「ヘッジファンド指数」の動きを見てみると・・・
公募の投資信託の場合は、半年に一度の有価証券報告書の作成が義務付けられていますが、私募投信の場合はありません。それでも、時代は情報開示に動いています。
ヘッジファンドが私募投信を選択するのは、投資の効率化を追求しているからです。半年に一度ずつ有価証券報告書などを作成していたのでは手間もコストもかかってしまいます。ヘッジファンドは、あくまでも顧客の利益創出を最優先する金融商品ですから、こうしたコストも以前は最小限に抑えるのが常識でした。
情報開示が進むことによって、ヘッジファンドに対するイメージがアップされればいいのですが、実はヘッジファンドに対する誤解のひとつには、「パフォーマンスが良すぎる」、というものもありました。
下げ相場のなかで、公募投資信託の大半が大きく基準価額を下げているのに、ヘッジファンドの多くが相場の変動にかかわらず利益を出しているからです。実際のところは、ヘッジファンドの基準価額の動きを指数化した「ヘッジファンド指数」が複数の「ヘッジファンド調査会社」から発表されていますので、その数値の推移を見ていただくとわかります。
たとえば、1999年から現在までの14年間のパフォーマンスは、ずっと上昇を続けています。下記の図を見ても、北米の指数は1999年のころに100台でしたが、現在では400台と大きく伸びています。日本も失われた20年の後半であるにもかかわらず、着実な伸びを見せており、日経平均株価などと比べると大きく動きが異なります。
【北米、アジア、日本のヘッジファンド指数推移】
一般投資家の目に触れることがないヘッジファンド指数
いずれにしても、ヘッジファンド指数はこの14年間で2〜4倍になっているわけで、それだけヘッジファンド全体のパフォーマンスは高いといえます。ただ、こうしたヘッジファンド指数が一般の個人投資家の目に触れることはほとんどなく、こうした“現実”も個人投資家には「胡散臭い」と思われてしまう理由なのかもしれません。
もっとも、2012年には、年金基金の資金を預かって運用していたヘッジファンドの「AIJ投資顧問」が、巨額の損失を出して詐欺事件として起訴された事件がありました。同社は、どんなに下げ相場でもコンスタントに高い収益を装い、ヘッジファンド業界のなかでは、その運用成績に疑問の声が上がっていたほどです。
こうしたケースはもちろん例外ですが、長年にわたってAIJが破たんしなかった背景には、「ヘッジファンドならあり得るパフォーマンス」として、プロの機関投資家も見抜けなかったことがあるのではないでしょうか。
ちなみに、もうひとつ誤解があるのが、ヘッジファンドの「国籍」です。大半のヘッジファンドが「租税回避地」、いわゆる「タックスヘイブン」に籍があり、先進諸国の高い税金を免れているという現実があります。ケイマン諸島、ニュージャージ諸島といったタックスヘイブンがほとんどですが、これもヘッジファンドを誤解させているようです。これも、あくまでも投資の効率化、収益の確保という考え方に沿ったものです。実際に、一般の公募投信でも、タックスヘイブンに籍を置くファンドは数多くあります。