「欠点の改善」or「長所の強化」が修繕のポイント
大規模修繕工事の目的は、時間の経過とともに低下するマンションの物件価値を保全することです。そのために考えられる「手法」は、大きく分けて2つあります。
①欠点を改善する手法
②長所を伸ばす手法
実際のところ人間もマンションも似通っているのですが、どんなマンションにも長所と短所の両方があります。もちろん、さらにいろいろな要素が組み合わさり、それぞれのマンション独自の個性が形作られることになります。そして改良・改善にあたっては「欠点の改善」と「長所の強化」という2つの方向性をどのように組み合わせていくかを整理したうえで、工事によって何を目指すのかを明確にするべきです。
古さを活かすか? 新築のように見せるか?
大規模修繕工事によって資産価値を高める改良・改善を考える場合、マンションの資産価値を構成する物件価値と生活価値を同時に検証する必要がありました。その説明に際して、私などは次のような話で理事会の方々に理解していただく場合がほとんどです。
「古くなったマンションを新築のいま風のマンションのように改修する必要はありません。たとえば、女性の服装を例にすると、成熟した妙齢の女性がその良さを捨て、あえて若い方の服を着てもそれほど美しくは見えません。ファッションひとつを選ぶにも、やはり実際の年齢相応にその方の個性や長所を一番表現できるものが魅力につながります」
マンションの改良・改善にも、まったく同じことがいえるのです。
もちろん、理屈はわかっても若い女性が好きだという男性もいらっしゃいます。マンションに当てはめると、それは新築の物件に住み替えるという選択肢になるでしょう。しかし、人間の価値観は決してそれだけとは限りません。長年住み慣れたマンションは、住民にとってそれ自体が大きな魅力となっているのではないでしょうか。
[図表]改良・改善工事ビフォー&アフター