実現可能な「数字目標」と「行動目標」を設定
企業の行動計画に決まった書式はありませんが、次の3つを盛り込むといいでしょう。
①ビジョンと戦略
②マーケティング方針
③プロダクション方針
最初に①を定め、さらに具体化するために②と③を落とし込みます(図表1)。まず①では、「何を」「どこに」「どのように」「誰が」「どのくらい」行うのかを具体的に定めます。
[図表1] 「行動計画」を立てて具体化させる
たとえば、大まかな数字目標を設定し、ターゲットや方法などを具体化させます。
●何を→「新商品であるAを」
●どこに→「30代の女性中心に」
●どのように→「web広告を活用して」
●誰が→「販促チームが」
●どのくらい→「広告費200万円・目標売上5000万円以上・目標利益1000万円以上」
次に、①を実現するための「マーケティング方針」「プロダクション方針」の「戦略目標」を決定し、戦略目標を達成するための具体的な行動を「数字目標」「行動目標」として設定します。
たとえば、マーケティング方針の戦略目標は、「web広告の強化」「広告から自社サイトに来訪したユーザーのコンバージョン率アップ」、プロダクション方針の戦略目標は「輸送コストの削減」「品質の向上」などが考えられます。そこでこの戦略目標を達成するための「数字目標」「行動目標」を決めていきます。
行動計画を作成するうえで大事なことは、どの目標にも具体的な数字と行動を記し、誰が見ても「何を目指して、どう動くべきか」がわかること。目標をクリアしていけば、会社の経営理念が実現できると、社員全員が信念を持って取り組めることです。
そのためには「戦略目標」に対する「数字目標」や「行動目標」が妥当であり、かつ実現可能であることを証明しなければなりません。
経営者であれば、「この目標を掲げるなら、毎月達成すべき数字はこれくらい」という計算が頭のなかでできますが、社員がみんな社長と同じ感覚を持っているわけではありません。
また、融資審査では経営計画の数字は非常にシビアに判定されます。
なぜこの目標数値になったのかと問われて「これまでの実績から、だいたい・・・」などと答えてしまっては、根拠がはっきりしない数字を目標にしているとみなされ、マイナス評価になってしまいます。
そこで、経営計画や行動計画を作成したあと、もしくは作成段階で、税理士など経営計画策定支援を行っている専門家に依頼すれば、目標数値の信憑性がぐっと上がります。
融資担当者も、専門家が提示した根拠ある数字なら納得してくれます。
経営計画書や行動計画は、市場や経営状態の変化によってその都度修正するものです。その度に専門家のサポートを受けることができれば、経営者には見えていなかった経営上の課題や、会社発展のための情報を教えてもらえるでしょう。
経産省が提供する経営診断ツール「ロカベン」の活用
最後に、経済産業省が提供している会社の経営状態を客観的に診断するツール「ローカルベンチマーク(通称ロカベン)」についてご紹介します。
ロカベンは経営者、金融機関、商工会などの支援機関が企業の状態を把握し、同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みです。
①財務分析診断(図表2)
「財務分析入力シート」に、企業の財務情報に関するデータを打ち込むと、企業の経営状態を把握するうえで重要な6つの財務指標に関する数値が出ます。
●売上持続性(売上高増加率)
●収益性(営業利益率)
●生産性(労働生産性)
●健全性(EBITDA有利子負債倍率)
●効率性(営業運転資本回転期間)
●安全性(自己資本比率)
[図表2]財務分析診断の参考表
②非財務ヒアリングシート
企業の現状認識と将来目標、課題と対応策に関して、経営者が4つの視点から具体的に記載することで、企業、金融機関、支援機関が対話を深めるための情報を提供します。
●経営者(経営者のビジョン、経営意欲、後継者の有無など)
●事業(沿革、強み、ITに関する投資や活用の状況など)
●企業をとりまく環境・関係者:(市場動向、規模、顧客リピート率、従業員定着率、取引金融機関数など)
●内部管理体制:(組織体制、事業計画、研究開発、人材育成の取り組み状況など)
経営者が、自社の事業内容や現状、課題、成長の可能性などを、事業計画や面談を通して第三者に正確に伝えることは、容易ではありません。
しかし、ロカベンを使えば、財務に対する客観的なデータが自動的に表示されるので、経営者の思いや目標、現状などの情報が、整理された形でまとめることができます。また、社外との対話に限らず、社内における経営課題の検討や、経営者が会社の現況を知るための資料として利用するなど、幅広く活用できます。
広瀬 元義
株式会社アックスコンサルティング 代表取締役