前回は、膨大な「貸地」を所有する大地主に起こった相続問題を取りあげました。今回は、高額な相続税が必要となる「借地権」の相続問題について見ていきます。

底地権を所有する地主が亡くなったが・・・

前回に引き続き、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースを見ていきます。

 

【ケース2】Dさん・73歳/子2人(長男、長女)

世田谷区内にお住まいのDさんという方の案件です。Dさんは150坪ほどの土地を借りており、そこに自宅とアパートを所有していました。

 

ある時Dさんに、地元の不動産会社Aから、その土地の所有者である地主さんが亡くなったとDさんに連絡が入ります。どうやらその不動産会社が地主の底地権を買い取っており、今後の土地の利用についての話をしたいというのです。不動産会社は底地を買い取ったはいいが、今のままではDさんからわずかな地代をもらうことしかできないのでDさんに全部買い取ってもらうか、借地と底地とを半分ずつ交換して、それぞれが所有権を持つ形にしたいと交渉してきました。

 

そうは言っても、Dさんは土地を買い取るために現金を使うのも心配でしたし、半分ずつの交換にしても立地的に実家とアパートのどちらかを諦めなければいけなくなりますから、どうすべきか悩みます。実家を諦めれば居住地を変えなければならず、アパートを諦めれば大事な収入源を失うことになります。

 

不動産会社から紹介された弁護士がアドバイザーをしていたのですが、間に入って本格的な調整を依頼すると、高額な相談料が請求されることがわかっており、Dさんはどうにもできず我々のところに相談に来たのでした。

借地権の評価が億単位となり、相続税が高額に・・・

困っているDさんにまずお話ししたのは、「地主が代わったからといって借地権者がすぐに対応しなければならないということはありませんよ」ということでした。新しい地主に何を言われようとも、借地権者には借地権という権利があるため、納得いかないことに無理やり従う必要はどこにもありません。今のまま実家に住み続けながら、アパート収入を確保しておくことはできます。

 

まずはその心配を取り除いてあげたのですが、Dさんの財産全体について伺って考えていると、別の心配が持ち上がってきます。その借地権の評価が億単位となり、相続税が高額になりそうだったのです。

 

ところが、Dさんは73歳で心臓の病気を患っていながら、いまだ相続対策には何も手をつけていない状態でした。息子さんたちは相続税を支払えそうですかと訊ねると、おそらくそれほどの現預金はないだろうし、何とか捻出できたとしても困らせることになるからどうにか避けたいという返答でした。

 

次回は、高額な相続税が必要となった借地権を相続することの問題点を見ていきます。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

株式会社財産ドック

幻冬舎メディアコンサルティング

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