企業の成長期には、社内での経営理念の共有、それに沿った行動計画の設定が重要である。本記事では会社の「行動計画」の具体的な作成方法を見ていく。 ※本連載では、株式会社アックスコンサルティング代表取締役・広瀬元義氏の著書『9割の社長が勘違いしている資金調達の話』(あさ出版)から一部を抜粋し、企業のライフサイクルに合わせた資金調達の方法について解説します。

実現可能な「数字目標」と「行動目標」を設定

企業の行動計画に決まった書式はありませんが、次の3つを盛り込むといいでしょう。

 

ビジョンと戦略

マーケティング方針

プロダクション方針

 

最初に①を定め、さらに具体化するために②と③を落とし込みます(図表1)。まず①では、「何を」「どこに」「どのように」「誰が」「どのくらい」行うのかを具体的に定めます。

 

[図表1] 「行動計画」を立てて具体化させる

 

たとえば、大まかな数字目標を設定し、ターゲットや方法などを具体化させます。

 

●何を→「新商品であるAを」

●どこに→「30代の女性中心に」

●どのように→「web広告を活用して」

●誰が→「販促チームが」

●どのくらい→「広告費200万円・目標売上5000万円以上・目標利益1000万円以上」

 

次に、①を実現するための「マーケティング方針」「プロダクション方針」の「戦略目標」を決定し、戦略目標を達成するための具体的な行動を「数字目標」「行動目標」として設定します。

 

たとえば、マーケティング方針の戦略目標は、「web広告の強化」「広告から自社サイトに来訪したユーザーのコンバージョン率アップ」、プロダクション方針の戦略目標は「輸送コストの削減」「品質の向上」などが考えられます。そこでこの戦略目標を達成するための「数字目標」「行動目標」を決めていきます。

 

行動計画を作成するうえで大事なことは、どの目標にも具体的な数字と行動を記し、誰が見ても「何を目指して、どう動くべきか」がわかること。目標をクリアしていけば、会社の経営理念が実現できると、社員全員が信念を持って取り組めることです。

 

そのためには「戦略目標」に対する「数字目標」や「行動目標」が妥当であり、かつ実現可能であることを証明しなければなりません。

 

経営者であれば、「この目標を掲げるなら、毎月達成すべき数字はこれくらい」という計算が頭のなかでできますが、社員がみんな社長と同じ感覚を持っているわけではありません。

 

また、融資審査では経営計画の数字は非常にシビアに判定されます。

 

なぜこの目標数値になったのかと問われて「これまでの実績から、だいたい・・・」などと答えてしまっては、根拠がはっきりしない数字を目標にしているとみなされ、マイナス評価になってしまいます。

 

そこで、経営計画や行動計画を作成したあと、もしくは作成段階で、税理士など経営計画策定支援を行っている専門家に依頼すれば、目標数値の信憑性がぐっと上がります。

 

融資担当者も、専門家が提示した根拠ある数字なら納得してくれます。

 

経営計画書や行動計画は、市場や経営状態の変化によってその都度修正するものです。その度に専門家のサポートを受けることができれば、経営者には見えていなかった経営上の課題や、会社発展のための情報を教えてもらえるでしょう。

経産省が提供する経営診断ツール「ロカベン」の活用

最後に、経済産業省が提供している会社の経営状態を客観的に診断するツール「ローカルベンチマーク(通称ロカベン)」についてご紹介します。

 

ロカベンは経営者、金融機関、商工会などの支援機関が企業の状態を把握し、同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みです。

 

財務分析診断(図2)

「財務分析入力シート」に、企業の財務情報に関するデータを打ち込むと、企業の経営状態を把握するうえで重要な6つの財務指標に関する数値が出ます。

 

●売上持続性(売上高増加率)

●収益性(営業利益率)

●生産性(労働生産性)

●健全性(EBITDA有利子負債倍率)

●効率性(営業運転資本回転期間)

●安全性(自己資本比率)

 

[図表2]財務分析診断の参考表

 

 

非財務ヒアリングシート

企業の現状認識と将来目標、課題と対応策に関して、経営者が4つの視点から具体的に記載することで、企業、金融機関、支援機関が対話を深めるための情報を提供します。

 

●経営者(経営者のビジョン、経営意欲、後継者の有無など)

●事業(沿革、強み、ITに関する投資や活用の状況など)

●企業をとりまく環境・関係者:(市場動向、規模、顧客リピート率、従業員定着率、取引金融機関数など)

●内部管理体制:(組織体制、事業計画、研究開発、人材育成の取り組み状況など)

 

経営者が、自社の事業内容や現状、課題、成長の可能性などを、事業計画や面談を通して第三者に正確に伝えることは、容易ではありません。

 

しかし、ロカベンを使えば、財務に対する客観的なデータが自動的に表示されるので、経営者の思いや目標、現状などの情報が、整理された形でまとめることができます。また、社外との対話に限らず、社内における経営課題の検討や、経営者が会社の現況を知るための資料として利用するなど、幅広く活用できます。

 

 

広瀬 元義

株式会社アックスコンサルティング 代表取締役

 

9割の社長が勘違いしている 資金調達の話

9割の社長が勘違いしている 資金調達の話

広瀬 元義

あさ出版

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