実践的基礎知識 役に立つ平均編(2)<算術平均と幾何平均>

ピクテ投信投資顧問株式会社
実践的基礎知識 役に立つ平均編(2)<算術平均と幾何平均>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

算術平均と幾何平均

算術平均と幾何平均は、それぞれに特徴があってどちらが優れているということではなく、大切なことは両者の特徴を知り、意味するところを知ることです。算術平均とは一般的によく使われている平均で、対象となる全データを合計してデータの個数で割ることで求められます。また、幾何平均とは累積結果に至るまで平均してどのくらいのペースで変化していったのかを表すもので、平均収益率や平均成長率などを考える上で役に立ちます。

幾何平均

前回のレポートで、「幾何平均(相乗平均)」は平均収益率や平均成長率、平均変化率を考える上で役に立つと紹介させていただきましたが、一般的な算術平均(相加平均)とどう違うのでしょうか。

 

たとえば、図表1のような値動きをした資産A、B、Cがあったとします。各資産の各年の収益率を計算すると図表2のようになります(それぞれ図表1、2参照)。

 

資産Aの収益率の算術平均は

 

(15.0%+5.2%-9.9%-5.5%+10.7%)÷5=3.1%

 

と3.1%になります。もし、この算術平均の3.1%で5年間複利運用をすると

 

100×(1+0.03)5=116となり、100は116まで増えることになります。この116は2015年末の114という値と一致しません(図表2参照)。

 

一方、資産Aの収益率の幾何平均は

 

5√{(1+15%)×(1+5.2%)×(1-9.9%)×(1-5.5%)×(1+10.7%)}-1=2.6%

 

と2.6%になります。この幾何平均の2.6%で5年間複利運用をすると

 

100×(1+0.026)5=114となり、2015年末の114と一致します。

 

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実は、これはごく当たり前のことで、算術平均というのは相加平均という言葉が示すように、各数字を加算、つまり足して計算するため、算術平均を5回足し合わせれば各収益率の合計に一致しますが、複利計算をしても累積結果にはなりません。幾何平均は相乗平均という言葉が示すように各数字を乗算、つまり掛けて計算するため、足しても各収益率の合計にはなりませんが、複利計算すれば累積結果と一致します。

 

このように、各年の平均収益率や平均成長率、平均変化率のような、「それまでの結果から何%変化したか」を集計したものを使って、累積結果に至るまでに平均してどのくらいのペースで変化していったのかを考えるうえで、幾何平均は役立ちます。

変化率の平均を考えるうえでの算術平均と幾何平均

「それまでの結果から何%変化したか」を示す変化率を使って、累積結果に至るまでに平均してどのくらいのペースで変化していったのかを考える上で、幾何平均は役立つとご説明しました。ではそうした場面で、一般的に使われる平均の算術平均は役に立たないのでしょうか。

 

下記の図表3のような値動きをした資産があったとします。各年末の価格と各年の収益率はグラフ下の表にまとめた通りです。

 

この期間中の収益率の算術平均と幾何平均は、それぞれ

 

算術平均:(60.0%-25.0%+100.0%-37.5%-33.3%-90.0%+700.0%-25.0%+116.7%-23.1%+30.0%)÷11=70.3%幾何平均:11√{(1+60.0%)×(1-25.0%)×(1+100.0%)×(1-37.5%)×(1-33.3%)×(1-90.0%)×(1+700.0%)×(1-25.0%)×(1+116.7%)×(1-23.1%)×(1-30.0%)}-1=2.4%

 

と計算され、算術平均は70.3%、幾何平均は2.4%です。

 

幾何平均が示すのは、累積結果に至るまで平均してどのくらいのペースで変化していったのか、ということで、この資産の値動きであれば、スタートの2004年末の10,000からゴールの2015年末の13,000まで毎年、前の年までの累積結果から2.4%ずつ増えるペースで増えたことを示します。

 

 

これは、青い大きな三角で示した部分をならしたようなもので、最終的な累積結果が重要で、最後の部分の影響が大きく出ます。例えば、ゴールの2015年末が9,900になれば、それまでの経過は同じでも、青の三角が上下反転し、幾何平均はマイナスとなります。

 

一方で、各年のリターンは赤(プラスのリターン)と緑(マイナスのリターン)の三角で示したものです。各年のリターンが前年末の数値に対してどのくらい大きいかを表したのが各年の収益率ということになります。

 

算術平均はこの各年の収益率をならした数値ということで、大きな数字の影響を強く受けるという性格を持ちます。この場合2011年の700%という数値が算術平均を大きくしています。この70.3%というペースで、今後も毎年増えていくということは考えにくい数字ですが、幾何平均のように最後の部分だけが変わることで数値が大きく変化することはあまりありません。

 

このように算術平均と幾何平均はそれぞれに特徴があってどちらが優れているということはなく、大切なことは両者の特徴を知り、意味するところを知ることです。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 役に立つ平均編(2)<算術平均と幾何平均>』を参照)。

 

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(2018年2月19日)

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