自然と「多言語コミュニティー」の一員になれる環境
スイスのボーディング・スクールの特徴は6つありますが、今回はそのうちの3つを見ていきます。残りの3つについては、次回の連載でお話しさせていただきます。
1.多言語教育
第1回でも述べた通り、スイスは多言語国家です。国の半分ほどをドイツ語圏が占めており、続いてフランス語圏が1/4ほど、そしてイタリア語圏、ロマンシュ語圏があります。スイス国民の多くが3言語または2言語を話し、その多くが英語も話すことができます。
父親がフランス語圏出身で母親がイタリア語圏出身の家庭で育った子供は、自然に2言語を操ることができます。加えて学校でドイツ語と英語を学べば4言語です。また、ラテン系言語とゲルマン系言語を理解できると、他にも多くの言語を容易に習得できるようにもなります。
スイス・ラーニング加盟校はドイツ語圏に3校、フランス語圏に7校、イタリア語圏に1校が位置しています。全てにおいて、学校の共通言語は英語ですが、それぞれの言語圏に準じて、バイリンガル教育が行われています(※ただし、イタリア語圏およびフランス語圏に1校ずつあるアメリカン・スクールについては、例外です)。
バイリンガル教育の実施方法は学校により異なりますが、科目により英語、フランス語またはドイツ語で授業を受ける場合や、授業は基本的に英語で受け、フランス語またはドイツ語が必修科目に設定されているという場合もあります。いずれの学校でも、これらの言語を母国語としない生徒が授業についていけるよう、外国語としての語学クラスを設けている他、個別レッスンや補修レッスンなど、生徒一人ひとりのニーズに合わせてプログラムを組んでもらえることが、多言語コミュニティーであるスイス・ボーディング・スクールの大きな特徴です。
また、ひとたび学校キャンパスを出ると、ドイツ語、フランス語、イタリア語が飛び交う環境です。買い物や食事の際には、当然のごとくその土地の言葉を話すようになります。
自国以外の文化や言語を尊重できるように
2.文化の多様性
スイス・ラーニング加盟校には、世界30カ国~120カ国から生徒たちが集まっています。世界市民として活躍できる力を得る過程で、自国以外の文化や言語を尊重することは非常に重要です。
スイスのボーディング・スクールでは、異なる文化、国籍、言語を有する生徒と共同生活をすることになります。食事の仕方や問題解決の方法など、生徒の文化背景により大きく異なることもあるでしょう。びっくりすることもあるかもしれません。しかし、自分とは異なるやり方が世界に存在するということを知ること、受け入れることが何より大事なことであり、反対に自分たちも同様に受け入れてもらっているということも理解しなくてはいけません。世界中から生徒が集まるスイスのボーディング・スクールでは、毎日の生活の中で自然に経験していくことなのです。
また、学校行事のひとつに、インターナショナルデーなどと呼ばれる各国文化交流会があります。各国の生徒たちが、それぞれの文化を紹介する機会で、民族衣装、ダンス、芸術、料理などを紹介することができます。日本にいると当たり前のことを他国の人に紹介する過程で、改めて日本の良さ、文化の豊かさなどを見つめ直す素晴らしい機会にもなります。
3.美しい環境と治安の良さ
スイスと聞いて、多くの人が思い浮かべるものは、美しい山や湖でしょう。スイスは国土の70%が山で、ボーディング・スクールの多くも山の中にあります。湖を一望できる山の上や湖畔にある学校、アルプス山脈のスキーリゾートがすぐ裏という学校もあります。いずれのロケーションでも、スイスが誇る美しい環境と空気を思う存分に楽しむことができるのです。また、ハイキング、クライミング、キャンプ、水上スキー、カヤック、スキーなど、アルプスの山々と湖や川を存分に活用したアクティビティや遠足、遠征を提供しています。
このように、健康的でアクティブな生活ができることとあわせて、低年齢のお子様も安心して生活できる環境であることも、スイスで学ぶことの利点です。前回も触れたように、スイスは国民の平均所得が高く治安の良い国であるということももちろんですが、学校で共同生活を送るにあたり守るべき規則も、年齢に応じてきちんと設定されています。携帯電話をはじめ、電子機器を使用する時間が決められていたり、宿題をする時間が設定されているなど、規則正しく健康的な生活が自然に身につくことも、低年齢のお子様を安心して送り出せる理由のひとつでしょう。