前回は、子や孫への資産の移転が「名義預金」とならないよう、家族信託を活用する方法をお伝えしました。今回は生命保険の管理を委託する「生命保険信託」のメリットについてお伝えします。 ※本連載は、2015年10月に刊行された税理士・鈴木和宏氏の著書、『検討してみよう! 家族信託の基礎知識』(ファーストプレス)の中から一部を抜粋し、スムーズな不動産移転や、残された家族の生活を守る方法についてやさしく解説します。

受託者から受益者への支払い方法を細かく設定できる

夫:今度、長男に死亡保険金が入る生命保険に加入をしたいけど、何かいい保険はないかな?

妻:いろんな種類があるから、迷うね。

夫:一時に生命保険金が入ると無駄遣いして人を狂わせないようにして欲しいな。

妻:そうね。浪費されると困るね。

夫:たとえば、1000万円の死亡保険に入ったとすると、毎年100万円ずつ分割で支払われるとか・・・。

妻:あるかもしれないね。

夫:信託でできるかも?

妻:そうね・・・。

 

生命保険信託の活用の検討もひとつです。生命保険信託とは、生命保険の契約者が信託銀行などに生命保険金の管理を委託し、保険事故が発生すると、契約者の指示通りに保険金を渡したい人が受け取ることができる仕組みです(図表)。

 

[図表]生命保険信託の仕組み

 

保険契約者が信託銀行や同族会社に死亡保険金請求権を信託すると、死亡保険金は受託者である信託銀行や同族会社に支払われます。委託者である保険契約者は、受託者から受益者への保険金の支払い方法を「Aさんに毎年100万円支払う」といった具合に細かく設定し、信託会社や同族会社はその内容にしたがって保険金を分配していきます。

信託すれば保険金の支払いもコントロールできる

親が生前に心配することのひとつに、「相続人である家族が財産を浪費してしまわないだろうか」ということがあります。特に、浪費癖のある家族が「現金で」「一括して」相続するような場合はなおさらではないでしょうか。

 

このような場合、生命保険信託を活用し、たとえば「死亡保険金は子どもに支払うが、そのためには妻の了解が必要」ということを信託契約の中で設定しておけば、本当に必要な分だけ子に保険金を支払うことが可能です。

 

なお、この生命保険信託は、一部の生命保険会社が信託銀行と提携して販売しています。しかしながら、必ずしもそれらの商品を利用しなければならない訳ではありません。個人が死亡保険金請求権を信託することも法律上は問題ありません。

 

しかし、生命保険加入の方法によっては悪用される可能性があるという倫理的な理由から、保険会社側で制限がかかることも考えられます。

検討してみよう!  家族信託の基礎知識

検討してみよう! 家族信託の基礎知識

鈴木 和宏

ファーストプレス

家族信託とは、信頼できる家族・親族や知人などが財産の預かり手(財産管理をする者)となり、「高齢者や障がい者のための安心円滑な財産管理」や「柔軟かつ円滑な資産承継対策」を実現しようとする民事信託の形態です。家族の…

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