する社会問題を解決へと導く
統計データより、日本における寄付の規模は米英韓国と比較して明らかに小さいことがわかりました。私はこれを「日本には寄付文化がない」とするのではなく、「まだまだのびしろがある」ものと捉えています。そして、これからの日本に、寄付はますます必要となるのです。
これまでの日本の社会システムは、右肩上がりの経済成長が前提で、年々増加する税収を再配分することで社会の問題を解決してきました。しかしながら、高齢化が進むこれからの日本社会では成長による税収増加は見込めず、深刻な高齢化の進展により社会保障費は確実に増大していきます。
2019年度の国の予算(財務省、平成31年度予算政府案より)を見ると、予算規模101.5兆円と初めて100兆円の大台に乗り、基礎的財政収支は▲9.2兆円で黒字化はまだまだ見えず、公債への依存度は32.2%と高水準のままです。国債と借入金などの残高を合計した「国の借金」は1,103兆3,543億円と名目GDPの約2倍の水準。1989年3月末時点では206兆円だったので、平成の30年間で5倍超に膨れあがりました。政府は主に少子高齢化で増大する社会保障費を赤字国債の発行で賄っていることから、国の借金は慢性的に増加傾向が続いています。このままの社会制度が抜本的な改革がなされないまま進めば、最悪の場合、国の財政は破綻することになるわけです。
国の財政支出の大きなウェイトを占める社会保障費には、年金、医療・介護、子ども・子育て支援などが含まれますが、これらのすべてを税財源だけで担う=公が担うのは限界がきているのです。ただ、どれも大切なものなので削ることは難しい。そこで登場するのが、民間の公的サービスの担い手、社会課題解決の担い手である、民間非営利団体(NPO)なのです。
NPOが提供する「非受益者負担(=第三者による負担)」の仕組みを支えている財源の最も重要なものが寄付です。こう考えると、寄付はこれからの日本社会に欠かせない重要なリソースであるといえるでしょう。強制的に徴収される公的な財源である「税」が明らかに不足している現状で、任意かつ善意に支えられた公的財源となる「寄付」は、これからの日本でますますその重要性を増していきます。
長い間かけて確立されてきた現代の社会システムをすぐには変えられませんが、寄付により、これから長い時間をかけて変化していく「間」をつなぐことができます。そしてその寄付の出し手となる代表格は、事業や投資である程度の成功をし、これからその恩恵を社会に、そして未来に還元しようとする「フィランソロピスト」たちです。
数々の社会課題解決の担い手たちが、皆様の支援を待っています。寄付を「社会課題解決への参加の機会」と捉え、自分が取り組むべき社会課題は何かを設定し、積極的に行動してください。また寄付先やテーマの選定を悩んだ際には、一緒に寄付先探しを考えたいと思います。