帝国データバンクの統計によると、医院機関の休廃院・解散はここ5年で3倍に急増、2014年には過去最多を更新しました。後継者のいない開業医がとるべきリタイアの最善策は、やはりM&Aと言えるでしょう。連載第1回目は、「クリニックM&A」の概要について見ていきます。

M&Aなら基本的にクリニックの院長が交代するだけ

まず最初に、クリニックM&Aとは何かについて確認しておきましょう。M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、企業の合併および買収の総称です。複数の企業がひとつになる合併、ある企業が他の企業を買い取る買収などを意味します。M&Aは、親から子へなど親族間での承継とは異なり、第三者への承継として行われます。

 

クリニックM&Aには、承継するクリニックが個人事業であるか医療法人であるかなどの条件によっていくつかの形態があるのですが、基本のかたちはシンプルです。現経営者であるA院長(承継希望者)から、新たな経営者となるB院長(開業希望者)にクリニックを譲渡するというものです。院長が交代するだけなので、クリニックそのものは今まで通り地域に残り、引き続き診療が行われます。患者のため地域医療のためにクリニックは貢献し続けることができるのです。

廃院よりも明らかにメリットが多いM&A

では、どういった場合にM&Aを選択するべきかを改めて確認しておきましょう。

 

開業医は高齢化などによって、まずはクリニックの承継を考えることになります。そこで最初の分かれ目は、後継ぎがいるか、いないかです。後継ぎがいる場合、子息に医師がいて後を継がせるなら、親子承継となります。また、一緒に働いてきた副院長などに承継する意志がある場合も、そのまま承継を進めます。

 

問題は後継ぎがいない場合です。ここでは廃院かM&Aの道があるのですが、現在は、後継者がいないことで廃院を選ぶクリニックが多いのです。しかし、後継ぎがいない場合には、もうひとつM&Aという選択肢もあることを忘れてはいけません。M&Aは廃院よりも明らかにメリットの多い選択肢だからです。

 

本連載は、2015年9月25日刊行の書籍『開業医のためのクリニックM&A 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医のためのクリニックM&A

開業医のためのクリニックM&A

岡本 雄三

幻冬舎メディアコンサルティング

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