税務調査の対象となるのは全体の約0.3%だが…
ここで少し目先を変えて、税務調査についてお伝えしておきましょう。
税務調査で調査官がどこに目をつけるかを知ることは、節税の第一歩といえます。
まず、税務調査の対象となるのは全体の約0.3%です。つまり300件に1件。決して多くないことがわかります。さらに所得の高い人を中心に選定しますから、税額が少ない納税者がその対象となる確率はかなり低いと言えましょう。
実際の税務調査においては、青色申告であれば総勘定元帳とそれを記載するための通帳や請求書、領収書などの記帳のもととなった資料を付け合わせ、申告に誤りがないかを確認します。事前に総勘定元帳、預金通帳、請求書、領収書などを用意しておくと良いでしょう。
税務署が最も嫌うのが売上の脱漏です。
現金売上をわざと集計しない、あるいは、いつも使っている通帳とは別の通帳に売上金を振り込んでもらい売上としない、などです。
売上の脱漏は言い逃れができませんので、交渉の余地がありません。
仮に売上の脱漏があった場合には、それが故意に隠したり、操作したりしたものであれば「重加算税」という重い罰金が課されます。重加算税は調査により増えた税額の35%になります。
しかし、売上の脱漏などは肝のすわった人のやることで、常識のある一般人はやりません。ですから実際に調査で見つかる割合も全調査の10%以下となっています。
一方で、グレーゾーンの経費が税務調査で認められない場合もあります。この場合、故意に隠したり、認められない経費を認められるように操作したりしたものでなければ、新聞等でたまに見かける「税務署との見解の相違」ということになり、増えた税額の5%がペナルティとして課されるだけとなります。
税務調査ではこちらを中心に調べることになります。具体的には、プライベート支出が経費計上されていないか?と、今年の売上とすべき収入が来年分になっていないか?を中心に調べます。こちらは税務調査で見つかる非違事項のうち75%を占めます。
つまり、節税は売上を隠したりすることで行うのでなく、グレーゾーンの経費について「いかに売上を得るのに必要であったか、事業に関係があったか」という根拠を示すことができるかがポイントになります。
また、税務調査は税法をもっとわかりやすくした「通達」を根拠に行われます。この通達は、税法と過去に裁判等で示されたその解釈をもとに作られています。
ですから、税務の処理に迷ったら「調べたい経費内容+所得税+通達」あるいは「調べたい経費内容+所得税+判例」というキーワードでネット検索してみてください。参考になる処理例を導き出すことができるでしょう。
逆に検索に引っかかってこない事柄には、税務上の取り扱いが決まっていない可能性もあるので、税理士等に相談しながら慎重に進めたほうが良いかもしれません。
最後に税務調査を受けるときのコツをひとつだけお伝えしておきます。それは、知らない、わからないことを「あいまいに応えたくないので、調べて後ほど回答します」としっかり応えることです。
税務調査では一言一句が駆け引きになっています。不用意に応えたことが原因で不利になることもありますので、わからないことを適当に応えたり、その場を取りつくろって、ごまかしたりしないことが大切です。
<ポイント>
経費かわからなかったら、「調べたい経費内容+所得税+通達」で検索を!
カフェで仕事をした場合にはOK、休憩の場合はNG
どんな旅行や食事が経費になるのか紹介しましょう。
基本的に事業主自身の慰労に関する「福利厚生費」はプライベートとみなされ、経費にはなりません。
カフェで仕事をした場合にはOKですが、休憩の場合はNGです。また、自分や家族が行った食事、旅行、マッサージ、スポーツクラブ、人間ドック、エステ、ネイルケアなどはすべて必要経費にはならないと考えましょう(従業員の福利厚生の場合は別です)。
否認されたもののなかには、家族とのハワイ旅行もあったといいます。どのような内容かはわかりませんが、さすがに家族旅行は経費にはならないと言えます。
ただし、すべての食事や旅行が経費にならないわけではありません。事業に関係するものであれば、経費として認められる可能性があります。
たとえば、外食コンサルタントがレポートを書くための食べ歩きや、建築事務所を経営する建築士同士が行ったヨーロッパ旅行は、どのようなことを調査、あるいは学んだかを記録することで「仕事上必要な行為」であるとして経費に認められます。
ここでも経費の大原則「売上を増やすために必要な出費」であるかどうかが基準です。
キーワードは「必要性」と「必然性」です。
大切なのは「これはプライベートでは?」と聞かれたときに「この仕事の目的を達成するため、これをすることが必要かつ必然である」と説明できることです。
そのためには、現地で打ち合わせを入れる、食事をした際は誰と行ったか、現地を訪れてどのようなことを得たかといったことをしっかり記録しておくことが大切です。
行った後の食事や旅行を経費に「後付け」するのは困難ですから、仕事として行くことを大前提に考える必要があります。
また、慰労や観光のつもりで行った食事や旅行と、ビジネスで行く食事や旅行では行先も変わるかもしれません。経費にできる余地があったとしても、明らかに家族の晩ご飯であったり、観光旅館などに宿泊している場合などを、なんでも経費にすると否認されるので、フラットな目で見て仕事であると認められる程度にしておくことも大切です。
そして、食事や旅行に行った先で得たものにこのようなものがあったと報告できる「成果」があればきちんと記録しておきます。成果が出ていれば、そのために要した費用は当然認められるからです。
<ポイント>
仕事で旅行した記録をしっかりつけておくことが大切!