補助金を受けられるか否かは「事業計画」次第
銀行融資のほかに、成長期に活用できる助成金や補助金があります。
補助金 【革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金】
成長を目指す中小企業および小規模事業所への成長支援を行う制度です。
この補助金を受けるためには、3〜5年で「付加価値額」年率3%、「経常利益」年率1%の向上を達成できる事業計画が必要です。また、認定支援機関の全面バックアップを受けていなくてはなりません(認定支援機関の詳細は、書籍『9割の社長が勘違いしている資金調達の話』第6章を参照)。
補助金額は、IoTやAI、ロボットなどの設備投資を行った場合は最大で3000万円、その他は500〜1000万円です。対象は、機械装置や計測機器、ソフトウェア導入にかかる費用などです。
補助金を受けられるかどうかは、事業計画にかかっています。
会社の状態を正確に理解してくれている顧問税理士に相談をして、説得力ある事業計画づくりをしましょう。
助成金【トライアル雇用助成金】
職業経験、技能、知識の不足などにより安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークなどの紹介で最長3カ月間の試行期間として雇い入れた場合に給付される助成金です。対象者1人につき月額4万円(母子家庭や父子家庭の親は5万円)。
就職困難者の正規雇用の実現が目的で、事業主は試用期間中に適性や業務遂行能力などを見極めてから常用雇用へ移行できるため、採用のミスマッチを防ぐことができます。一見「就職困難者をお試しで3カ月間雇うだけ」のように見えますが、それほど単純なことではありません。
支給対象事業主の要件には、
●トライアル雇用労働者に係る雇用保険被保険者資格取得の届出を行った事業主
●トライアル雇用期間中に支払うべき賃金(時間外手当、休日手当等を含む)を支払った事業主
●労働基準法に規定する労働者名簿、賃金台帳等を整備・保管している事業主
という内容がずらりと並んでいます。そのため、自社が助成金を受けられる状態にあるかどうか、社労士などの専門家に尋ねてみる必要があります。
なぜ「社内向け」経営計画書作成が重要なのか?
成長期にある会社は、導入期よりもはるかに多額の資金を集められます。
ですが、これらの資金を有効活用するには、経営者と同じ目標を持ち、同じように行動できる社員を育成していく必要があります。
そのためには、次の2点が重要です。
①経営理念を全社で共有する
②理念の実現に向けて「行動計画」を立てる
①経営理念を全社で共有する
経営理念には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」などがあります。
「ミッション」は、社会における会社の基本的な役割や使命。
「ビジョン」は、5年後や10年後に達成すべき目標、会社が目指すべき方向性。
「バリュー」は、社内の共通の価値観であり行動指針や信条、クレドなど。
たとえばヤフージャパンは、下記の経営理念を掲げています(図表)。
[図表] 経営理念の共有が社員の行動につながる
会社によっては、経営理念をミッション・ビジョン・バリューに分けて設定していないケースもありますが、いずれにせよ「この会社が何を目指しているのか」という方向性と、その方向に向かうために「どのような行動を起こすべきか」という行動基準がしっかり浸透していることが大事です。
②理念の実現に向けて「行動計画」を立てる
融資を申し込む際、経営計画書の提出を求められることがあります。
事業計画書はどの企業でもつくっていますが、社内向けの経営計画書をしっかりと作成している経営者は、そう多くありません。
経営計画書は主に、企業が理想の姿になるために具体的に何をするべきか、社内で意思統一を図るために作成されます。
この経営計画を実現するために具体的な目標を定めたものが「行動計画」です。何を目指し、どう動いて、何を達成すべきかが詳細に記された、経営計画実現のためのロードマップのようなものと考えてください。
広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役