前回は、時に高額な相続税が必要となる「借地権」の問題を取り上げました。今回は、父から相続した広い駐車場に課される相続税問題の事例について見ていきます。

300坪の駐車場に約2000万円もの相続税が・・・

前回に引き続き、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースを見ていきます。

 

【ケース3】Eさん・50歳
湘南にお住まいのEさんからの相談案件です。相談される1カ月前に父親を亡くして相続が発生。財産として実家、現預金、ゴルフ会員権、駐車場などの財産を相続することになりましたが、相続人が母と一人息子ということもあって、遺産分割で特に揉める要素はありませんでした。母が実家と現預金をいくらか相続し、それ以外はすべて息子のものということで話はまとまっていたのです。

 

ただし一つだけ問題が残っていて、それが1000㎡(300坪)でした。息子が相続することにはなっていますが、それにもなる広い駐車場に課される相続税だけが心配の種だったようです。

 

もともとEさんの父親は、その土地をマンションとその駐車場として所有していました。ところが、マンションの入居者が集まりにくくなってきたこともあり、相続対策としてマンションを解体して、売却しやすい駐車場にしたことで300坪の面積まで広がったそうです。

 

駐車場がある土地の路線価は14万円だったので、概算でも約1億4000万円もの評価額です。Eさんは駐車場経営をそのまま引き継ぐつもりだったので、貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例が利用できたのですが、貸付事業用宅地は200㎡が適用上限の面積です。1000㎡(300坪)のうちの200㎡では約5分の1にすぎません。残りには適用できないので、やはり相続税は約2000万円です。

税理士は「広大地評価の特例」に該当しないと判断

そこで、父親が相続対策等でお世話になっていた顧問税理士に頼んで、どうにか節税できないかという相談をしました。しかし顧問税理士からは渋い答えが返ってきます。「2000万円の相続税が課されても何とか支払えないことはないのだし、それは適切な課税だから諦めた方がいい」とのことだったのです。

 

諦めきれないEさんは、自分でネットや書籍を使って情報を集めます。そのうちに広大地評価という特例を見つけますが、それが適用できれば土地全体の評価額が、更地の半分程度まで下がる可能性があることに気がつきます。もしかしたら自分の場合にも適用できるのではないかと思い、顧問税理士に改めて相談すると、「検討してみる」、の一言。1週間後にようやくまた連絡がきましたが、今回の駐車場では広大地の適用条件に該当しないので難しいのは変わらないという判断でした。

 

また「申請するのはいいが、税務署に否認されると追徴課税などが課せられるリスクもあるので、そのような危険をあえて背負わず、無事に穏便に納税をした方が後々苦労せずに済む」ということを言われます。

 

Eさんはそれを聞いてがっかりしましたが、広大地に対しての返答が遅かったことで、もしかしたらこの顧問税理士は相続に詳しくないのではないかと疑います。セカンドオピニオンとして、もっと相続に詳しい専門家に意見を求めることにして、我々に相談いただくこととなりました。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

株式会社財産ドック

幻冬舎メディアコンサルティング

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