アメリカ不動産投資に期待される「2つの収入源」
近年、海外不動産投資が注目されています。少子高齢化による人口減少と住宅需要の縮小で、国内不動産を保有すること自体に高いリスクが伴い、海外不動産への投資にシフトしつつあるのです。
海外不動産のなかでも特に人気なのが、アメリカ不動産です。高い経済成長を続けているアジア新興国も住宅需要が増加しており収益もある程度期待できるものの、安定性や信頼性にまだ不安が残ります。その点、すべてが高水準でバランスが取れているアメリカ不動産は、安心して投資が行えます。
今回は、アメリカ不動産の人気の秘密を4つに分けて紹介していきます。
①インカムゲイン
不動産投資において2種類ある基本的な収入源のうちの1つが、インカムゲインです。賃貸収入で安定的に得られる収益のことであり、大きな柱になります。日本では、このインカムゲインが主な収益となっており、これまで比較的高い利回りを誇っていました。しかし、人口減少に伴って空室率が高まり、賃料も緩やかに下落しています。そこで、人口の増加と経済成長が著しい、新興国や先進国など海外の不動産が注目されてきたというわけです。
安定したインカムゲインを狙うためには、空室を防ぐことと高い家賃の維持が必要になってきます。しかし現在、日本の人口は1億2600万人で、2030年には1億2000万人、2050年には9700万人まで減少するといわれています。住宅が年々増えていくなか、人口が減少すれば、当然空室が多くなります。空室を埋めるために、家賃を下げざるを得ません。このままいくと、国内不動産投資でインカムゲインを期待できる未来はほぼありません。
一方、アメリカの人口は現在3億2800万人で、2030年には3億6260万人、2050年には4億人まで到達するといわれています。空室率も低くなるため、安定した収入が見込めます。加えて、日本と違い、約5~8年の周期で家を買い換える文化があり、空室が出てもすぐに埋まります。また、世界的な大企業が集まっているため、働く人々が増加します。それに伴い、所得も上昇するため、賃貸需要が高まり、家賃収入の増加も期待できます。
しかし、インカムゲインを考える上で注意しなければならない点があります。毎月、賃貸料から差し引かれる税金と諸経費です。高い賃貸収入で表面利回り(グロス)がよくても、実質利回り(ネット)が低くなることもあります。
日本とは異なり、印紙税、登録免許税、建物への消費税などはかかりませんが、固定資産税、所得税(連邦・州の2種)、管理費(修繕費含め)を計算しなければなりません。連邦所得税は所得帯によって10~37%と変動しますが、州所得税と固定資産税は州・地域によって異なります。固定資産税が高いものの州所得税はなかったり、逆に、州所得税が高いところでも固定資産税は非常に低かったりとまちまちです。
そして、地域によって自然災害の発生率も異なります。発生が多い地域では、それだけ修繕の回数が増え、管理費も高くなります。税制についても、自然災害の有無についても、地域差が出ますので、しっかりと投資先のエリアを比較しながら検討していくことが必要です。
②キャピタルゲイン
アメリカ不動産投資における、もう一つの大きな収入源が、キャピタルゲインです。不動産価値の上昇により、購入時よりも高い価格で売却できた際の収益のことです。日本国内では、東京の一等地を除き、このキャピタルゲインを狙って不動産投資を行うことはほとんどありません。
アメリカの不動産価格は、2007年のサブプライムショックの影響で一時は下落しましたが、それ以前の水準まで戻し、現在も上昇傾向にあります。過去40年間で年平均4%ずつ値上がりしているというのは驚異的です。仮に、3000万円の不動産を購入し、5年後に売却する時には、単純計算でも3600万円になっているので、高いキャピタルゲインが期待できます。
アメリカは、日本の約4倍である世界第1位のGDPを誇り、これからもさらなる経済成長を遂げていくことが見込まれています。アメリカ不動産市場の安定基盤は、今後も不動産価値を高めていくことでしょう。
一つ注意すべき点としては、売却時に利益が出る場合、キャピタルゲイン税というものが発生します。保有期間5年を境に「短期」と「長期」に分かれていて、収入や地域によって変動しますが、収益に対して、短期で約40%、長期で約20%が課税されます。比較的高いキャピタルゲイン税ですが、アメリカでは「1031 Exchange」という制度があり、売却した時点から180日以内に、その物件と同等か、それ以上の価値のある次の物件を購入すれば、キャピタルゲイン税の繰り延べが可能といった措置もあります。
最大のメリットともいえる「減価償却による節税」
③節税(タックスメリット)
アメリカ不動産投資での最大のメリットは、なんといっても、減価償却による節税対策が可能な点です。毎月安定したインカムゲインと、将来的な収益を見込むキャピタルゲインを得ながら、節税ができるというのは大変魅力的です。
減価償却とは、耐用年数に応じて、分割した費用を計上できることをいいます。計上した費用を課税所得から差し引くことで、課税所得を減らし、納税額を下げることが可能です。
日本での木造物件の耐用年数は22年と決められています。減価償却年数は、(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%で計算ができますが、築年数が22年以上経過している物件は、耐用年数×20%で計算できるため、4年での償却が可能です。
アメリカの不動産は一律27.5年ですが、日本での申告時には日本の税法に則るので、耐用年数22年で計算ができます。またアメリカでは、日本と違って中古物件が主流の文化となり、リノベーションを繰り返した中古物件の価値は高いため、高確率で減価償却期間は4年にできるとお考えください。
減価償却費を算出する際に対象となるのは、建物の値段になります。物件全体に対して、日本は約2~3割ですが、アメリカは約7~8割と、建物の価値が高く、減らせる納税額も多いので、節税効果は非常に高いです。
④信頼性と安心感
アジア最高水準の利回りを誇るフィリピンや、住宅需要が拡大しつつ物価が低いマレーシアなども、アメリカにも負けないくらいインカムゲインとキャピタルゲインに期待できるエリアではあります。しかし、安定性や信頼性という意味ではまだ不安が残り、まさに成長段階といえます。その点において、アメリカは経済的にも安定しており、情報量の多さと取引の透明性、公正性において世界最高水準を誇っています。
取引の透明性、公正性において、重要な役割を担っているのが、1947年に誕生したエスクロー制度というものです。エスクローというのは、売主・買主のどちらにも属さない、第3者としての仲介業者です。すべての決済業務をエスクロー会社が行うので、売主・買主、金融機関や仲介業者が集まって手続きを行う必要がありません。非常にスムーズに進行できるメリットがあります。
また、物件権利の証拠を精査する資格を持っていて、政府機関と直接やりとりを行うため、万が一、仲介業者から受け取った書類のなかに偽造書類が紛れていた場合でも、すぐに判明します。タイトルインシュランスという不動産権利の瑕疵や名義の正当性を保証する保険制度もあるので、安全性の高い取引が可能となるのです。
柳原 大輝
WIN/WIN Properties, LLC 共同代表
株式会社WIN WIN Properties Japan 代表取締役