寄付をしたら受けられる「税制優遇処置」の費用対効果

今回は、寄付に関する税制を紹介していきます。※本連載では、寄付を募る団体と寄付をしたい人を繋ぐファンドレイジングアドバイザーの宮本聡氏が、日本における寄付文化の現状と可能性について解説していきます。

寄付に関する「税制上の3つの優遇措置」

NPO法人等の民間非営利団体に、一定の条件の元で寄付をした場合には、税制優遇を受けられる「寄付税制」という制度があります。税制上の優遇措置は、具体的には下記の3つからなります。

 

(1)個人が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた所得控除もしくは税額控除が得られる。

(2)企業が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた損金算入(経費処理)が認められる。

(3)個人が相続財産を寄付した場合、その寄付分が課税対象外になる。

 

しかし、寄付金控除があるといっても、ある一定金額は控除対象にならない自己負担部分(キャッシュアウト)があり、「寄付をして節税」「寄付して得する」という考え方は通常の寄付税制ではあり得ません(制度の歪みによりそれが実現してしまったのが「ふるさと納税」ですが、ふるさと納税制度については改めて紹介いたします)。

 

したがって、寄付金控除があることは寄付をする直接的な動機にはなりません。寄付はあくまで、心が動いた時にするものであって、結果として税制優遇が受けられるものです。税制上の優遇措置は、寄付をすることで社会に貢献したいと考えている人の活動を、さらに後押ししてくれる制度といえるでしょう。

個人が支出した寄付金の控除

個人が、国や地方公共団体、特定公益増進法人(公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人等税制上の優遇を受ける法人の総称)や認定NPO法人等に寄付をした場合には、「寄付金控除」を受けることができます。寄付金控除の対象となる金額は、「寄付をした金額 - 2,000円」です。10,000円の寄付をした場合には 8,000円が、 100,000円の寄付をした場合には 98,000円が寄付金控除の対象金額となります(ただし、総所得金額等の40%が限度)。

 

この寄付金控除は、従来は「所得控除」の方式しか認められなかったのが、平成23年度の税制改正で、「税額控除」の方式も認められるようになり、寄付者はいずれか有利な方法を選択できるようになりました(ただし、税額控除を選択できるのは、認定NPO法人や、一定の証明を受けた特定公益増進法人に寄付した場合に限られます)。

 

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「税額控除」では、税率に関係なく所得税額から直接控除されるため、既存の「所得控除」と比較して、ほとんどの人は寄付に対して減税額が大きくなります(一般的なところでは、住宅ローン控除などがこの「税額控除」の方式による減税制度です)。

 

「所得控除」による方式は、医療費控除や配偶者控除のように、所得金額から控除されるものです。所得税は、課税所得金額に税率をかけて計算するので、所得控除方式の寄付金控除は、税率が高い人(=高額所得者)であればあるほど効果が高くなるという特徴があります。

 

控除方式と控除金額※総所得金額等の40%が限度。ただし、震災関連寄附金は総所得金額等の80%が限度
控除方式と控除金額※総所得金額等の40%が限度。ただし、震災関連寄附金は総所得金額等の80%が限度

寄付金控除額は所得によってどの程度変わるのか

ここで、所得控除と税額控除の減税額が収入(所得)によって、どの程度の差になるのか試算して比較します。たとえば、年収400万円(課税所得金額150万円、所得税率5%、所得税額7.5万円)のAさんと、年収1,000万円(課税所得金額600万円、所得税率20%、所得税額120万円)のBさんが、それぞれ年間5万円ずつ寄付した場合に、所得控除を選択した場合と税額控除を選択した場合に分けて計算します。

 

<所得控除の場合>

Aさん:寄付金額5万円、減税額2,400円

    (50,000円※ — 2,000円)×5%=2,400円

     ※150万円×40%=60万円>50,000円 ⇒50,000円

 

Bさん:寄付金額5万円、減税額9,600円

    (50,000円※ — 2,000円)×20%=9,600円

     ※600万円×40%=240万円>50,000円 ⇒50,000円

 

同じ額を寄付しても、高額所得者で税率が高いほど効果が高いことがわかります。

 

<税額控除の場合>

Aさん:寄付金額5万円、減税額18,750円

    (1)(50,000円※ — 2,000円)×40%=19,200円

     ※150万円×40%=60万円>50,000円 ⇒50,000円

    (2)75,000円×25%=18,750円

    (3)(1)>(2) ⇒18,750円

 

Bさん:寄付金額5万円、減税額19,200円

    (1)(50,000円※ — 2,000円)×40%=19,200円

     ※600万円×40%=240万円>50,000円 ⇒50,000円

    (2)120万円×25%=300,000円

    (3)(1)<(2) ⇒19,200円

 

限度額を超過しなければ、所得金額に関わらず基本的に効果は一定であることがわかります。

 

課税所得金額と税率、寄付金控除を受ける前の所得税額がわかっていれば、所得控除と税額控除の減税額の比較計算はそんなに複雑なものではありません。確定申告の際には計算して比較し、有利な方を選ぶとよいでしょう。

寄付金控除を受けるための手続き

寄付金控除は、会社員(収入源が一定水準以下の給与所得のみ)だったとしても年末調整では完結できず、寄付金控除、または寄付金特別控除(税額控除)に関する事項を記載した確定申告書を提出する必要があります。個人事業者、高額所得者、複数の収入源がある方など、元々確定申告をしている方にとっては記入欄が少し増えるだけなので大きな手間ではないかもしれませんが、確定申告をしていなかった方が少額かつ一度きりの寄付をした場合など、わざわざ確定申告をする手間をかけるのかは悩むところかもしれません。

 

ある一定以上の所得水準の方は「費用対効果」が合わない手続きにもなりかねません。ただ、寄付金控除を活用した寄付は、ある意味では「税金(の一部)の使い道を自分で選ぶこと」でもありますので、個人が社会問題等について考えるよい機会になります。自分がその年にどんな寄付体験をしたのか振り返る意味でも、寄付金控除の確定申告手続きを行うことをおすすめします。さらに確定申告の時期に改めて、寄付先団体から届いた「活動報告書」などを眺めれば、寄付の効果を実感することができるでしょう。

 

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営業コンサルタント
ファンドレイジングアドバイザー
(株)シティインデックス海外不動産事業マネージングディレクター
認定特定非営利活動法人ACE 理事
公益財団法人 ふじのくに未来財団 理事
株式会社リビルド 社会貢献部長
一般財団法人 共益投資基金JAPAN 理事

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科卒業。1972年静岡県(西伊豆)生まれ。

鉄道会社、地域金融機関、不動産仲介会社、外資系金融経済情報会社、中間支援NPO、マンションディベロッパー、クラウドファンディング運営会社など、様々な業種での勤務経験を持つ営業コンサルタント/ファンドレイジングアドバイザー。主に中小企業やNPO/NGOの経営や営業の支援を行うコンサルタントとして活動する傍ら、海外不動産の販売やファイナンシャルプランナーとして事業承継や資産活用の助言も行う。

<保有資格>
経営管理修士(MBA)、認定ファンドレイザー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、一種証券外務員、等々。

著者紹介

連載社会問題を解決へと導く「寄付」の可能性

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