「地上げ」に悪いイメージを持つ人は多いが・・・
かつてバブル景気の時代に「地上げ」という言葉がメディアを騒がせました。「地上げ」とは、読んで字の如く、土地の価値を上げることを指します。
バブル景気の頃、「地上げ」にはネガティブなイメージがついていました。その土地に長年住んでいる老人のもとに、ある日とつぜん不動産屋が現れて、土地を売ってくれというのです。それを断ると、今度はヤクザのような怖い人が交渉に来たり、あの手この手の嫌がらせが始まったり、強引に取引を迫る印象が「地上げ」にはあります。
実際にはそんなことはほとんどありません。というより、当時でも問題とされたのは「地上げ」そのものではなく、その交渉方法でした。「地上げ」そのものに対して否定的な人はあまりいないと思います。
では「地上げ」とはいったいどのようなものでしょうか。それは、地形などに問題があって価値が落ちている「ワケあり物件」を、隣地とまとめることで土地の価値を高めることです。
たとえば、接道義務を満たしていないために再開発不可となっている土地は、周辺の相場価格と比べると二束三文になってしまいますが、隣の土地を購入して一体化することで、相場どおりの価格を回復することができます。あるいは、地形が悪く敷地面積を有効活用できないような土地も、隣地と合わせることで方形になるかもしれません。
そもそも旗竿地のような袋地の地形は、もともと一つにまとまっていた土地を、地主さんが切り売りしていったために作られたもので、不自然なものなのです。
地上げ交渉の際は「第三者」に仲介に入ってもらう
バブル景気の頃は、都心に再開発で大きな商業ビルなどを建てるために、小さな戸建ての立っている土地を買い上げてまとめる手法が流行しました。大規模な開発が行われれば、街の価値が高くなって地価も上がるので、基本的にはポジティブな行為だと私はとらえています。
もちろん、売却したくないと主張している人に対しての強引な交渉はNGです。ちなみに、「地上げ」をしようとしても、ゴネ得で価格を上げるために売却を渋る人もいて、なかなか難しいのが現実です。
不動産というものは、こちらから「買いたい」というと相手に足元を見られて価格が上がってしまうので、相手から「買いませんか?」と話を持ちかけてきたときが買い時だと、昔からよく言われています。
「地上げ」は、相手が「買いませんか?」と言ってこないのに、積極的に買いにいくものなので、どうしても困難がつきまといます。
このような地上げの手法は、底地権と借地権とが分かれている土地について、両者の権利を一体化する場合にも有効です。当事者同士で交渉をすると、お互いの欲が出てなかなか話がまとまりませんから、第三者に仲介に入ってもらって、一体化後に土地の売却で得られる利益を折半するようなかたちにするとうまくいくでしょう。