調和平均
「調和平均」は、対象となるデータの逆数の算術平均の逆数で算出でき、一定額を積み立て投資する「ドルコスト平均法」の積み立て投資効果を生み出すものを表しています。毎月一定額を投資する場合の平均買付単価は調和平均となります。また、算術平均や幾何平均とは、算術平均≧幾何平均≧調和平均という関係が成り立ちます。
調和平均とは
調和平均はどういう時に使うのでしょうか。例えば40km離れた町まで、行きは時速40kmで1時間かけて行き、帰りは時速20kmで2時間かけて帰ってきた場合、往復の平均時速は何kmでしょうか。算術平均で考えると、30km 〔(40+20)÷2〕となってしまいますが、答えは30kmではありません。平均時速30kmで3時間走ると90km進んでしまいます。この時の平均時速こそが調和平均で、計算方法は以下の通りです。
2÷(1/40+1/20) =26.67km
時速26.67km×3時間=距離約80kmで平均時速26.67kmが正しい答えとなります。
金額指定の積み立て投資効果
実は、この調和平均こそが一定額を積み立て投資する場合の「ドルコスト平均法」の積立投資効果を生み出すのです。毎月一定額を投資する場合の平均買付単価は調和平均で算出することが出来ます。具体的に考えてみましょう。
毎月10,000円ずつ積み立て投資:
1万口当たりの基準価額が当月10,000円、翌月5,000円、となった投資信託に10,000円ずつ積み立て投資すると、平均買付単価は算術平均の7,500円にはなりません。基準価額10,000円の時10,000円で1万口買い、基準価額5,000円の時10,000円で2万口を買い、合計投資額20,000円で3万口を保有することになります。すると1万口あたりの平均買付単価は、以下の通りです。
20,000円÷3万口×10,000=6,667円
これは10,000円と5,000円の調和平均と一致します。
2÷(1/10,000円+1/5,000円)=6,667円
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[図表1]中長期的に見た基準価額と平均買付単価の推移
口数指定の積み立て投資効果
毎月1万口ずつ積み立て投資:
投資信託を毎月1万口ずつ買い付けていくと、平均買付単価は1万口当たりの基準価額の算術平均となります。先ほどの例のように、1万口当たりの基準価額が当月10,000円、翌月5,000円、となった投資信託に1万口ずつ積み立て投資すると、1万口あたりの平均買付単価は以下の通りです。
(10,000円+5,000円)÷2=7,500円
先ほど見たように、毎月10,000円ずつ買い付けていくと、平均買付単価は1万口当たりの基準価額の調和平均となります。調和平均は算術平均よりも小さくなる性質を持ち、一定額の積み立て投資をすることで、保有分の平均買付単価は算術平均価格よりも安くなるので、この点では積み立て投資効果が期待できるといえます。
[図表2]口数指定・金額指定で購入した場合の平均買付単価
基準価額は、10,000円でスタート後、5年で2,000円まで下落して、その後5年で10,000円まで回復しました。毎月1万口ずつ購入する口数指定の場合(灰色の折れ線グラフ)、2007年末の5,341円まで平均買付単価が下落し、このあと損益がプラスとなります。一方、毎月10,000円ずつ購入する金額指定の場合(青の折れ線グラフ)、平均買付単価は4,351円まで下落し、基準価額が4,400円になる2007年6月に損益がプラスに転じます。
中長期的に積み立て投資をする場合の効果を検証すると、
①口数指定:買付単価が算術平均(5,341円まで下落)
②金額指定:買付単価が調和平均(4,351円まで下落)
算術平均≧幾何平均≧調和平均の関係が成り立ちますが、調和平均の金額指定の方が算術平均の口数指定よりも買付単価が安くなります。このように、口数指定よりも金額指定の方が、より大きな積み立て投資の効果を得ることができます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 役に立つ平均編(3)<調和平均> 』を参照)。
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(2018年3月1日)