アドバイザー任せにせず、自分でもM&Aを理解する
今回からは、実際にM&Aを選択した場合、どのような流れで物事が進んでいくのかを見ていきましょう。売り手(承継希望医)と買い手(開業希望医)で若干異なりますが、ここでは売り手の手順を追います。
[図表]クリニックM&Aの流れ
①事前相談
●最初のアドバイザーとの相談です。M&Aの目的や理由、動機などを明らかにします。いつまでにM&Aを成立させたいかといった希望も伝えます。
●M&Aの大まかな流れや手順、費用、さらに、メリット・デメリットなどについて説明を受けます。
●希望条件、M&Aのスキーム(出資金譲渡、合併、事業譲渡などがあります)、希望譲渡価額、事業の現状などがヒアリングされます。
②仲介契約の締結
●アドバイザーへの報酬や契約条件について確認します。
●アドバイザーが信頼に足る相手であると確認できたら、仲介契約を結びます。アドバイザーの力量次第でM&A成立の可否が決まるといっても過言ではありません。見極めは慎重に行います。
③概要書作成
●クリニックの規模、立地、過去の業績など様々な要素を鑑みて、価格算定を行います。そのための書類や資料(決算書のコピー、リース契約書のコピー、開業地の不動産の契約書のコピーなど)を提出します。
●承継するに当たっての条件や要望などをリストアップしていきます。
これからどのようにM&Aを進めていくかについて、具体的な計画やスキームを立てます。このとき、アドバイザーが考えるM&Aの方向性や戦略を明確にしてもらい、納得がいくまで話し合います。
「分からないから」とアドバイザー任せにするのではなく、アドバイザーがどのような考えでM&Aを決めたのか、分かるまで説明してもらいます。自分でも理解して、両者が同じ方向を見て進むことが、後々後悔や失敗をしないためには重要です。
最も時間のかかるマッチングだが、ルールも忘れずに
④マッチング
●ターゲットを絞り、アプローチをかけて打診します。この段階での打診は匿名で行うので、こちらの秘密情報が漏れることはありません。
●ターゲットと接触できたら、先方から基礎的な情報を提供してもらい、初期的な分析を行います。
●初期的な分析をしてみて気に入らなければ、別のターゲットを探します。
●売り手・買い手がともに「この相手でOK」となれば、マッチングの成立です。マッチングは必ず1対1で行います。他にも気になるターゲットがいるからといって、キープするなど、いわゆる二股をかけるようなことはルール違反です。
⑤秘密保持契約の締結と情報開示
●こちらの詳細内容を開示するに当たり、秘密保持の契約を結びます。M&Aでは経営状態から法的・労務的リスクのことまで、クリニックの実状をプラス面もマイナス面もすべて開示しなければなりません。そのため、「ここで知り得た情報は、決して他に漏らすことはしません」という約束を交わします。
●このタイミングで、クリニックの施設見学やクリニック周辺地域の実態視察などが行われることもあります。
⑥開業希望医との条件交渉
●譲渡価格や譲渡時期など実際にM&Aに関する条件や要望について、買い手と面談します。両者で認識のズレがあるとM&Aはうまくいかないので、この時点での話し合いは綿密に行います。互いに質問し合い、疑問点などはできるだけ解消するようにします。
●双方のアドバイザーが間に立って、希望売買価額や条件の調整を行います。
この話は次回に続きます。