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タックス・ヘイブン対策税制…部分合算課税の対象所得 その2

前回は、タックス・ヘイブン対策税制における「受動的所得」の具体例を取り上げました。今回は、タックス・ヘイブン対策税制における対象外所得への課税について見ていきます。

課税対象となる6種類以外の金融所得とは?

これまでの連載を通じて、タックス・ヘイブン対策税制において課税対象となる、①配当等、②利子等、③有価証券の貸付の対価、④有価証券の譲渡損益、⑤デリバティブ取引、⑥外国為替損益について解説しました。今回は、これら6種類以外の所得への課税について見ていきます。

 

上記の①から⑥までの所得に当てはまらないものを拾おうとする条項で、「バスケットクローズ(Basket Clause)」といわれるものです。具体的には以下の所得が例示されています。

 

(1)投資信託の収益の分配の額の合計額から、その収益の分配の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額

 

(2)売買目的有価証券に相当する有価証券に係る評価益又は評価損

 

(3)有価証券の空売りに相当する取引に係るみなし決済損益額

 

(4)信用取引に相当する取引に係るみなし決済損益額

 

(5)発行日取引に相当する取引に係るみなし決済損益額

 

(6)価証券の引受けに相当する取引に係るみなし決済損益額

 

ただし、ヘッジ取引として行ったことが明らかな一定の取引は対象外です。

無形資産等の使用料、譲渡損益

このほかにも、「無形資産の使用量、譲渡益」が挙げられます。無形資産等とは、工業所有権その他技術に関する権利、特別の技術による生産方法もしくはこれに準ずるもの(これらの使用権含む)、または著作権(出版権及び著作隣接権そのたこれに準ずるものを含む)をいいます。

 

改正前は、特許権、著作権等の法令上の裏づけのある権利のみが対象とされていましたが、改正後は法定化されていないノウハウ等が含まれるかたちになっています。

 

ただし、以下の無形固定資産等の使用料・譲渡損益は対象外です。

 

(1) 自ら研究開発して得た無形固定資産等の使用料・譲渡損益

 

(2)相当の対価を支払い取得し、かつ、その事業の用に供している場合の無形固定資産等の使用料・譲渡損益

 

(3)その使用許諾に相当の対価を支払い、その事業の用に供している場合の無形固定資産等の使用料(使用許諾の無形固定資産等につき譲渡は想定されない)

 

(2)の「相当の対価」は、移転価税制の独立企業間価格の計算まで求められませんが、その種類や内容に応じたしかるべき対価が必要とされます。

 

では、例えば日本の中堅・中小企業がイギリスやシンガポール、香港などの法人実効税率が20%未満の国の子会社に無形資産等を「相当な価格」で譲渡し、その子会社が無形資産等の使用料を日本の親会社から受け取っている場合の課税関係はどうなるのでしょうか?

 

結論からいいますと、経済活動基準の最初の事業基準、つまり「主たる事業が株式保有、工業所有権ら著作権などの提供でないこと」を満たさないため、タックスヘイブン対策税制の適用になります。

 

従って、法人実効税率が20%以上の国・地域に設立した子会社がペーパーカンパニーにならなければ、つまり実体基準、管理支配基準のどちらかを満たせば、タックスヘイブン対策税制の対象外になります。

固定資産の貸付の対価も課税対象に

改正前は、船舶・航空機の貸付の対価が課税対象でしたが、改正後は船舶・航空機だけでなく固定資産の貸付の対価にまで拡大されています。

 

固定資産(無形固定資産は除きます)貸付の対価の額の合計額から、その対価の額をえるために直接要した費用の額(その固定資産の減価償却費の金額を含む)の合計額を差し引いた残りが対象です。

 

除外される貸付の対価は以下です。

 

(1) 主として本店所在地国において使用に供される固定資産(不動産及び不動産の上に存在する権利を除く)の貸付による対価

 

(2)その本店所在地国にある不動産及び不動産の上に存する権利の貸付による対価の額

 

(3)以下の要件をみたす固定資産の貸付による対価の額

 

●役員又は使用人がその本店所在地において固定資産の貸付を的確に遂行するために通常必要と認められる業務のすべてに従事していること

 

●その事業年度における固定資産の貸付に係る業務の委託に係る対価の支払額の合計額の、固定資産の貸付に係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額に対する割合が、30%を超えていないこと

 

●その事業年度における固定資産の貸付に係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額の、固定資産の貸付による収入金額から貸付の用に供する固定資産に係る償却費の額の合計額を控除した残額に対する割合が、5%を超えていること

 

●その本店所在地国において固定資産の貸付を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること

古橋&アソシエイツ・税理士古橋事務所 代表

1954年生まれ。税理士。早稲田大学法学部卒業後、南山大学法学研究科修了、太田昭和アーンストアンドヤング株式会社(現・新日本アーンストアンドヤング税理士法人)などを経て独立。古橋&アソシエイツ・税理士古橋事務所代表。外資系企業の日本進出時の会計・税務や国内投資ファンドへの税務コンサルティング及び国内中小・中堅企業の海外事業進出、資産家に対する国際税務支援で多数の実績を有す。国外のネットワークを活かした最新の世界税務事情に基づくグローバル税務には、国内外で定評がある。著書に『富裕層の新納税術 海外タックス・プランニング』『海外納税のすすめ』『納税者反乱』(総合法令出版)など多数。

著者紹介

連載29年度税制改正対応!「タックス・ヘイブン対策税制」の最新解説

 

 

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