今回は、相続の遺留分は「誰」に「どの程度の割合」で認められるのかを考えてみます。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。


世の中、期待通りにいかないことは多いものですね。相続においては、相続人の構成によって相続人ごとの取り分に定めがございます。この定めを法定相続分といいますが、これはあくまで遺言による相続分の指定がない場合のことでして、原則は「遺言による相続分の指定が、法定相続分に優先する」というわけです。

 

さて、相続人となる人は、えてして自らの取り分を予想し期待します。「三人兄弟だから六分の一はもらえるはずだ」とか、「一人息子だから二分の一はもらえるはずだ」とか、頭の中にはおおよその金額が浮かぶわけです。

 

しかし現実には、予想をはるかに下回る配分額が書かれている遺言や、ときには愛人に全財産遺贈して、妻や子供には一銭も残さないなんて遺言もあるかもしれません。

 

こんなとき、民法は一定の相続人に対して最低限の権利を守ってくれます。遺言によっても侵すことのできない、相続人に保障された最低限の権利、それが「遺留分」です。

 

遺留分を侵害する遺言や生前贈与があった場合、遺留分を侵害された相続人は、侵害している相手に対して遺留分減殺請求権を行使することができますので、覚えておいてください。ただし、遺留分は直系卑属および直系尊属、そして配偶者である相続人に認められた権利ですので、兄弟姉妹である相続人には認められておりません。

 

 

被相続人の死亡により、相続が開始されるわけですが、まず最初に行うべきは遺言書の有無の確認作業です。遺言書が見つかり、相続分の指定がなされていれば、基本的にはその遺言書に書かれている通りに、各相続人へ指定された相続財産が分配されることになります。

 

しかし、一定の相続人に対しては、遺言によっても侵すことのできない最低限保障された権利である「遺留分」がありますので、これを侵害した相続分の指定がなされていた場合には、遺留分減殺請求権という権利を行使することができるわけです。

 

この遺留分減殺請求権ですが、いつまでに行使すればよいのでしょうか? 法律では、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年以内」に行使することとなっております。また、遺留分の侵害をだいぶ後に知ったとしても、「相続開始の時から十年」を経過してしまったら権利を行使することはできないとされています。いつでもOKというわけではありません。

 

また、遺留分減殺請求は、相続放棄等のように家庭裁判所へ申し立てする必要はなく、相手方である他の相続人等へ「遺留分減殺請求します」と意思表示をすればいいだけです。電話でも直接お会いして伝えてもいいのですが、やはり、権利を行使したという客観的証拠が必要な場合には、書面等で遺留分減殺請求権を行使するといいかもしれません。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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