ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

OPEC総会に対する報道各社の表現に微妙な違いが見られます。総会後の定例会見が行われなかった点を指摘し、総会は物別れにという表現から、非OPECとの会談まで持ち越しと幅広い解釈が見られます。原油市場は政治的思惑が作用する度合いが高く、解釈も様々なようですが、物別れというより、非OPECの主導的立場のロシアの意向待ちがメインシナリオと見ています。

OPEC総会:減産に異論もあり、OPEC総会は減産合意は持ち越し

石油輸出国機構(OPEC)はウィーンで2018年12月6日に総会を終えました。サウジアラビアが提案する大規模な減産に異論もあり、減産への合意は持ち越しとなりました。

 

OPECは7日にOPEC非加盟国を交えた協議を予定しています。サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は2日間のOPEC加盟国内での協議を踏まえ、7日のロシアなどを交えた協議で合意が得られるとは確信していないと述べたことが報道されています。市場では原油価格が続落しました(図表1参照)。

 

[図表1]WTI原油先物価格の推移

日次、期間:2014年12月7日~ 2018年12月6日 ※WTI原油先物価格:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX) で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)価格 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2014年12月7日~ 2018年12月6日
※WTI原油先物価格:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)
 で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)価格
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか: OPEC総会、原油需要見通し、OPECプラス

OPEC総会に対する報道各社の表現に微妙な違いが見られます。総会後の定例会見が行われなかった点を指摘し、総会は「物別れ」から、非OPECとの会談まで「持ち越し」と幅広い解釈が見られます。原油市場は政治的思惑が作用する度合いが高く、解釈も様々なようですが、物別れというより、非OPECの主導的立場のロシアの意向待ちがメインシナリオと見られます。

 

まず、ここ数年の原油価格の動向を簡単に振り返ると、供給過剰や中国景気の減速懸念から15年末から16年年初の頃に原油価格は一時1バレル20ドル台に低下、底値圏を形成しました。16年後半頃から産油国の減産と景気回復を受け上昇傾向に転じました。

 

最近では、18年5月に米国がイランに対する経済制裁を表明したことで、原油供給が減るとの思惑から、上昇傾向が維持されました。しかし、10月月初、イランへの経済制裁による供給の減少は抜け道が多かったことから限定的との見方が市場で台頭したこと、トランプ大統領の原油価格上昇に対し引き下げを求める口先介入、世界的な景気減速への懸念や19年の原油需要見通しが下方修正されたことなどを背景に、足元まで原油価格は急低下しています。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

このような流れの中で注目された6日のOPEC総会、並びに非加盟主要産油国で構成するOPECプラスとの協議ですが、少なくとも減産の方向は示唆されると思われます。

 

 

まず、国際エネルギー機関(IEA)などが19年の原油需要見通しを下方修正しており(図表2参照)、供給を抑制しなければさらなる原油価格の下落が想定されることです。国際機関による世界経済見通しも下方修正が散見されます。

 

[図表2]IEAの世界石油需要見通しの推移

時点:2018年9月(左)、11月(右) 、予想は18年と19年 出所:国際エネルギー機関(IEA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
時点:2018年9月(左)、11月(右) 、予想は18年と19年
出所:国際エネルギー機関(IEA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

政治、特に米国の圧力ですが若干弱まることも想定されます。原油価格上昇はガソリン価格高騰に直結するため、トランプ政権はガソリン価格に配慮して口先介入したと見られますが、既にガソリン価格は年初の水準を下回るなど無理に抑える必要性は低下したとも見られます。また、原油安にはドル高を伴う傾向もあり、米国の景気への影響を考えると、現在でも割高と見られるドルをさらに押し上げる政策は米国としても得策で無いと思われます。

 

したがって、ロシアを含めた協議では減産水準が検討事項と見られます。減産を合計した協調減産幅が日量100~110万バレル程度で協議を終えることが出来れば、原油市場に落ち着きが戻る可能性も考えられます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『OPEC総会と今後の見所』を参照)。

 

(2018年12月7日)

 

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧