「中東のシリコンバレー」イスラエルのスタートアップ企業たち

前回は、有名グローバル企業が「イスラエル」に研究開発拠点を置く理由を取り上げました。今回は、イスラエルで胎動するスタートアップ企業の例をいくつか見ていきましょう。

産官学一体となって、スタートアップを支援

筆者は先般、世界有数の技術大国であるイスラエルを訪問し、企業や研究開発機関の視察を行いました。実際に自分の目で見たことで、なぜこの国の人々は起業家精神に富むのか、非常に興味が高まりました。

 

たとえば、イスラエル政府直轄組織で、企業・政府・NGOによる戦略的提携やネットワークづくりをサポートしているStart Up Nation Central。代表の方による国を挙げた「スタートアップ・ネイション」の背景と取り組み事例の説明や、税理士や弁護士の方による税制や投資スキームの事例紹介から、イスラエルでは国が全面的にスタートアップをサポートしていることがよくわかり、非常に印象的でした。

 

 

スタートアップ企業10数社によるプレゼンテーションを聞き、テルアビブ大学と研究施設を訪問した際には、国をあげて産官学一体となってスタートアップを支援する仕組みが整備されていることに驚嘆したものです。

イスラエル人の発想の原点は「ゼロから1」

では、イスラエルのスタートアップ企業の一例を見ていきましょう。

 

視察先企業A社は、「髪の毛の細さ」の内視鏡の技術開発に成功していました。内視鏡は、本体に光学系統を内蔵し、先端を体内に挿入することによって内部の映像を手元で見ることができる医療機器です。一方で、患者さんにストレスがかかり、使用後は院内で洗浄・消毒・乾燥をさせて細菌感染を防止する必要があるなど、とても手間とコストのかかる医療器具でもあります。

 

A社は皮肉まじりに、「日本人はとても清潔な民族でありながら、どうして口から入れたり、お尻から入れたものを使い回ししているのですか?」「日本人はどうして内視鏡を小さくする技術開発だけに固執しているのですか?」と言っていました。

 

イスラエル人の発想の原点は改良・改善ではなく、『ゼロ(のものから)から1(新しいイノベーション)』が基本にあります。その結果が、カプセル内視鏡※の発明につながっています。

※1981年にイスラエル国防省の軍事技術研究機関のラファエル研究所の電子光学部門技術者によって開発が始まり、1994年にThe Los Angeles World Congress of Gastroenterologyにて、世界で初めてとなるカプセル内視鏡研究報告が、ラファエル研究所より発表されました。

 

A社によって開発された内視鏡は、既存の最も細い内視鏡の10分の1以下の細さのため、体内に挿入するストレスが低くなり、それだけ細ければ、鼻から入って脳まで到達できる技術になるだろうと話されていました。

 

この内視鏡の先端の管の部分は、なんと使い捨てです。先端部分には、技術はつまっていますが、それほど高い素材ではないため、製造コスト自体は一本何十円という世界だそうです。将来、量産体制が整えば、先端部分が使い捨てという時代が到来します。

 

筆者は、ふと幼少期に町医者に行って注射を打たれた後、お医者さんが注射針を煮沸・消毒・乾燥させて使い回ししていたことを思い出しました。今は注射針は使い捨てですが、内視鏡の分野でもそのようなゲームチェンジがこの国で起きています。現在は、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認待ちとのことですが、そのうち医療現場でお目にかかることになるでしょう。

「日本とイスラエル」では物の考え方や慣習が対極的!?

視察先企業B社のプレゼンでは、説明者のイスラエル人から面白い話を聞きました。

 

イノベーションには、2つのタイプがあるとのことです。

 

1つ目のイノベーションとは、経常的で漸進的な「改善」を指し、安定した環境の下で、集団でのチームワークと幅広い知識ベースが必要とされるものです。これは日本人が得意とする分野で、身近なところでは職場での小集団活動による業務改善や、生産現場で行われる工程改善等があります。自動販売機や回転寿司もイノベーションの成果と言えるでしょう。

 

 

2つ目のイノベーションとは、「革新」「一新」を指し、これまでにない発想や新しい世界観の中でアイディアが生まれ、そこにニーズと技術が加わり成り立つものです。イスラエル(というよりもユダヤ人)が得意とする分野で、ノーベル賞の獲得数にも如実に表れています。例えば、インターネットやテレビ、スマートフォンなど、新たなアイディアが生まれ、私たちの生活を根本から変えてしまいました。そのほかには、車や飛行機などの移動手段もイノベーションの成果です。

 

イスラエルには、アップル、マイクロソフト、グーグル、イーベイ、IBMなどの巨大研究所があります。これらの企業の研究施設があること自体が、イスラエルにはゼロから発想するユニークな研究開発人材が豊富であることを意味しています。

 

また、日本人とイスラエル人では、物の考え方や慣習が対極の関係にあるように感じます。

 

ビジネスシーンでは、イスラエルの人たちは最初の打ち合わせから前置きなしで話し始めるのに対して、日本企業では、初回の打ち合わせは「まずは顔合わせ」という雰囲気があります。イスラエル企業と日本企業で、日本的な初回打ち合わせをすると、イスラエル人が「彼ら(日本企業)はビジネスの話をしに来たんじゃないの? 何しに来たの?」と困惑することがあるようです。

 

また、プレゼン資料にしても、日本企業の場合は、スライドの序盤のページに会社概要説明から設立年、従業員数、そして事業全体は~という説明を入れますが、これも、イスラエル人から見れば「今日の打ち合わせの本題は?」となってしまうようです。

 

視察を終えて感じたのは、日本人とイスラエル人は、物事の考え方や進め方が対極的であり、逆にいうなら、日本人とイスラエル人は競合していないということです。そのため、協業しやすいパートナーとなり得るでしょう。日本人は、もっとイスラエル人を「知る」ことが肝要であると感じました。

 

 

青木 英樹

PWM日本証券株式会社 代表取締役社長

 

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PWM日本証券株式会社 代表取締役社長

1982年に雪印食品(株)に入社し、営業、営業企画、経営企画管理、財務経理課長等を経て退職し、2006年に日本証券新聞社社長、2008年にPWM日本証券(株)取締役に就任し、2012年から代表取締役(現任)。
製造業、金融業を企業内部から営業・財務・経理・税務に携わり、経営者目線での企業買収、企業再生などを経験。
現在は、証券会社で経営の多角化、外国債券の発掘、新規チャネルの開拓に取り組んでいる。

著者紹介

連載中東のシリコンバレー「イスラエル」ハイテク発明大国の最新事情

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