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悲惨な実態…上場企業の「ノンコア事業」から脱却するには?

国内の上場企業数が増加している。その数は3,623社と、25年前と比較すると2倍以上に膨らんだ計算だ。一方で上場企業の内部を見ると、ほぼ稼働していない「ノンコア事業」の存在がある。役職員の責任逃れで「決断」もたらい回しにされ、進むも退くもできない、悲惨なノンコア事業の実態。しかし、M&Aという選択肢を視野に入れると、そこに様々な可能性が広がってくる。

国内上場会社は「1993年の2倍以上」に増加している

国内上場会社数は、一部と二部で2,613社、その他新興市場が1,023社あり、合計3,636社となっています(2018年8月22日現在)。筆者が社会人となった1993年の上場企業数は約1,700社だったのに対して、2倍以上に増加しています。

 

上場企業の子会社は何社ほど存在するのでしょうか。たとえば、関連会社が多いといわれるソニー株式会社の連結子会社は1,292社、筆者が在籍したオリックス株式会社は連結会社831社、関連会社190社と、同社の企業概要に掲載されています(2018年3月31日のデータ)。

 

これだけのグループ企業を四半期毎に、決算数字を集計して報告していることに驚きです。上記の例は極端ですが、数十社の子会社を抱えるのは、あまり珍しいことではありません。そこには、当然ながら、社員数名程度の小規模サイズの会社も多く含まれています。

 

さらに「会社」を分解すると、本部、事業部、部課単位にユニット分けされていきます。ここまで分類すると、企業がどれだけの事業を抱えているかの集計は極めて困難です。しかし、ひとつだけ確実にいえることは、すべての事業が順調なわけではないということです。

上場企業内で「ノンコア事業」となる理由は多種多様…

ビジネスの世界では、上位2割が8割の利益を稼いでいるとよく言われます。平時に、稼ぎ頭の2割が売却対象になるケースは少ないですが、残りの8割や、全体利益に貢献していない子会社、事業部が売却検討の俎上(そじょう)に載せられることがあっても不思議ではありません。

 

上場企業が子会社、事業を売却するケースは多種多様にあります。赤字部門の切り離しや、大きな経営方針の転換等は分かりやすい理由です。まれに、前任者への批判や、新経営陣としての色を出したいなどの理由も見受けられます。組織変更時に、思いがけずノンコア事業となってしまうこともあるのです。

 

その場合、不幸にもノンコアと位置づけられてしまった子会社、事業部で働く人々の気持ちはどうでしょうか。よほど鈍感でなければ、モチベーションが下がるのが普通です。一部の優秀な人を除いて、人間は期待されないと能力以上の成果は出せず、継続的な努力も難しいものです。その場合、期待される他の会社に売られたほうが、売り手、買い手、そこで働く人にとってはいいのかもしれません。

会社内で放置される「ノンコア事業」の悲劇

とはいえ、実際にノンコア事業の売却が進んでいるとはいえません。売る側からすれば、前向きな話ではないため、ついつい先送りしがちなテーマなのです。本来このような仕事はトップ自ら先陣を切って行うべき仕事でしょうが、M&Aであれば華々しく買い手にまわりたいというのが本音だと思います。ですので、切羽詰まらなければ、どうしても優先順位が落ちてしまうのです。上場企業社長や役員は「任期」がある立場の人が多く、優先順位のあるなかで、意図的に次の経営陣にバトンタッチすることも考えられます。

 

上場企業のトップがこのように考えてしまう背景には、世間のM&Aに対する間違った思い込みもあります。M&Aの世界で「おめでとう」という言葉は買い手に向けられるケースが多いのが現状です。しかし実際には、売った側にもメリットが多く、同じように賛辞されるべきなのです。

 

会社全体にとって、働く人にとっていいケースでも、英断した責任者と実務担当者は評価されるどころか、よく事情を知らない部外者から非難を浴びることさえあります。M&Aは意思決定プロセスをすべて開示するわけではないので、当事者以外からいろいろと噂レベルで批判されることもあるのです。

 

このように、ノンコア事業の売却は、大きな組織においては先送りしたいテーマであり、とくに子会社・事業体が小規模であれば放置されてしまうことがほとんどです。しかし、ノンコア事業になってしまった組織のなかで、ビジネスマン生活を送る人は不幸です。勤め人として旬な時期は、そう長くはないからです。

MBOやEBOで「自ら購入する」選択肢も…?

そのような場合、新たに外部にスポンサーを見つけることも可能ですが、経営陣によるM&Aである「MBO」、従業員による「EBO」という選択肢もあります。事業規模が小さければ、経営陣の退職金と借入金で購入できてしまうケースも考えられます。そこがスモールM&Aの面白いところです。

 

IRや日経新聞などに出ることはありませんが、役職員による事業譲渡は着実に増えており、今後水面下でますます増えると予測します。あなたが投資家なら、取引所を通じて株式を買うのではなく、直接企業に出向いてノンコア事業を買うチャンスがあるかもしれません。そのような視点で上場企業を見ると、もっといろいろな発見があるはずです。



齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

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