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今回の国際通貨基金(IMF) 世界経済見通しでは、17年から18年前半頃に見られた回復局面と対称的に、減速傾向であることが指摘されています。当面は景気回復の鈍い局面が想定されています。一方で、その後は景気の下支え時から持ち直しが想定され、IMFは20年の世界経済の成長率を前回から据え置いています。

IMF世界経済見通し:再び下方修正、19年世界経済は金融危機以来の低成長を予想

国際通貨基金(IMF)は2019年4月9日に最新の世界経済見通しを発表し、19年の世界経済の成長率を3.3%と、19年1月時点の予想に比べ0.2ポイント下方修正しました(図表1参照)。IMFは過去6ヵ月で世界経済見通しを3回下方修正しました。なお、20年の世界経済見通しは3.6%と、前回(1月時点)と同水準に据え置きました(図表2参照)。

 

[図表1]IMFの主な国・地域の2019年経済成長見通し 時点:2019年1月(左)、2019年4月(右、太字)の2時点比較 出所:IMFのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]IMFの主な国・地域の2019年経済成長見通し
時点:2019年1月(左)、2019年4月(右、太字)の2時点比較
出所:IMFのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

[図表2]IMFの主な国・地域の2020年経済成長見通し 時点:2019年1月(左)、2019年4月(右、太字)の2時点比較 出所:IMFのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]IMFの主な国・地域の2020年経済成長見通し
時点:2019年1月(左)、2019年4月(右、太字)の2時点比較
出所:IMFのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:IMF、世界経済見通し、英国、金融・財政政策

今回のIMF世界経済見通しでは、17年から18年前半頃に見られた回復局面と対称的に、減速傾向であることが指摘されています。当面は景気回復の鈍い局面が想定されています。一方で、その後は景気の下支え時から持ち直しが想定され、IMFは20年の世界経済の成長率を前回から据え置いています(図表2参照)。

 

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IMFは19年の世界経済成長率見通しを下方修正しましたが、地域的に見ると、ユーロ圏を筆頭に先進国が幅広く下方修正されています。

 

例えば、今回19年成長率が1.3%と0.3ポイント下方修正されたユーロ圏は18年10月から合計マイナス0.6ポイントの低下となっています。排出ガス規制によるドイツ自動車産業の不振、軟調な輸出、ビジネス並びに消費者マインドの悪化が主な背景とIMFは指摘しています。

 

米国は、米中貿易戦争や18年年初から成長率を拡大させてきた財政政策の効果が今年後半から減衰する点については既に前回までの予想に織り込み済みです。今回は年初の政府機関閉鎖や財政政策の効果が想定より低い分を反映させたとIMFは説明しています。

 

なお、英国の19年成長率は1.2%と前回の1.5%から0.3ポイント下方修正しました。IMFは英国の見通しの前提として欧州連合(EU)離脱は19年内に合意し、新たな体制に移行するとしています。一方で、合意なしの離脱の場合について長期的な経済成長率への影響の試算もIMFは示しています。例えば、英国が移民を制限した場合、現在の成長シナリオに比べ、約3%程度低い成長率にとどまると述べています。

 

次に、19年成長率予想を新興国について見ると、4.4%と、0.1ポイント下方修正されています。ただ、地域的な偏りがあり、下方修正は主にアルゼンチンやベネズエラなどが軟調な南米と地政学リスクが続く中東となっています。

 

反対に財政・金融政策の効果が今後期待される中国を始めアジアの19年は底堅い動きが想定されています。

 

なお、今後の成長に注意も必要です。20年の世界経済成長はメインシナリオでは3.6%へ回復が予想されています。19年前半に低下した成長率は、政策効果等で年後半回復すると見ているためです。また米国の20年の成長率低下は、あくまで潜在成長率への自然な回帰とも述べています。しかし貿易戦争の悪化、欧州経済、地政学リスクなど景気下押し要因も多く、回復といっても下方リスクを意識する必要があり、世界経済の動向は微妙な段階にあると見られます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『国際通貨基金(IMF)、2019年の世界経済の成長率を下方修正』を参照)。

 

(2019年4月10日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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