当面の利益圧縮の代表的な手法のひとつ
内部留保などの自己資金が積み上がっていき、自社の株価が上昇しそうなときに、短期間で利益を圧縮して、その間に事業承継対策を行う方法があります。そのひとつが「オペレーティング・リース」(通称:オペリー)の活用です。
基本的な仕組みは、まず出資者が、リース物件価格の3~4割に当たる資金を匿名組合に投資します。ここにメーカーが物件を売却し、銀行が出資者から集める資金の不足分6~7割のお金を貸し出します。これを基に匿名組合はユーザーである賃貸借会社にリース料を取る代わりに、リース物件を貸し出します。そしてこのリース料を基に匿名組合が、出資者に利益を分配するシステムです。
少し複雑ですが、資金に余裕のあるオーナー社長が、匿名組合に出資することで当初は赤字になるので利益を圧縮することができ、将来は黒字に転換するので利益を得ることができるという仕組みです。
大きな利益が出たときの納税を「先送り」できる
オペレーティング・リースで活用される「匿名組合」は、商法535条に定められた契約で、出資者が事業の運営を営業者(SPC)に任せ、分配金を受け取る契約です。出資金の運用は営業者にすべて任され、集められた運用資産は営業者(SPC)の名義になります。
リース物件は多額であればあるほど当初は投資損益が赤字になるため、リースの対象となる物件は、航空機や大型船舶、プラント設備など、大型の物件が選ばれます。
当初は出資者に損失が分配されることによって計画的に利益を圧縮し、株価を引き下げる効果が生まれます。これは、リース収入は毎年定額であるのに対して、リース資産は定率法によって償却され、リース期間が耐用年数を上回るように設定されているからです。
実際の帳簿上では、出資者であるオーナー会社の損益計算書(P/L)には、年度ごとに投資に対する純損益(特別損失・雑収入)が計上され、貸借対照表(B/S)には未収入金(雑収入の場合)と出資金が計上されます。また、匿名組合が解散されるときは、現金と配当金・出資金で処理されます。
次回は、このオペレーティング・リース活用時の注意点を確認します。