ハワイの土地は高く、償却額が少ないといわれるが…
◆アメリカの物件の減価償却
これはご存知の方も多いと思いますが、日本では、木造築22年以上の物件の建物の価値を4年で償却することができます。日本の場合、築22年以上の木造建造物の価値はほとんどありません。しかし、アメリカでは償却可能な建物分の価値が日本に比べて非常に高いのです。日本人の新築好み、湿気、耐震などの理由が考えられると思いますが、どうせ価値がなくなるのであれば、保守をするのがもったいないというのも、価値の低下に拍車をかけていると思われます。
この4年償却は、アメリカの物件を買っても適用可能です。例えばハワイで、100万ドル・築22年以上の木造物件を購入したとしましょう。取得原価の土地分は償却できませんので、建物の分がいくらあるかを決めなければなりません。これは、通常、固定資産税の土地分と建物分の査定額の割合に沿って計算します。例えば、この100万ドルで買った物件の査定額が80万ドルで、建物が20万ドル、土地が60万ドルだとしましょう。ということは、建物は査定額全体の25%ということになります。100万ドルの25%は25万ドルですので、この物件は25万ドル償却できることになります。
これは新築の場合だろうと思うかもしれませんが、そんなことはありません。ちなみに、償却期間は日本のように複雑ではなく、居住系は27.5年、それ以外は39年ですが、これは日本での納税には関係ありません。日本での納税は、上記の例ですと、25万ドルを4年で償却するわけですので、毎年6万2,500ドル控除できるという計算になります。
◆土地が高いハワイの奥の手
ハワイでこれをしようとする場合、他の州よりも効果がないとよく思われているようです。なぜなら、土地が高いので、購入価格全体の中で償却可能な額が比較的少ないからです。テキサスのような土地のだだっ広い州だと、土地が25%で建物が75%などという例は珍しくないでしょう。
ところが、ハワイには、他の州ではあまり見られない奥の手があるのです。それは、借地の上に建てた木造のタウンハウスやコンド(分譲マンション)です。借地ですので、購入価格の100%が建物の価値ということになり、全額償却できるのです。
「残余期間」の少ない物件は、価値が下がるため要注意
◆借地に建てられたタウンハウスやコンド
それでは、借地のタウンハウスやコンドについて少し説明しましょう。ハワイは大地主が多く、タウンハウスやコンドなどが建てられ始めた1970年代は、その多くが借地の上に建てられました。あらかじめ決められた年に賃料が上がっていき、リース期間が終わると建物は地主のものになります。長期の借地でしたので、当初はあまり心配していなかったのですが、土地の賃料がどのように上がるかは明確ではなく、区分所有者は、だんだんと不安になってきたのです。
彼らを救済するために、地主は敷地を売らなければならないという法律ができ、多くの人は購入しましたが、全てがそうなったわけではありません。今でも借地の売り買いはされていますし、土地の所有権がない物件はまだ残っています。一つのマンションやタウンハウスの中に、土地付きのユニットもあれば、そうでないものもあるという状況なのです。当然、残余期間の少ない物件は価値が下がりますし、ローンをもらうことが難しくなります。
◆節税目的の投資は今がチャンス
というわけですので、借地の区分所有物件を買う場合は、残余期間が比較的長いもの、そしてできれば、向こう4年間、土地の賃料の引き上げがないものを選ばれるとよいでしょう。長い間持っていると価値が下がってきますので、4年で償却してしまったら、すぐに売った方がよいかもしれません。もちろん、売ったときには簿価がゼロになっていますので、いくらで売れたにしろ、全売却額に対して納税しなければなりませんが、高額所得者の場合、税率が所得税率より低いので、節税になります。
あるいは、キャッシュフローがよければ、リースが切れるまで所有し続けて、地主に返すときには無税にすることも可能ですが、その間、土地のリース賃料がどれだけ上がるか分からないというリスクがあります。また、共益費も物件が古くなるにつれて上がるでしょう。
この節税策は、もうすぐ法律が改正されてなくなるだろうと言われています。節税が必要な方は、今がチャンスです。
大野 純司
Urban Real Estate Consulting Corporation Hawaii CEO
COLDWELL BANKER PACIFIC PROPERTIES