公証役場で贈与契約書に確定日付を付与してもらう
愛人にブランドもののバッグや洋服を買うぐらいならそれほど難しくないかもしれませんが、マンションのような高額なものを譲っておいて、妻に知られないようにするのは難事業です。
いきなり贈与して名義を書き換えたら贈与税が発生するので、納税資金を準備しなくてはなりません。家族や親族であればさまざまな非課税枠や特例が使えますが、愛人はあくまでも他人ですので、そういった措置の対象外となります。
そこで登場するのが、第5回の連載で解説しました「贈与税の非課税枠」を使うやり方です。この非課税枠は他人への贈与にも使えますので、毎年この枠内で少しずつ現金をお渡ししておいて、貯まったお金を合わせてマンションの所有権を愛人に買い取っていただくのです。
この時に気を付けるべき税法上のポイントが二つあります。一つは贈与契約書を作っておくことです。その際は、公証役場で確定日付を付与してもらい、贈与の確実な証明にすることがポイントです。
非課税枠ピッタリの連年贈与には贈与税の可能性も!?
もう一つは税務署から「連年贈与」と見なされないよう気をつけることです。扶養義務のない関係での連続贈与の理由には疑義が残りますが、特に110万円という非課税枠ピッタリの金額を毎年贈与すると、各年に分けた贈与が当初から計画されていたと見なされ、一括で行われた贈与と判定される可能性があるからです。
毎年100万円前後という金額では、マンションを購入するにはずいぶん長い年月がかかりそうですが、中古マンションは意外に査定額が低めです。
新築時に3000万円で購入したマンションも、ものによりますが、多くの場合は5年ほどでかなり値下がりします。
5年後の査定額が1200万円なら、その後も価格は下がり続けますから、10年たたずに買い取りの資金を貯めることができます。どうしても早く渡したいときは、残額に応じた贈与税をまとめて支払ってでも移すようにしましょう。贈与税は高いとばかり思われていますが、300万円以下なら約15%程度の贈与税率で移転できますので、検討してみてはいかがでしょうか。
社長がかなりのお金持ちの場合、相続で財産が多く残ると、最高税率は55%にのぼります。財産が少なくなれば、相続税率は下がるかもしれません。税金のことだけであれば、低くなればいいと誰しも考えることでしょうが、愛人をもつということは、妻を失う可能性や、離婚の慰謝料も発生するということを考えておくべきです。相続対策には本末転倒ですが、税金を支払った方がお得かもしれません。
実際にはこのような方法をとったとしても、愛人との関係を死んだあとまで隠し通すことは、かなり難しいと考えた方が賢明です。必ず誰かがあなたの家族に通告することでしょう。そんな光景を筆者は数多く見てきたからわかるのです。