後ろめたいことがなくても、あまり歓迎したくない税務調査。国税庁の統計によると、相続税の実地調査が入る割合はおよそ5件に1件、そのうちの8割以上で何らかの申告もれが指摘されています(平成28事務年度の数値による)。本記事では、税務調査の対象になりやすい人の特徴や、実地調査の実際の流れなどについて見ていきます。税務調査についての理解を深め、事前の備えを進めておきましょう。

税務調査の対象になりやすい人の特徴とは?

税務調査とは、税金の申告後に国税局や税務署などが資産状況や収入状況等を確認し、申告内容に誤りがあれば是正を求める手続きをいいます。相続税の税務調査で何を調べられるのかを知り、今から備えておきましょう。

 

◆税務調査に入られやすいのは?

 

相続税の税務調査というと、突然乗り込んできてタンスや引き出しを開けられるイメージがあるかもしれませんが、実際はそのような強制調査はまれで、多くは事前通知のうえ行われる任意調査です。通常は数週間前に連絡があり、相続人代表と税理士が立ち会います。

 

この実地調査以前に、税務署は市町村・金融機関からの情報や国税総合管理(KSK)システムなどを照合して調査先を選定しています。それらのデータから導き出した相続財産と、納税者が申告した相続財産との間に差異があった場合などに、実地調査が行われることになります。

 

一般的には、下記に当てはまる場合に調査が行われることが多いようです。

 

●税理士に依頼せず、自分で相続税申告をした

●親族名義の預貯金や有価証券等が多い

●生前に多額の預貯金が引き出されている

●使用目的のわからない出金が多い

●生前の職業や収入に対して相続財産が少ない

●借入金が多いのに相続財産が少ない

●生前に多額の不動産所得の申告があったのに、土地や建物の申告が少ない

●国外に財産がある 等

 

 

◆名義預金に要注意

 

実地調査は世間話から始まり、故人の経歴や職歴、趣味、生前の病状、認知症の有無などのほか、相続人の職業や収入状況も質問されます。こうした質問には、金融資産の計上もれがないか、不自然な入出金がないか、相続財産となるべきものが親族名義(名義預金)になっていないかといったことを調べる目的があります。

 

午前はヒアリング、昼食を挟んで午後は印鑑や通帳等の管理状況を調べる流れが一般的です。調査官は被相続人の筆跡、印鑑に最近使われた形跡がないか、家の中に取引先銀行の名入りタオルやカレンダーがないか等、あらゆるものに目を光らせています。

 

税務調査で申告もれを指摘されることが特に多いのが名義預金です。名義人が親族であっても、実質的には故人が所有者とみられる預金は名義預金と呼ばれ、相続税の課税対象となります。

 

「これは故人から贈与されたもの」と家族が主張しても、税務署が贈与の成立を認めないケースもあります。贈与を否認されないためには、贈与契約書を交わす、贈与された人が通帳・銀行印・キャッシュカード等を管理する、銀行印は各人ごとに違うものにする、お金の移動の履歴を残すなど、生前の備えが必要です。

「書面添付制度」の利用で税務調査が省略に!?

◆調査に入られないためには

 

申告もれを指摘された場合、不足税額に加えて延滞税や過少申告加算税、場合によっては重加算税を納めなければなりません。申告もれの原因の多くは、短い申告期間内に財産を把握しきれなかったことによります。生前のうちに財産内容を把握しておけば、いざというときに慌てることがなくなります。

 

また何より重要なのは、税務署に疑問を抱かせないような、十分な根拠資料を備えた説得性の高い申告書を作ることです。税額計算の根拠を示した文書を申告書に添付する「書面添付制度」を利用するのもよいでしょう。これにより、無予告の調査でない限り、実地調査に先立って税理士に意見聴取が行われます。

 

 

◆納めすぎは指摘されないことも

 

相続税は、納税者が自ら税額を計算し申告する「申告納税制度」に基づく税金です。いうなれば国民主権を体現した税金のあり方で、それを担保する税務調査は大事な手続きです。

 

しかし、調査が入ったから適正な納税になるかというと、残念ながらそうとも限りません。税務署が調べるのは計上もれとなっている資産が主で、土地の評価額などが適正かどうかといったことはあまり調査されないのが実情です。つまり、足りない分は厳しく追究されても、税金が減額されるような指摘はあまりされない傾向があります。

 

筆者が取り扱った事例を紹介します。相続税は、申告期限後5年以内であれば「更正の請求」という手続きにより、納めすぎた相続税の是正を求めることができます。この事例は、相続税が適正な額だったかどうか調べてほしいとAさんから依頼を受けたときのことです。

 

Aさんはすでに税務調査を受けており、当時の調査の様子をお聞きする機会がありました。調査官はAさんの自宅上空にある「高圧線」を見上げながら、敷地に入ってきたそうです。しかし、調査では不動産の評価内容には触れられず、預金関係に集中して質問があったとのことです。結果、一部申告もれが指摘され、約300万円を追加納税しました。

 

そのあとに、筆者たちにチェックを依頼されたわけですが、不動産の評価内容を見てみると、高圧線下の土地に考慮されるべき評価額の減額がされていませんでした。この土地評価を改めると、その分、相続税が下がります。更正の請求を行った結果、約400万円の相続税が還付されました。このように税務調査が入ったあとに、還付が生じた例は多数あります。計上もれだけでなく、財産の評価額を高く見積もりすぎてしまうことにも注意が必要です。

 

 

髙原 誠

フジ総合グループ/フジ相続税理士法人 代表社員
税理士

 

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