香港の日本人子女向け「補習授業校」の授業内容とは?

自由度の高い金融市場で知られる香港ですが、仮想通貨はどのように取引されているのでしょうか。本連載では、香港における仮想通貨の取引の現状や規制を解説するとともに、香港の現地情報についてもご紹介します。今回は、香港のインターナショナルスクールに通学する日本人子女向けの教育施設「香港日本人補習授業校」の教務主任の今(こん)先生のインタビューを掲載します。※本連載は、小峰孝史が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。

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日本の教科書、日本語で授業を行う「補習授業校」

海外で現地の学校やインターナショナルスクールに通学している日本人子女に、土曜日や放課後などを利用して日本の小学校・中学校の一部の教科について日本語で授業を行う教育施設、「補習授業校(補習校)」があります。

 

香港にも、日本人学校以外の学校に通学する日本人子女向けに香港日本人補習授業校があります。教務主任の今(こん)先生にお話を伺いました。

 

 

OWL:香港日本人補習授業校のコースを教えてくださいますか?

 

今:幼稚園児向けには幼稚部があります。小学生向けにはコースが分かれていて、小学1~6年向けに各学年ごとに6クラスあるレベルクラス、小学1~3年向けの国語科があります。さらに、継承日本語クラスが2クラス(小学4、5年向けクラス、小学6年・中学1年向けクラス)あります。

 

 

OWL:小学低学年向けには、レベルクラスと国語科という2種類のクラスがありますね。これらは、どう違うのですか?

 

 

今:レベルクラスは、日本の教科書をベースに勉強をしていくクラスです。インターナショナルスクールなどに通っている生徒が急に日本に帰国することになっても、日本の学校にスムーズに入れるようにすることを目標にしています。週1日(土曜日)の3時間だけですから、普通の小学校と同じようにはできませんが、毎週、国語を1時間15分、総合科(社会、算数、理科)を1時間15分ずつ勉強しています。

 

OWL:1時間15分+1時間15分は2時間30分で、30分足りませんが。

 

今:朝の会と帰りの会を10分ずつ、休み時間10分、合計30分です。

 

OWL:「朝の会」「帰りの会」って、小学校時代にありましたね。これも日本の学校ならではの文化。補習校でもやっているんですね。

「国語科」では双方向的な授業を実施

OWL:小学1年~3年生向けには、「レベルクラス」だけでなく、「国語科」もありますね。どのように違うのですか?

 

今:私は、香港日本人学校で教えていたことがあるんです。ですから、補習校を作って教えることになっても、それほど難しいとは思っていませんでした。でも、実際にやってみると簡単ではない。というのも、日本では、生徒は先生の話をきちんと座って聞く、というのが常識ですけれども、インターナショナルスクールでは違う。決まったカリキュラムをこなしていく形ではなく、双方向的な授業です。ですから、教科書に沿って授業を一方的に提供していくというスタイルは通用しにくいんです。この「国語科」は、実験などの体験を通した活動や、楽しく学ぶことに焦点をあてた学習スタイルをとっています。

 

OWL:継承日本語クラスは、どういう内容ですか?

 

今:小学4年~6年には、レベルクラスと継承日本語クラスの2つがありますが、クラス創設のポリシーが、レベルクラスと継承日本語クラスとでは異なっています。レベルクラスは、主に教科書を使用し日本式の学習スタイルで行っていますので、帰国後日本の学校により適応しやすいと思われます。でも、継承日本語クラスの場合、インターナショナルスクールなどに通って英語を使う時間の長い子供達は、第一の母国語が英語になっていくのが通常ですが、第二の母国語として日本語を継承してもらおう、という趣旨で授業をしています。

 

(毎年行われる運動会)
(毎年行われる運動会)

各クラスは約15人程度、空きを待つ生徒も

OWL:各クラス、だいたい何人の生徒が学んでいますか?

 

今:レベルクラスは、だいたい16人から18人、小学6年生は若干少なくて10人弱です。国語科は各学年約15人、継承日本語クラスも約15人ずつです。

 

OWL:小学6年生のレベルクラスだけ少ないようですが、小学6年生になると、中学受験のためとか、将来日本の教育に戻れるように、日本人小学校に転入する生徒が多い、というような理由でしょうか?

 

今:日本人学校に移るので補習校をやめる生徒が多いという認識は無いです。小学校高学年になると、現地校やインターナショナルスクールでは中学生になっている子も多く、課外活動などが集中する土曜日にどれを優先するか自分で決めるようになりますから、補習校で勉強したいという意志のある生徒以外はやめてしまうのかも知れません。

 

OWL:各クラス約15人ずつとのことですが、何人くらいまで受け入れ可能ですか?

 

今:すでに定員いっぱいで、空きが出るのを待っているウェイティングの生徒もいるくらいです。

 

OWL:クラスを増設することは考えていらっしゃいますか?

 

 

今:それは、施設と教員の関係上難しいですね。この点は、補習校の歴史と絡んでくるのですが。

香港日本人補習授業校の開校とその後の経緯

OWL:では、香港日本人補習授業校がいつ開校したのか、どういう経緯をたどったのかを教えて頂けますか?

 

今:海外にある補習授業校(補習校)というのは、海外で生活している子女の保護者が中心になって設立したものがほとんどです。香港日本人補習授業校も、私を含め日本人学校以外の学校に子供を通わせている保護者が中心になり、署名活動などを経て、2011年に設立しました。

 

OWL:文部科学省主導で作られた日本人学校とはずいぶん違いますね。かなりの御苦労があったのでは?

 

今:やはり、施設と教員の確保が難しかったですね。当校の授業日は週1回(土曜日)だけなので、自前の施設を確保することは現実的ではありませんし、週1回だけ教える教員に、これだけで生活できるだけの給与を支払うこともできません。ですから、既存の教育施設の一部を土曜日だけ借りて、教員も別の仕事をしている方などに週1回だけ来て頂いてスタートしました。

 

OWL:現在の運営状況はいかがですか?

 

今:お陰様で2013年度から日本政府(外務省・文科省)の援助校として認定され、財政的バックアップを得られるようになり、運営面が安定してきました。現在の校舎について述べますと、油麻地にあるChinese YMCAの校舎を借りて授業を行っています。9月から改築工事が始まったので、一時的に香港日本人学校に移っていますが。また、教員は、日本の学校教員経験者、香港日本人学校教員経験者など、教員経験のある人たちが行っています。ただ、現状では、これ以上、クラスを増設することはできません。

 

(毎年1月の恒例行事、餅つき大会)
(毎年1月の恒例行事、餅つき大会)

日本的な感性と、香港的・非日本的な感性がミックス

OWL:どういう生徒の方が多いのか、教えて頂けますか?

 

今:補習校に通っている生徒の約70%がインターナショナルスクールに通っている生徒、約30%が現地校に通っている生徒です。そして、両親とも日本人の生徒は約半分で、残り半分は両親のうち一方は外国人です。

 

OWL:生徒たちの日本語経験はどれくらいのレベルですか?

 

今:両親のどちらも日本人でない、つまり、家に日本人がいないという家庭はほとんどありません。でも、生活の中で日本語を使っている生徒が約半分、残り半分は生活の中で日本語をあまり使っていない生徒です。

 

OWL:補習校の子供たちの特筆すべき特長で、「これだ!」という点を教えてください。

 

今:補習校に来ている子供たちは、普段は現地校やインターナショナルスクールで、日本人以外の子供たちと交わりながら勉強したり遊んだりして、土曜日には補習校で日本語で勉強をしています。ですから、日本的な感性と香港的・非日本的な感性のユニークなミックスになっていると思います。実は、在香港日本国総領事館の秋祭りでの絵画の展示は、香港日本人補習授業校が担当するのですが、こうしたユニークさが評価されたのかな、と思っています。当校の子どもたちは日本の文化を理解し、また異なる文化を受け入れ共存していける真の国際人です。

 

OWL:なるほど、日本的な感性と香港的・非日本的な感性のユニークなミックスというのは素晴らしいですね。今日は、有難うございました。

 

 

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    OWL Investments マネージングディレクター・弁護士

    東京大学法学部卒業、オックスフォード大学経営大学院修了(MBA)
    米系法律事務所(Sidley Austin法律事務所)の東京オフィス・香港オフィスで勤務。日系大手法律事務所(TMI総合法律事務所)所属中、香港に駐在。2018年より現職。主として日本企業や日本の富裕層向けに、日本の税法等の法令を踏まえつつ香港の税制上のメリットを生かすよう、アドバイスを提供している。

    著者紹介

    OWL Investmentsは、海外での不動産投資・金融投資をしていきたい方、海外移住をして税金上のメリットを得ると共にお子様にバイリンガル教育をしていきたい方に向けて、弁護士として、海外在住・教育の経験者として、全面的なサポートを提供している。

    著者紹介

    連載GGO>記事>連載>富裕層向け海外移住サポート/資産管理の専門弁護士が解説!東南アジア・香港の最新移住/投資事情

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