これからの事務所は、小規模型と大規模型にシフト
今後、士業事務所の形態は徐々に二極化していくと考えられます。
日本税理士会連合会によると、2017年1月末〜6月末までの半年間で、税理士法人数は74法人増加(3487法人→3561法人)しました。この間、税理士登録者数は40人ほど増加しているものの、伸びはいまいちです。
さらに2018年5月末には、税理士法人の数は3758法人にまで急激に増えています。事務所形態の組織化・大規模化を視野に入れている事務所が増えてきているということがいえるでしょう。
一概には言えませんが、事務所形態は、次の通り、小規模型と大規模型にシフトしていくと考えられます。
●小規模型 【個人事務所】
●大規模型 【法人事務所(本書では正社員20人以上〜と定義)】
※士業の法人化は、1人からでも可能であるため、法人組織であっても小規模の事務所も数多くあります。
これから開業する人や、開業して間もない人が、大規模型に移行するのは、大きなリスクと、とてつもない努力・覚悟が必要になります。ですが、決して不可能ではありません。そのためには、集客努力はもちろんのこと、組織構築にも力を入れる必要があります。
〈大規模型(法人化)のメリット〉
①大量案件処理が可能
②仕事の処理スピードが上がる
③全国に拠点を持つことができる
④複雑化・国際化の業務に対応できる
〈大規模型(法人化)のデメリット〉
①1社の単価が高いため、1社なくなると職員数人の雇用維持が困難になる
②しっかりと職員の教育を行わないと担当者によってサービスの質がバラバラになる
人数が多いため、数千人・数万人規模の会社の大量案件を複数人で担当し、処理することが可能になります。また、複雑化・国際化する案件についても多くの人材を抱えることで得意分野別(英語・中国語・韓国語対応など)に処理が可能です。大規模にすることで大企業から仕事を受注する機会も増えていきます。
〈小規模型のメリット〉
①1人か1人+パートになったとしても柔軟に動ける体制である
②職員を雇用しないので気楽に仕事をすることができる
③撤退について早期に判断することができる
〈小規模型のデメリット〉
①大きな依頼があった場合に対応できない
②人数が少ないため、対応業務範囲、対応(訪問)エリアが限られる
小規模事務所は、大量案件の処理はできません。また、抱えられる顧客(顧問先)の数も限られます。従って、小規模事務所は、専門特化型に移行する必要があります。もう一つ、アウトソーシング型もありますが、こちらはAIの進展などに伴い、書類作成や記帳業務などの利便性が高まり、誰でも簡単に処理が可能になるため、徐々に失われていく可能性があります。
「中規模型」は案内特化型とのバランス感が求められる
では、中規模型(10〜20人規模)の事務所が生き残るにはどうしたら良いでしょうか?
この形態の場合、専門特化型とのバランス感覚が求められます。中規模事務所は、ある程度の規模の案件も受託できるし、機動力もあるため、まったくなくなることはないでしょう。しかし、アウトソーシング型(書類案件処理など)で人数を増やしている場合は、今後書類作成は簡素化・省略化されていきますので、早急に書類作成以外の柱となる業務を検討していく必要があります。
最後に、サービスの2つの型を確認しておきます。
①専門特化型
内訳(業種特化型、サービス特化型、コンサルティング型)
業種特化型は、先述した通り、建設、医療、ITなどの業種に特化する形態です。サービス特化型は、会社設立や離婚問題など、サービスの分野に特化する形態です。コンサルティング型は、コンサルティングに主眼を置き、経費削減コンサルティングや採用コンサルティングなど、日常業務に+αした業務です。
②アウトソーシング型
書類案件処理、記帳業務、税務処理、給与計算処理など