OPEC総会に対する報道各社の表現に微妙な違いが見られます。総会後の定例会見が行われなかった点を指摘し、総会は物別れにという表現から、非OPECとの会談まで持ち越しと幅広い解釈が見られます。原油市場は政治的思惑が作用する度合いが高く、解釈も様々なようですが、物別れというより、非OPECの主導的立場のロシアの意向待ちがメインシナリオと見ています。
OPEC総会:減産に異論もあり、OPEC総会は減産合意は持ち越し
石油輸出国機構(OPEC)はウィーンで2018年12月6日に総会を終えました。サウジアラビアが提案する大規模な減産に異論もあり、減産への合意は持ち越しとなりました。
OPECは7日にOPEC非加盟国を交えた協議を予定しています。サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は2日間のOPEC加盟国内での協議を踏まえ、7日のロシアなどを交えた協議で合意が得られるとは確信していないと述べたことが報道されています。市場では原油価格が続落しました(図表1参照)。
[図表1]WTI原油先物価格の推移
どこに注目すべきか: OPEC総会、原油需要見通し、OPECプラス
OPEC総会に対する報道各社の表現に微妙な違いが見られます。総会後の定例会見が行われなかった点を指摘し、総会は「物別れ」から、非OPECとの会談まで「持ち越し」と幅広い解釈が見られます。原油市場は政治的思惑が作用する度合いが高く、解釈も様々なようですが、物別れというより、非OPECの主導的立場のロシアの意向待ちがメインシナリオと見られます。
まず、ここ数年の原油価格の動向を簡単に振り返ると、供給過剰や中国景気の減速懸念から15年末から16年年初の頃に原油価格は一時1バレル20ドル台に低下、底値圏を形成しました。16年後半頃から産油国の減産と景気回復を受け上昇傾向に転じました。
最近では、18年5月に米国がイランに対する経済制裁を表明したことで、原油供給が減るとの思惑から、上昇傾向が維持されました。しかし、10月月初、イランへの経済制裁による供給の減少は抜け道が多かったことから限定的との見方が市場で台頭したこと、トランプ大統領の原油価格上昇に対し引き下げを求める口先介入、世界的な景気減速への懸念や19年の原油需要見通しが下方修正されたことなどを背景に、足元まで原油価格は急低下しています。
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このような流れの中で注目された6日のOPEC総会、並びに非加盟主要産油国で構成するOPECプラスとの協議ですが、少なくとも減産の方向は示唆されると思われます。
まず、国際エネルギー機関(IEA)などが19年の原油需要見通しを下方修正しており(図表2参照)、供給を抑制しなければさらなる原油価格の下落が想定されることです。国際機関による世界経済見通しも下方修正が散見されます。
[図表2]IEAの世界石油需要見通しの推移
政治、特に米国の圧力ですが若干弱まることも想定されます。原油価格上昇はガソリン価格高騰に直結するため、トランプ政権はガソリン価格に配慮して口先介入したと見られますが、既にガソリン価格は年初の水準を下回るなど無理に抑える必要性は低下したとも見られます。また、原油安にはドル高を伴う傾向もあり、米国の景気への影響を考えると、現在でも割高と見られるドルをさらに押し上げる政策は米国としても得策で無いと思われます。
したがって、ロシアを含めた協議では減産水準が検討事項と見られます。減産を合計した協調減産幅が日量100~110万バレル程度で協議を終えることが出来れば、原油市場に落ち着きが戻る可能性も考えられます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『OPEC総会と今後の見所』を参照)。
(2018年12月7日)
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梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト