反対に次ぐ反対…英国のEU離脱プロセス、混迷の背景

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実施そのものが危ぶまれていたメイ政権とEUの離脱協定案の3回目の採決実施が表明されました。メイ首相は可決されれば辞職する意向を表明しており、退陣を賭けて可決を迫る構えです。ただ、現時点の報道では、閣外協力の関係にある民主統一党(DUP)が反対を表明するなど採決の可決は不透明です。

英国下院:EU離脱協定案を巡り、3回目の採決の実施へ

英国政府は2019年3月28日、欧州連合(EU)からの離脱案を29日の議会下院で採決することを表明しました。離脱案はこれまでに2回、否決されています(図表1参照)。英国下院のバーコウ議長は、離脱案を再度採決にかける場合は、すでに否決された案と比べて異なる内容でなくてはならないと否定的でしたが、3回目の採決を受け入れました。

 

[図表1]英国のEU離脱に関連する主なイベント 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]英国のEU離脱に関連する主なイベント
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

なお、3回目の採決では、離脱後の英国とEUの友好関係の維持をうたった「政治宣言」を切り離し、離脱条件を定めた離脱協定の本体を採決します。

どこに注目すべきか:離脱案採決、政治宣言、選択肢、離脱強硬派

実施そのものが危ぶまれていたメイ政権とEUの離脱協定案の3回目の採決実施が表明されました。メイ首相は可決されれば辞職する意向を表明しており、退陣を賭けて可決を迫る構えですが、現時点の報道では、閣外協力の関係にある民主統一党(DUP)が反対を表明するなど、採決の可決は不透明です。以下では最初に今後の流れを振り返ります。

 

 

今回の採決でEUと合意した離脱案が可決されれば、離脱期限を5月22日(欧州議会選挙前日、図表1参照)として、必要な手続きを期限までに進める展開となります。

 

否決された場合は、4月12日を期限に設定し、英国は今後の方針を示す必要があり、EU側が受け入れれば(恐らく)、1年程度の長期の離脱期限延期となることが見込まれる一方、方針が定まらなければ、最悪の場合、合意なき離脱となる可能性もあると見られます。

 

次に採決の見通しですが、不透明と思われます。3回目の採決を実施するために政治宣言を切り離すという離れ業を繰り出しましたが、裏を返せば協定部分に目に見える変更をすることができなかったからで、実質的に同じ内容で採決が可決するのか疑問です。DUPや野党(労働党)は反対を表明していることから今回も可決が危ぶまれています。

 

ただ、過去の採決で反対の立場であった離脱強硬派の中には、他の選択肢に比べ消去法的にメイ首相の協定案に理解を示す動きも一部に見られるため、賛成と反対の差が縮まる動きは想定されますが、可決までは微妙です。

 

なお、採決の機会は議会にも与えられ、EU離脱を巡って再国民投票や関税同盟への残留など8つの選択の採決が実施されましたが、全て反対となりました。議会が自由な選択肢を与えられても、一つにまとまる案が無いことが露呈しました。8つの代替案は否定されましたが、最も賛否が拮抗していたのが関税同盟への残留でした。仮に29日の3回目の採決が否決され、来月12日までに新たな方針を示す場合に参照される可能性は考えられます。ただし、関税同盟への残留はEUから見るといいとこ取りと批判される懸念はあります。同様に賛否が拮抗していたのは再国民投票ですが、この場合長期の離脱期限延期が必要と見られます。

 

協定案を巡り、採決などで反対、反対が続いていますが、英国のEU離脱プロセスがここまで混迷する背景が露呈している面も見られます。EUとは合意できても英国国内で受け入れに手間取っている離脱協定案に固執するメイ首相、ひとつにまとまる選択肢を示すことが出来ない議会は共に問題がありそうです。さらに、EUと将来を歩むことに反対する離脱強硬派ですが、離脱した後の英国の成長モデルを描ききれていないことが事態を複雑にしている印象です。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『反対に次ぐ反対…英国のEU離脱プロセス、混迷の背景』を参照)。

 

(2019年3月29日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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