残したい人に財産を残す場合には、遺言書にその旨を記しておくことがことが重要です。では、具体的に何をどのように記せばよいのでしょうか? 残したい人にしっかり財産を残すための「遺言書」の作成方法について見ていきます。

配偶者にすべての財産を与える場合の文例とは?

子供はいないものの、配偶者以外に相続人が現れるようなケースがあります。例えば、両親が存命だったり、兄弟姉妹がいるような場合です。このようなケースで、配偶者にすべての財産を与えたいのであれば、遺言書にその旨を記しておくことが必要となるでしょう。


例えば、夫婦間に子供がなく夫の親はすでに死亡しているが、夫には兄弟姉妹が2人いるような場合には、次のような遺言書を作成すればよいでしょう。

 

【文例】

遺言者 諸星浩司は、この遺言書により次の通り遺言する。
1.遺言者は、所有するすべての財産を、遺言者の妻 諸星有里亜に相続させる。
2.  本遺言者の遺言執行人として次の者を指定する。  
     住所 東京都大田区田園御池1丁目8番18号  
     弁護士 守谷光正 1959年4月6日生

 

○○○○年○○月○○日
住所 東京都大田区東山三条6丁目2番1号
遺言者 諸星浩司(印)


仮にこの遺言書がなかった場合は、配偶者(妻)の法定相続分は4分の3、夫の兄弟姉妹(2人)の法定相続分は4分の1となります。一方、遺言書があった場合は、配偶者(妻)がすべての財産を相続できます。また、兄弟姉妹には遺留分がありません。したがって、遺留分減殺請求権を行使されることはありません。


なお、被相続人の両親が相続人となり得る場合には、遺留分がありますので、それに関する配慮が必要になるでしょう。具体的には、遺言書の中で、遺留分の権利を行使しないよう求めることが必要になるかもしれません。

相続権がない内縁の妻には遺言書の作成が不可欠

法的な婚姻関係にない内縁の妻には相続権がありません。したがって、自分の死後、愛する女性に財産を与えたいのであれば、遺言書を作成することが不可欠となります。他に家族がなく、すべての財産を内縁の妻に与えるのであれば、次のような文例の遺言書を作成すればよいでしょう。

 

【文例】

遺言者姫矢正太郎は、この遺言書により次の通り遺言する。
1.遺言者姫矢正太郎は、内縁の妻である紅谷乙美(住所 東京都大田区四条山科二丁目22番2号 昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者の所有する一切の財産を包括して遺贈する。

2. 遺言執行者として、○○○○(職業、氏名、住所、生年月日記載)を指定する。


平成○○年○○月○○日
住所 東京都大田区南大路御池二丁目22番2号
遺言者     姫矢正太郎(印)

本妻がいる場合、遺贈により内縁の妻に財産を残す手も

「本妻はいるが折り合いが悪く、別居中で事実上婚姻関係が破綻している。現在、実質的な配偶者に当たる内縁関係の妻と同居中である」という人もいるでしょう。このような場合には、本妻とさらには、その間にいる子供の相続権についても配慮して遺言書を作成する必要があります。

 

相続人は戸籍上の配偶者と長男の2人で、遺言者は内縁の妻に現在の自宅を渡したいと考えているようなケースを例にして、具体的にどのような遺言書を作成すればよいのか検討してみましょう。


まず、遺言がなかった場合は、戸籍上の配偶者(妻)、長男にそれぞれ2分の1の相続権があり、内縁の妻は法律上の配偶者ではないため、相続権はありません。一方、下記の遺言書があった場合は、遺贈により内縁の妻に財産を残すことができます。

 

なお、遺贈については代襲相続のような制度はありません。また、法律上の妻と子は遺留分を請求することができますので、その点についても十分な配慮が必要となります。遺贈はトラブルになりやすいため、遺言執行者を指定することが大事となるでしょう。

 

【文例】

遺言者小島伸吾は、この遺言書により次の通り遺言する。
1  遺言者は遺言者の妻の小島冴子、長男の伸次に、次の財産を相続させる。
(省略)
2  遺言者は同居中で内縁関係にある御園綾乃(1982年3月5日生)に、次の財産を遺贈する。
(省略)
3 本遺言者の遺言執行人として次の者を指定する。  
   住所 東京都千代田区豆丸御池1丁目18 番18号  
     弁護士 中田治 1960年9月20日生

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う──。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在していま…

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