前回は、会社を設立する際に知っておきたい法知識を取り上げました。今回は、会社設立の際に知っておきたい法知識として、「会社の種類」「設立の手続き」を見ていきます。

株式会社と合名・合資・合同会社の違いは?

前回は、会社を設立する際に知っておきたい法知識についてお話をしました。今回は、一般的な会社の種類や設立手続の流れをご紹介します。

 

会社には、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4つの種類があります。それぞれの特徴は、以下の2点から考えるとわかりやすいでしょう。なお、定款により異なる定めがなされる場合もありますのでご注意ください。

 

①出資者は会社の経営について直接関わらないといけないか? (所有と経営の分離)

会社を設立するには、元手となる資金が必要です(これを資本金といいます)。資金を出資する人、すなわち出資者は会社の所有者といえます。

 

しかし、株式会社の場合は、出資者を「株主」と呼ぶ一方で、経営者を「取締役」等とも呼びます。必ずしも取締役が株主の中から選ばれる必要はないのです。つまり、「出資者=経営者」である必要はありません。このように、出資者と経営者とが基本的には分かれている点が、株式会社の特徴の1つです。

 

これに対して、合名会社・合資会社・合同会社の3社(これらをまとめて持分会社といいます)の場合、出資者を有限・無限責任「社員」と呼ぶ一方で、経営者を業務執行「社員」と呼びます。株式会社の場合と違って、業務執行社員は、会社の社員の中から選ばれる必要があります。このように、出資者と経営者とが基本的には分かれない点が、持分会社の特徴の1つです。

会社の種類によって「出資者の責任」が変わってくる

②出資者の責任は限定されているか? (有限責任、無限責任)

株式会社の場合、出資者である株主は、株式を購入する際に金銭等を支払います。しかし、株主はその購入額を超えて会社の責任を負うことはありません(これを有限責任といいます)。例えば、会社の業績がいくら悪化しても、株主が会社の取引相手から会社の代わりに支払いをするよう求められる・・・といったことはありません。

 

これに対して、持分会社の場合、出資者である社員の責任の内容は、会社の種類によって異なります。

 

合名会社の場合、社員らは会社の取引相手に対して、一律に自己の出資額以上の責任を負います(これを無限責任といいます)。これに対して、合同会社の場合は、社員らは出資額を超えても責任を負いません。これは、株式会社と同様、有限責任だからです。そして、合資会社の場合は、社員らの中に有限責任を負う社員と、無限責任を負う社員とがいずれも存在するのです。

 

初めて会社を設立して起業をされる方には、株式会社がおすすめです。株式会社は、合資会社や合名会社と異なり、出資者の責任を限定できるため、幅広い投資家から出資をしてもらうことができます(有限責任)。

 

また、株式会社は合同会社の場合と違い出資者に対して経営に直接関わることを求めません(所有と経営の分離)。「経営には興味がなく、株主配当だけが欲しい」という出資者のニーズにも合致するのです。

 

その他様々な理由から、初めて起業される方には株式会社がおすすめです。

 

[図表]会社の種類と特徴

会社の発起設立に必要な6つのステップ

会社の設立には、広く出資者を募集して設立する場合(募集設立)と、すでに予定されている出資者だけで設立する場合(発起設立、起業される方の多くはこちらを選択されます)とがあります。

 

ここでは、発起設立の手続の流れをご紹介します。

 

手続の流れは大まかにいえば、①定款の作成、②株式発行事項の決定、③出資の履行、④役員の選任、⑤設立経過の調査、⑥登記申請及び完了、の順です。

 

①定款の作成――会社の決まりごとを決める

 

まずは、会社の根本的なルールにあたる定款を作成します。定款には、会社設立時までに以下の点を記載しなければなりません(絶対的記載事項)。

 

●会社の名前(商号)

●何をしてもうけたいか(会社の目的)

●どこに会社をおくか(本店の所在地)

●元手の資金はいくらか(出資額又は最低額)

●責任をもって、会社の設立事務を担う出資者は誰か(発起人)

●いくらまで株式を発行できるか(発行可能株式総数)

 

その他、定款に記載がなければ効力が生じない事項もあることにも注意してください。特に、起業される場合は以下の点が重要です。

 

●役員を株主に限定するとの規定を定めるか

●株式の譲渡につき株主総会や取締役会の承認を要することを定めるか

●株券を発行することを定めるか

 

②株式発行事項を決定する――出資に関する決まり事を決める

 

実際に発行する株式の内容や種類(これを株式発行事項といいます)として、主に以下の点を決定します。

 

●発起人が割当てを受ける株式の数

●株式と引換えに払い込む金銭の額(出資額)

●成立後の株式会社の資本金等に関する事項

 

③出資の履行――実際に出資する

 

株式の割り当てを受けた発起人は、その後速やかに、会社に対して出資をしなければなりません。なお、遅くともこの時までには、会社専用の口座を開設する必要がありますのでご注意ください。

 

④役員の選任――会社を動かす人を決める

 

実際に出資の履行を完了した発起人は、会社設立時に役員となるべき暫定的な経営者等(これを設立時役員といいます)を選任します。

 

⑤設立過程の調査――これから作る会社に問題がないか調査する

 

設立時役員は、選任されてから速やかに以下の点を調査しなければなりません。

 

●(現物出資財産等がある場合にはその)出資手続が相当なものであること

●出資の履行が完了していること

●その他会社設立の手続が法令や定款に違反してないこと

 

⑥登記を申請する――会社の存在を国に認めてもらう

 

会社を設立する場所(本店所在地)を管轄する登記所に対し、会社の登記申請をします。登記が完了すれば、晴れて会社を設立することができます。

 

いかがでしょうか。会社を作ると決めたら、自分で手続きする人はもちろんのこと、専門家に手続きを任せる人も、最低限の知識はおさえておきましょう。

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