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トルコ中銀の今回の声明(プレスリリース)は、前回(18年12月)とほぼ同じ内容でした。目立った違いは黒字に転じた経常収支の改善に言及している点です。トルコ経済の改善点を強調することで、インフレ率抑制に効果を表し始めた現状の金融政策の正当化に努めた印象です。ただ、トルコ経済の成長率の急速な悪化など気がかりな点も見られます。

トルコ金融政策決定会合:市場予想通り政策金利を据え置き

トルコ中央銀行は2019年1月16日、市場予想通り政策金利を24%で据え置くと発表しました(図表1参照)。チェティンカヤ総裁率いるトルコ中央銀行は18年9月に引き上げ幅で6.25%の大幅な利上げを実施した後、3会合連続で政策金利を据え置いています。

 

[図表1]トルコの政策金利とリラ(対ドル)の推移

日次、期間:2017年1月16日~2019年1月16日
日次、期間:2017年1月16日~2019年1月16日

 

なお、トルコのインフレ率は2ヵ月連続で低下し、昨年12月は前年同月比で20.3%(図表2参照)となっています。

 

[図表2]トルコの消費者物価指数と経常収支の推移

月次、期間:2013年12月~ 2018年12月、経常収支は11月迄 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、期間:2013年12月~ 2018年12月、経常収支は11月迄
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:経常収支、インフレ率、地政学リスク

トルコ中銀の今回の声明(プレスリリース)は、前回(18年12月)とほぼ同じ内容でした。目立った違いは黒字に転じた経常収支の改善に言及している点です。トルコ経済の改善点を強調することで、インフレ率抑制に効果を表し始めた現状の金融政策の正当化に努めた印象です。ただ、トルコ経済の成長率の急速な悪化など気がかりな点も見られます。

 

昨年9月の大幅利上げの頃からトルコ経済で改善が確認される経済指標の1つは、トルコ中銀も指摘する経常収支です。足元黒字に転じています。もっとも、通貨リラ安が経常収支回復のひとつの要因であるとすると、今後は改善のペースは鈍る可能性もあります。しかし、18年前半のように新興国通貨が軟弱な局面では、経常赤字が大きい国の通貨の売り圧力が高まった局面も見られただけに、経常収支の改善はリラの安定化に寄与する可能性も想定されます。

 

トルコのインフレ率である消費者物価指数(CPI)も、リラが上昇に転じたことで、低下傾向となっています(図表2参照)。

 

今後のインフレ動向については、月末に公表予定のトルコ中銀のインフレ・レポートで確認する必要はありますが、リラ回復に伴う輸入物価の低下をトルコ中銀は指摘しています。


もっとも、トルコ中銀のインフレ目標は5%で、足元のインフレ率は約4倍の水準であるため、実質金利がプラスとなっている現状の政策金利を維持するものと見ています。

 

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ただし、政策金利の据え置き維持を危うくする要因にも注意は必要です。

 

例えば、最近は発言を控えているようですが、政治の金融政策への介入は依然懸念されます。19年3月前半に公表予定の18年10-12月期GDP(国内総生産)成長率が前年同期比が仮にマイナスとなった場合の政治の対応に注目しています。

 

同じ3月には統一地方選が予定されるなか、昨年末にトルコは最低賃金を26%引き上げています。選挙に向け、支持拡大を狙ったさらなる政策が財政不安や通貨安などの変動を伴い、金融政策の安定性や予見可能性に悪影響を与えることも懸念されます。

 

 

トルコの地政学リスクも不安材料です。米軍がシリアから撤退を表明しましたが、シリアで過激派組織との戦いに協力してきたクルド人勢力の安全確保を米国は求めています。

 

一方、トルコはクルド勢力をテロ組織とみなし、攻撃の構えとの報道もあります。ただ、トルコ観光への影響は限定的であるなど、平穏は保たれているようです。

 

トルコについては警戒的ながら前向きな姿勢です。
 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコ中銀、金融政策の正当化で据え置き 』を参照)。

 

(2019年1月17日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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