本記事では、介護施設の見学時における、7つのチェックポイントを見ていきます。

掃除は行き届いているか? 雰囲気は明るいか?

パンフレットやホームページだけでは分からない、実際に施設に足を運んで確認すべきことはたくさんあります。希望に合いそうな施設を見つけたら、ぜひ電話やメールで連絡して見学を申し込みましょう。

 

見学の際は、主に以下の点をチェックしてください。

 

① 共用スペース

 

特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどの施設では、リビングや食堂など共用スペースの掃除が行き届いているか、掲示板の張り紙が破れたり古いまま放置されたりしていないかをチェックしましょう。人手不足の施設では、そうした細かな部分への気配りができていません。そのため職員配置が適切かどうかを知るひとつの指針になります。

 

毎日の憩いの場である共用スペースの環境が悪いということは、施設の居心地も悪いということです。テーブルや床が食べこぼしで汚れていないか、明るい雰囲気かどうかもよく確認しましょう。

なるべく多くのユニットやフロアを見せてもらう

② フロアごとの特徴

 

見学は時間帯も見せる場所もある程度決まっているので、きれいなところだけをアピールするためにいくらでも取り繕うことができます。見学に訪れたら「ほかの階も見学していいですか?」「今度はほかの時間に見学しに来てもいいですか?」などと聞いてみましょう。そこで快く見せてもらえるかどうかが、いい施設であるか否かの指標です。

 

施設によって異なりますが、医療依存度の高い利用者、認知症のある利用者、比較的自立度の高い利用者といった区分でフロアが分かれていることが多いので、なるべく多くのユニットやフロアを見せてもらい、フロアごとの特徴や対応を聞いてみましょう。

 

[図表]施設内部の写真

 

あいさつは基本、職員の表情にも注目

③ 職員の態度

 

あいさつがきちんとできていることは基本です。職員の表情にも注目しましょう。職員がいつも疲れた顔をしていたり、投げやり・乱暴な声かけをしていたりするのは問題です。利用者になれなれしく接していたり、適当にあしらっていたり、あだ名で呼んだりといった行為も、サービス面で非常に問題があります。

 

また、見学時には案内役の担当者だけでなく、ほかの職員にも話しかけてみましょう。その際の対応がぞんざいだったり、つっけんどんな話し方だったりしたらかなり危険です。

 

ひとりの職員の態度がひどいというよりも、ほかに職員がいるにもかかわらず、見学者に対する態度について指導や注意をしていない状況ということですから、容認する施設側の運営姿勢が問題です。こういう施設は絶対に避けてください。

「素敵なところですね!」と利用者に声をかけてみる

④ 利用者の様子

 

利用者の表情や様子を確認しましょう。楽しそうか、生き生きとしているかどうかで、施設全体の雰囲気を間接的に知ることができます、また、利用者からのコールがずっと鳴りっぱなしだったり、利用者が放置されたりしていないかもチェックしましょう。

 

もっとも分かりやすいのは、利用者に「素敵なところですね!」と声をかけて、その反応を見ることです。施設をほめているような話し方をすれば嫌味に聞こえません。数人に話しかけて「よくしていただいています」などとよい答えが返ってくることが多ければ安心ですが、戸惑ったような表情やあいまいな反応が多ければ注意が必要かもしれません。

 

⑤ 見学の時間帯

 

昼食時は1日の中で最も慌ただしい時間帯ですが、だからこそ施設職員の対応のよし悪しが見分けられます。食事はあたたかい状態で出されているか、食事の介助を利用者のペースに合わせているか、職員の数は足りているかなどを判断できます。

 

事故やトラブルが起きた時の対応などを細かく聞く

⑥ 説明の丁寧さ

 

施設の契約内容を詳しく説明してくれるかどうかはとても重要です。

 

介護保険法では、施設の職員の配置状況や建物の概要、サービス内容など、費用の話も含めて重要事項として説明しなければいけないと定められています。

 

長期間にわたり高い費用を支払っていくのですから、事故やトラブルが起きた時の対応や、要介護度が上がったらどうなるのか、認知症が進行した時に退去を求められるかどうかなど、聞きづらいこともどんどん聞いておきましょう。

 

とくに費用は念入りに確認しましょう。「すべて費用に含まれています」という説明で済ませる施設もありますが、後でトラブルに発展しないように、どのような内容が含まれているのか一つひとつ確認することが大切です。

 

食費やおやつ、身の回りの消耗品などの費用も細かく確認してください。居住費や上乗せサービス(支給限度額を超えて提供されるサービス)の費用についても、内訳をきちんと説明してもらいましょう。

 

さらに看取りに対応しているか、自立支援をどの程度目指しているのかなど、施設の理念や介護に対するスタンスを把握しておくことも大切です。

 

[図表1]施設見学時のチェックリスト

必ず複数の施設を見比べ、気になる施設は再訪問

⑦ 気になった施設は再度訪問

 

ここはよさそうだという施設があっても、すぐに契約するのは避けましょう。再度訪問するとともに、ほかの施設とも見比べてください。初回の訪問時には見えなかった部分が見えてきたり、ほかの施設との違いが鮮明になったりします。

 

また、近隣の住民や商店の人などに声をかけて評判を聞いてみるのもいいでしょう。地域住民に対してオープンな施設は、「見せたくない介護を行っている」といった隠し事がなく、健全な運営をしていることが多いといえます。

 

[図表2]おおよその費用(自己負担額)の目安【1割負担の場合】

 

 

杢野 暉尚

社会福祉法人サンライフ/サン・ビジョン

理事・最高顧問

 

本連載は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。介護保険サービスの金額は、社会福祉法人サンライフの金額を参考に記載しています。実際の金額は利用する施設などへお問い合わせください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

人生を破滅に導く「介護破産」

人生を破滅に導く「介護破産」

杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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