ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米トランプ政権は、15年に米英独仏中ロとイランの間で結んだイラン核合意を昨年5月に離脱すると表明し、それに伴い18年11月からイラン産原油の禁輸を打ち出していました。ただ、8つの国、地域は適用除外となっていましたが、5月からは延長しないと表明しました。原油価格の不安定な動きが懸念されますが、次の点で、ある程度、原油価格上昇の抑制も想定されます。

イラン原油禁輸:トランプ米政権、日本などへの原油禁輸の適用除外を終了へ

トランプ米政権は、2019年4月22日、日本を含む国・地域(日本以外は中国、ギリシャ、インド、イタリア、韓国、台湾、トルコ)に対してイラン産原油の禁輸から適用除外としている措置を5月2日に打ち切ると表明しました。

 

 

これを受けて原油市場では供給減少懸念から価格が上昇しました(図表1参照)。中国など主要輸入国の一部とイランは反発を強めています。

 

[図表1]WTI原油先物価格と米国ガソリン小売価格の推移 日次、期間:2018年4月22日~2019年4月22日 ※WTI原油価格:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物価格で構成 ※米国ガソリン小売価格:全米自動車協会が算出の米国ガソリン小売価格 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]WTI原油先物価格と米国ガソリン小売価格の推移
日次、期間:2018年4月22日~2019年4月22日
※WTI原油価格:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物価格で構成
※米国ガソリン小売価格:全米自動車協会が算出の米国ガソリン小売価格
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:イラン、禁輸の適用除外、ガソリン価格、中国

米トランプ政権は、15年に米英独仏中ロとイランの間で結んだイラン核合意を昨年5月に離脱すると表明し、それに伴い18年11月からイラン産原油の禁輸を打ち出していました。

 

ただ、先の8つの国、地域は180日適用除外となっていましたが、5月からは延長しないと表明しました。原油価格の不安定な動きが懸念されますが、次の点で、ある程度、原油価格上昇の抑制も想定されます。

 

まず、数字で確認します。イランの原油生産量は昨年は日量380万バレルと、世界の産油量4%程度でしたが、昨年11月以降は急減、19年は日量270万バレル程度です。

 

イランの原油輸出量は今年になって120~130万バレル/日と、昨年の240万バレル/日程度から概ね半減となっています(図表2参照)。イランの原油を輸入する主な国は中国が60万、韓国が40万弱、インド25万、日本10万、トルコ10万弱(単位はバレル/日)程度です。日本のイランからの原油輸入量の全体に対する比率は3~5%程度です。米国が適用除外を表明しても影響は限定的と日本政府は表明していますが、確かに過剰な懸念は禁物と思われます。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表2]イランの1日あたり原油輸出量の推移 月次、期間:2016年3月~2019年3月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]イランの1日あたり原油輸出量の推移
月次、期間:2016年3月~2019年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

次に、産油国が、手際よく、増産の可能性を示唆している点です。例えば、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は150万バレル/日程度の増産は短期間に可能と表明しています。イランの輸出がゼロとなっても影響が無い数字が報道されています。原油価格は、リビアやベネズエラの生産停止などを背景に足元上昇傾向で、それに伴い米国国民が過敏に反応するガソリン価格も上昇しています。昨年トランプ大統領が原油市場に「高過ぎる」とコメントした水準に近づいているだけに(図表1参照)、自らの政策で原油価格が上昇することに配慮が払われると見られます。

 

最後に、これが経済的にプラスかマイナス要因かわかりませんが、中国が素直にイラン産原油の禁輸を受け入れるかは不透明です(トルコも不満を述べています)。対イランだけでなく米中の緊張が高まるリスクはありますが、中国などが禁輸を拒否すれば供給懸念は和らぐことが見込まれます。

 

米国はイランの生命線である原油輸出を断ち切ることで、体制弱体化を目指す一方、原油価格へ配慮もあるようです。

 

しかし、イランなど当事国との緊張が高まれば、中東や石油を輸入に依存する国が不安定となる懸念もあります。影響拡大の可能性があるリスクの高い戦略と見られます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国のイラン原油禁輸、戦略としてはハイリスクとの見方も』を参照)。

 

 

(2019年4月23日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【4/16開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【4/16開催】次世代のオルタナティブ投資
「プライベートクレジット投資」とは

 

【4/17開催】調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

 

【4/19開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【4/20開催】「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧