中国、景気後退の元凶から安全弁へ

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

中国は、政府が講じた効果的な景気刺激策によって、世界の景気後退の元凶から、景気下支えの安全弁への変身を遂げています。

 

米国は景気後退懸念にとりつかれ、ドイツでは鉱工業生産の減少が止まりません。 一方、世界経済にたち込める暗雲に差し込む一条の光ともいえるのが中国です。アジアの経済大国は、僅か数ヵ月のうちに、世界経済の安定を脅かす深刻な脅威から、救世主のような存在への変身を遂げています。中国経済の転換は、極めて珍しいことに、中国に甚大な損害を及ぼす可能性があった米国の貿易制裁の間接的な結果なのです。

 

 

米国のトランプ政権は、2018年年初以降、総額2,500億ドル相当の中国製品に関税を賦課するという経済制裁を断行しています。ピクテの試算では、中国のGDP(国内総生産)の0.3%に相当するものであり、貿易戦争が拡大した場合には1%に達する可能性もあると考えられます。

 

中国政府が、慎重かつ適時の対策を講じたことは極めて重要です。米国の制裁が中国の構造改革を促し、減税、インフラ投資の積み増し、金融緩和等、総額2.8兆元規模の景気刺激策が公表されました(図表1をご参照下さい)。ピクテの分析は、全体の3分の1程度が経済成長に寄与し、今後2年に渡ってGDP成長率を0.3-0.5%程度押し上げる可能性を示唆しています。

 

[図表1]中国の2018-2019年実施の金融・財政政策 出所:ピクテ・グループ
[図表1]中国の2018-2019年実施の金融・財政政策
出所:ピクテ・グループ

 

政府の積極的な対応が成果を上げつつあることは、中国経済に留まらず、新興国全体にとっての朗報です。信用の伸び、鉱工業生産および総固定資本形成には既に変化が認められています(図表2をご参照下さい)。地方政府特別債(専項債)の発行によって資金を調達したインフラ投資の回復は特に注目されます。

 

[図表2]緒に就く景気回復:中国の総固定資本形成および鉱工業生産の伸び、6ヵ月変化率(%)、年率: 出所:ピクテ・グループ
[図表2]緒に就く景気回復:中国の総固定資本形成および鉱工業生産の伸び、6ヵ月変化率(%)、年率:
出所:ピクテ・グループ

 

3月開催の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、今年の経済成長目標が前年の6.5%から、6.0-6.5%のレンジに下方修正されていますが、構造的な景気の減速が認識されたことは極めて重要です。新しい目標レンジは、ピクテの予想および市場のコンセンサス予想と合致します。

 

これは、債務の圧縮に伴う経済の緩やかな鈍化という構造的トレンドを中国政府が認識していることを示すものであり、景気変動抑制的な施策を伴った過剰な景気刺激策が講じられる可能性はないということについて、ある程度確信できると見られています。

 

中国経済がより安定した基盤の上にあるという事実は、その規模を勘案すると、米国およびユーロ圏経済の減速に対抗する強力な力を提供します。2018年の世界の経済成長に対する中国の寄与度は3分の1を超えていますが、今年の寄与度はこれを更に上回ることが予想されます。アジアの経済大国は復活を遂げたのです。中国経済にとっては勿論のこと、新興国全体の景気動向にとっての朗報となるはずです。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、景気後退の元凶から安全弁へ』を参照)。

 

 

(2019年4月16日)

 

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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