1990年代生まれの「ゆとり世代」も30代に差し掛かる。いよいよ企業の中核を担うポジションが求められる年齢だ。「ゆとり教育」という言葉のイメージがあるものの、この世代の大学進学率は51%(2010年度)と他の世代と比較しても高く、個々のポテンシャルは十分に感じられる。彼らが管理職、役職へとステップアップしていくにあたり、企業としていかに上手くマネジメントできるかは、今後、一企業、一経営者にとってだけではなく、日本社会全体の成功のカギを握るであろう。

同調圧力を利用し、チームワークで熱を高めていく

教育論を教える明治大学の齋藤孝教授は、著書『若者の取扱説明書 「ゆとり世代」は、 実は伸びる』の中で、ゆとり世代に授業に真剣に取り組ませる方法について書いています。 

 

それは、彼らが「真面目」で「大人しい」ことを逆手に取って、毎回全員に授業で発表させることで「やってこないと周囲から浮くぞ、取り残されるぞ」と脅しをかける方法でした。目立ちたくない彼らにとって、周囲から浮く恐怖は並々ならぬものだったようで、全員が真面目にこのハードワークに取り組むようになったそうです。齋藤孝教授は、この方法を「逆手指導ステップ」と名づけました。そのポイントは、同世代の同調圧力をうまく利用することにあります。

 

会社の仕事は大学の授業とは異なるので、全員に同じ課題を与えて発表させる方式は使えませんが、同調圧力の利用は功を奏するかもしれません。つまり、簡単な業務を与えて徐々に会社に慣れさせていくよりも、最初から負荷の高い業務を一律にかけて「皆これくらいやっている」とすると、意外と「これが普通なのか」と慣れてしまうのです。ただし、この際には以下の三つの注意点を守ってください。

 

① どんな結果が出ても否定せず、肯定的な評価を与える

 

レベルの高い仕事をアサインしているのですから、最初から良い結果が出ることはほとんどありません。しかし、心優しいゆとり世代はダメ出しをされるとやる気をなくしてしまいます。そのため、どのような結果が出ても、最初は一言でいいのでポジティブな評価をしていきましょう。

 

② 明確な指示とゴールと評価基準を最初に与える

 

ゆとり世代は仕事の経験が不足していますから、最初のうちは何をやればいいのかが分 かりません。そのため、どこに向かって(ゴール)、どのような結果を出せばいいのか(評 価基準)を、最初に明確な言葉で具体的に説明しましょう。ゴールと評価基準さえクリア になっていれば、その後は自分で考えることができますし、やっているうちにレベルも上 がってくるでしょう。

 

③ チーム内に明るく楽しい雰囲気をつくる

 

同調圧力を利用するためには、相互刺激が不可欠です。一人ひとり個別に作業させるのではなく、できるだけチームワークができるような業務を考えましょう。お互いの仕事を見ることで「負けられない」との気持ちを芽生えさせることができます。ゆとり世代は競争意欲が少なく合理的でクールとの印象がありますが、その分、自分にはない情熱や熱さへの憧れがあります。上司の役割はチーム全体の熱を高めることにあります。

潰れてしまわないように、しっかりとフォローを

アメリカの医師ランドルフ・ネッセは、あらかじめ弱い病原菌に感染させることで免疫をつくるワクチン理論にのっとり、人間もあらかじめ安全な状況において困難な経験をすることで、そのあとに耐える力が強くなると唱えました。これを「苦労の免疫理論」と呼びます。

 

ビジネスでいうなら、新入社員で手厚いフォローを受けているうちに、負荷の高い仕事を与えられることで、将来の困難を克服する力を養えることになります。

 

最初から苦労をさせることで潰れてしまうのではないかと心配する向きもあるかと思いますが、そうならないようにしっかりと見守るのが上司の役目です。このような手のかかるフォローは入社直後のうちしかできませんから、「鉄は熱いうちに打て」を意識して最初から鍛えていきましょう。

 

 

西村 直哉

株式会社キャリアネットワーク代表取締役社長

人材育成・組織行動調査のコンサルタント

 

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