預金保険制度が発足し、金利自由化も一応完了
中国は昨年10月、景気減速に対応して、預金貸出基準金利と預金準備率の同時引き下げ(双降)に再度踏み切り、世界が注目したところだが、それに合わせて、最後に残っていた預金金利の上限規制を撤廃し、段階的に行われてきた金利自由化が一応完了した。中国内では「最も危険な一歩を踏み出した」と言われており、中期的に見れば、こちらがより重要な措置と言うべきだろう。
金利自由化の前提として、すでに昨年5月には、20年以上にわたって懸案であった預金保険制度が発足しており、中国政府からすれば、市場機能を重視する金融改革が予定通り着実に進んでいるということになる。国際通貨基金(IMF)も昨年11月、人民元をSDR構成通貨とすることを決定した際(実施は本年10月)、決定は「中国政府が通貨・金融面での改革を相当に(significantly)前進させていることを認めたもの」としている。しかし、改革は中国にとって特有の意味も有していることに注意する必要がある。
金利自由化が「通常の預金」に資金を回帰させる?
第1に、中国では、銀行預金金利が長期にわたって人為的にインフレ率より低く抑えられてきたため、ここ数年、高利回りの理財商品や信託商品など「影の銀行」と呼ばれる分野が急拡大していた。いわば、規制の外で市場原理が貫徹したことが、規制緩和を促す結果になったという皮肉な側面がある。
影の銀行は当然ながら預金保険の対象外であり、金利自由化後、影の銀行が金利面での相対的優位性を失うと、通常の預金に資金が回帰する可能性がある。投資家にハイリスク・ハイリターンの意識が醸成され、いびつな形での影の銀行拡大に歯止めがかかれば、その限りでは望ましい副次効果だ。
ただし、その際、大手国有商業銀行から融資を受け難く、影の銀行からの融資に大きく依存していた中小・ベンチャー企業、地方の不動産関連企業などへ、正規の銀行融資の形で資金が流れるようにならなければ(従来から大手国有商業銀行は大型国有企業への融資を偏重し、中小や個人などが「融資難・融資貴」、融資が受けられない、融資を受けるコストが高いという状況にある)、資金循環、ひいてはマクロ景気に悪影響が出てくることが懸念される。